MP6

Rise mP6 マイクロプロセッサの詳細解説

Rise mP6は、Rise Technology社がIntel Pentiumに対抗するために開発した、スーパーパイプラインとスーパースカラーアーキテクチャを採用したx86互換マイクロプロセッサです。1990年代後半に登場し、当時の最先端技術を盛り込みましたが、市場での成功には至りませんでした。

歴史

Rise Technologyは、x86互換マイクロプロセッサの開発に5年間を費やし、1998年11月にSuper Socket 7プラットフォーム向けの製品としてmP6を投入しました。低コスト、低消費電力を特徴とするこのプロセッサは、当初、市場での競争力を持つと期待されました。

設計

mP6は、MMX命令セットをサポートし、3つのMMXパイプラインを持つことで、1サイクルあたり最大3つのMMX命令を実行できる設計でした。また、3つの整数ユニットにより、1サイクルあたり3つの整数命令を処理することが可能でした。さらに、完全にパイプライン化された浮動小数点ユニットにより、1サイクルあたり2つの浮動小数点命令を実行できました。性能を向上させるために、分岐予測機能を搭載し、データ依存性による競合を解消するための様々な技術が用いられました。

Rise Technologyは、同周波数においてmP6がIntel Pentium IIとほぼ同等の性能を持つと主張しましたが、実際にはその性能は期待されたレベルには達しませんでした。

性能

先進的な設計にもかかわらず、mP6の実際の性能は期待外れでした。その主な理由の一つは、L1キャッシュの容量が少なかったことです。また、mP6のPRレーティングがIntel Pentium MMXに基づいていたことも問題でした。当時の競合製品であったIntel Celeron 266、IDT WinChip 2-266、AMD K6-2 266と比較すると、mP6はほとんどのベンチマークやアプリケーションにおいて劣る結果となりました。これらの競合製品は、実際に266MHzで動作するか、より高性能なアーキテクチャを採用していました。

採用

1998年の製品発表後、mP6は広く採用されることはなく、Rise Technologyは翌年12月に市場から撤退しました。CyrixやIDTと同様に、Rise TechnologyもIntelやAMDとの競争に立ち向かうことが難しいことを認識しました。

遺産

しかし、mP6の技術は完全に消滅したわけではありません。Silicon Integrated Systems (SiS) がmP6の技術ライセンスを取得し、SiS 550というチップセットに活用しました。SiS 550は、mP6 CPU、チップセット（ノースブリッジ、サウスブリッジ）、サウンド、ビデオ機能を統合したSoC（System-on-a-chip）でした。このチップセットは、コンパクトPCやDVDプレイヤーなど、いくつかの民生機器に採用されました。

その後、SiS 551チップはDM&P社からVortex86 (M6127D) として販売されました。DM&P社は、mP6の設計をSiSから引き継ぎ、Vortex86 SoC製品ラインの下で開発を継続しています。さらに、DM&PはXcore社がVortex86をXcore86としてリブランディングすることを許可する契約を締結しました。

まとめ

Rise mP6は、その技術的な先進性にもかかわらず、市場での成功を収めることはできませんでした。しかし、その技術は後のSoCに活用され、組み込み機器の世界でその遺産を残しています。mP6の歴史は、マイクロプロセッサ市場における競争の激しさと、技術革新だけでは市場を勝ち抜くことができないことを示しています。

外部リンク

• - CPUs/Rise/MP6'>CPU-INFO: Rise MP6, indepth processor history
• - mP6
• - The Rise of the Vortex86: Embedded x86 Processors

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