Intel Celeron

Intel Celeron (インテル セレロン) の詳細解説

Intel Celeronは、インテルが展開するx86アーキテクチャのマイクロプロセッサブランドであり、主に低価格帯のパソコン市場をターゲットとしています。このブランドは、1998年4月にPentium IIの廉価版として登場して以来、Pentium III、Pentium 4、Pentium M、そしてIntel Coreといった、上位の各世代のプロセッサと共に展開されてきました。各時代のアーキテクチャをベースに、コストを抑えつつ一定の性能を提供する製品として、幅広いユーザーに利用されています。

Celeronの歴史と進化

インテルは、新しいマイクロアーキテクチャのプロセッサを市場に投入する際、旧世代のプロセッサの価格を大幅に引き下げる戦略をとることで、競合他社の製品の販売機会を減らし、市場シェアを拡大してきました。しかし、AMDのK6プロセッサがPentium IIに匹敵する性能を持つようになると、旧世代製品の値下げだけでは対抗が難しくなり、高収益を維持しつつも、競争力のある低価格製品が求められるようになりました。そこで、上位製品と同等のアーキテクチャを基盤とする低価格版としてCeleronが登場しました。

初期のCeleronは、デスクトップPC向けとノートPC向けで共通のコアを使用していましたが、2004年頃、Pentium 4向けのNetBurstアーキテクチャが消費電力の高さからモバイル向けには不適となり、Pentium Mが登場したことで、Celeronもデスクトップ向けの「Celeron D」とモバイル向けの「Celeron M」に分かれました。その後、Coreマイクロアーキテクチャによって再び統合され、2007年6月頃から共通の「Celeron」として再編されました。現在は、プロセッサーナンバーでデスクトップ向けとモバイル向けが区別されています。

デスクトップ向けCeleronのラインナップ

P6世代

P6マイクロアーキテクチャは、Pentium ProからPentium IIIまで採用され、Celeronもこのアーキテクチャを基盤に開発されました。主にSlot 1およびSocket 370のプラットフォームが使用されました。

• - Covington: 0.25μmプロセスで製造された最初のCeleronで、L2キャッシュを搭載していませんでした。これは同世代のDeschutesコアをベースに、コスト削減のためL2キャッシュを取り除いたもので、Pentium IIに比べて性能が劣るため、初期の評価は高くありませんでした。しかし、一部のユーザーがCPUのピンを改造することでデュアルプロセッサ環境を構築できることが発見され、オーバークロックの余地が大きいことから注目を集めました。

• - Mendocino: 0.25μmプロセスで製造されたL2キャッシュ統合型Celeronで、128KBのL2キャッシュをコア内に内蔵していました。Dixonと呼ばれるMobile Pentium IIがベースで、コアと同速で動作するL2キャッシュにより、Covingtonに比べ性能が向上しました。Slot 1に加えSocket 370版も登場し、デュアルプロセッサ構成も可能となり、人気を博しました。

• - Coppermine: 0.18μm版で、128KBのL2キャッシュを内蔵していました。第二世代Pentium IIIであるCoppermineをベースに、L2キャッシュを削減し、レイテンシを高く設定したものでした。Pentium IIIにはあったSlot 1版は発売されず、Socket 370版のみでした。また、SMP（対称型マルチプロセッサ）機能は無効化され、CPUコアが剥き出しのため、コア欠けの問題が多発しました。

• - Timna: 低価格市場向けに開発された、メモリコントローラなどを統合したプロセッサでしたが、Direct RDRAMの価格が高止まりしたため、発売は中止されました。

• - Tualatin: 0.13μm版で、256KBのL2キャッシュを内蔵していました。第三世代Pentium IIIであるTualatinをベースに、FSBを100MHzに制限し、レイテンシを高く設定したものでした。

NetBurst世代

Pentium 4のアーキテクチャであるNetBurstマイクロアーキテクチャを採用したCeleronです。Socket 478のプラットフォームが用いられました。

• - Willamette: 第一世代Pentium 4であるWillametteベースのCeleronで、128KBのL2キャッシュを内蔵していました。Socket 423が早期に廃止されたため、Socket 478のみを採用しました。しかし、処理性能が低く、発熱量が多いため、市場での評価は芳しくありませんでした。

• - Northwood: 第二世代Pentium 4であるNorthwoodベースのCeleronで、128KBのL2キャッシュを内蔵していました。Willametteに比べ消費電力が低減されました。

• - Prescott: 第三世代Pentium 4であるPrescottをベースに設計され、Celeron Dと呼ばれました。90nmプロセスで製造され、256KBのL2キャッシュを内蔵し、FSBは533MHzでした。Socket 478版とLGA 775版が存在し、LGA 775版はExecute Disable Bit（NXビット）に対応しました。

• - CedarMill: Pentium 4が65nmプロセスに移行したことに伴い、Celeron Dも65nm版が発売されました。L2キャッシュが512KBに倍増されました。

Core世代

• - Conroe-L: Coreマイクロアーキテクチャによるデスクトップ向けシングルコアCPUです。

• - Conroe-CL: Celeronブランドで唯一のLGA771仕様で、シングルコアです。

• - Allendale: Celeronシリーズ初のデュアルコアCPUです。L2キャッシュの容量が削減されています。

• - Wolfdale: LGA775のCeleronで、初めて仮想化技術（Intel VT）に対応した製品で、45nmプロセスで製造されました。

サーバー向けCeleronのラインナップ

Pentium M世代

• - Sossaman: 組込機器およびブレードサーバー向けの製品で、Dual Core Xeon LV Sossamanの片方のコアを無効化したものでした。OEM向け販売のみでした。

モバイル向けCeleronのラインナップ

P6世代

• - Dixon: モバイルPentium IIのDixonコアのL2キャッシュを半減したCPUです。

• - Coppermine: デスクトップ版と同等の性能ですが、SpeedStepテクノロジには対応していません。

• - Tualatin: デスクトップ版と同等の性能ですが、SpeedStepテクノロジには対応していません。

NetBurst世代

• - Northwood: モバイル向けのNorthwoodベースのCeleronで、L2キャッシュが256KBとなっています。SpeedStepテクノロジには対応していません。

Pentium M世代

• - Banias: ノートPC向けCPU Pentium Mに使われているBaniasコアをベースに、L2キャッシュを削減し、省電力制御である拡張版SpeedStep (EIST) を省略したものです。一般的にCeleron Mと呼ばれます。

• - Dothan: Dothanコアを採用したPentium MからL2キャッシュを削減したものです。Execute Disable Bit（NXビット）に対応したモデルも存在します。

• - Yonah: 65nmプロセスで製造されるYonahコアを採用するCore SoloからL2キャッシュを削減し、拡張版SpeedStep (EIST) や仮想化技術 (Intel VT) を省略したものです。

Core世代

• - Merom: 65nmプロセスで製造されるCoreマイクロアーキテクチャのCore 2 Soloに使われているMeromのL2キャッシュを削減し、拡張版SpeedStep (EIST) や仮想化技術 (Intel VT) を省略したものです。モバイル向けCeleronとしては初めてIntel 64に対応しています。

• - Penryn: 45nmプロセスで製造されるモバイル向けCPUです。SUシリーズは、CULVノート向け低電圧版デュアルコアCeleronです。

まとめ

Intel Celeronは、初期のコスト削減を重視した製品から、デュアルコアや仮想化技術に対応した製品へと進化を遂げてきました。各世代のアーキテクチャを基盤とし、それぞれの時代のニーズに応じた製品展開を行ってきました。その歴史は、インテルの製品戦略と技術革新の縮図と言えるでしょう。

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