MVDISC

MVDISC（エムブイディスク、Multimedia Video DISC）は、1999年にNECが開発した光ディスク規格です。主にSD（標準画質）の映像を記録することを目的として開発されました。

概要

MVDISCは、CDと同じ直径12cmのディスクメディアであり、カートリッジに格納された状態で使用します。ディスクの基本的な仕様は以下の通りです。

ディスク外径: 120mm
ディスク厚: 1.2mm (0.6mm×2)
記録方式: 相変化記録方式
回転制御方式: Zoned CLV (ゾーン定線速度方式)
トラック方式: ランド/グルーブ方式
変調方式: 1-7変調方式
レーザー波長: 650nm
記憶容量: 片面5.2GB、両面10.4GB

製品化と規格の終焉

1999年、NECはMVDISCを採用した世界初の民生用ビデオディスクレコーダー「GigaStation（ギガ・ステーション）MV-10000」を発売しました。このレコーダーでは、ディスク片面にS-VHS相当の画質で、標準モードで2時間、長時間モードで4時間、高画質のファインモードで1時間の記録が可能でした。映像の記録にはMPEG-2の可変ビットレート圧縮方式、音声の記録にはMPEG-1 Audio layer II方式が用いられました。

インターフェースとしては、RCA端子やS端子に加え、DVカメラやパソコンと接続するためのDV（IEEE 1394）端子を搭載しており、さらに液晶ディスプレイへの映像出力用に色差出力端子も備えていました。

MVDISCは、同時期のDVD-RAMなどと競合しましたが、DVDとの互換性がなかったこと、独自の規格であったことが普及を妨げました。結局、NECは後継機種を開発することなく、MVDISCは市場から姿を消しました。

技術的な特徴

MVDISCは、記録方式に相変化記録方式を採用し、レーザー波長650nmの赤色レーザーを使用しています。これは、当時主流であったDVDなどと共通の技術です。しかし、DVDが採用した変調方式やエラー訂正技術とは異なる独自のアプローチが用いられていたため、DVDとの互換性はありませんでした。

回転制御方式にZoned CLVを採用し、ディスクの内周から外周にかけて回転速度を段階的に変化させることで記録密度を向上させています。ランド/グルーブ方式は、記録トラックを溝と平坦面の両方に配置することで記録容量を増やす技術です。

終焉

MVDISCは、NECの独自の技術を盛り込んだ意欲的な製品でしたが、市場への浸透には至りませんでした。DVDというより強力な規格が広く普及し、MVDISCは短い期間で姿を消すことになりました。しかし、その技術的な挑戦は、光ディスク技術の発展における一つの歴史として記憶されるでしょう。

関連項目

映像機器
DVDレコーダー

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