Macintosh 512K

Macintosh 512K：DTPの幕開けを告げた一台

Macintosh 512Kは、Apple Computerが1984年9月に発売したパーソナルコンピュータです。初代Macintosh 128Kの後継機として、その歴史を彩る重要なモデルとなりました。ここでは、Macintosh 512K（および512Ke）について、その特徴や進化、そして日本語対応モデル「DynaMac」について詳しく解説します。

Macintosh 512Kとは

Macintosh 512Kは、初代Macintosh 128Kから主記憶容量を128KBから512KBへと4倍に増強したモデルです。外観上の違いはほとんどなく、実質的にはMacintosh 128Kと同一の製品と言えます。しかし、当時のコンピュータにおいては、メモリ容量の増大は大きな進化であり、「Fat Mac（太ったマック）」という愛称で親しまれました。

1986年4月には、モデルチェンジ版であるMacintosh 512Ke（eはenhancedの意味）が発売されました。本記事では、この512Keについても合わせて解説します。

特徴

プロセッサとメモリ

Macintosh 512Kは、16ビットバスで接続された512KBのDRAMと、Motorola 68000 7.8338 MHzプロセッサを搭載しています。初代機からメモリ容量は4倍に増加しましたが、アーキテクチャ上の制約から、それ以上の増設は困難でした。64KBのROMを搭載しており、ディスプレイ用のフレームバッファと共有することで、メモリ容量を576KBとして利用していました。

ソフトウェア

MacPaintとMacWriteは、Macintosh 128Kから引き続き同梱されました。また、Macintosh 512Kの登場後には、「MacDraw」「MacProject」「Mac Pascal」などのアプリケーションが登場しました。特に、Microsoft Excelは512KB以上のRAMを必要としたため、Macintosh 512Kがビジネス用途に利用されるきっかけとなりました。

拡張ROMを搭載したモデルは、AppleのSwitcherに対応しており、擬似的なマルチタスク環境を実現することができました。

新たな使い道

Macintosh 512Kは、メモリ容量の増大により、より大きなワープロ文書を扱えるようになり、GUIの操作性も向上しました。また、AppleのレーザープリンターであるLaserWriterの登場により、DTP制作の可能性が広がりました。初期のLaserWriterは高価でしたが、1985年に登場したDTPソフトウェアのAldus PageMakerとの組み合わせにより、Macintosh 512Kは出版業界に革命をもたらし、DTP環境のデファクトスタンダードとしての地位を確立しました。

Appleのネットワーク機能であるLocalTalkを利用することで、複数ユーザー間でのファイル共有が容易になりました。Macintosh 512Kは、1987年に発表されたファイル共有ネットワークのAppleShareもサポートしました。

システムソフトウェア

Macintosh 512Kは、System 4.1までアップグレード可能でした。別売りのハードディスクドライブ「Hard Disk 20」を使用することで、System 5も利用できました。512Keは、System Software 6.0.8までアップグレード可能です。

アップグレード

1986年4月には、強化版のMacintosh 512Keが登場しました。512Keは、800KB対応のフロッピーディスクドライブと、Macintosh Plusと同等の128KB ROMを搭載していました。これらの強化により、800KBフロッピーディスクやHard Disk 20が利用できるようになりました。

Appleは、Macintosh 512Kを512Keへアップグレードするためのキットも提供しました。また、OEMによるMacintosh Plusへのアップグレードサービスも提供されました。

Macintosh 512Kは、拡張ボードやハードディスクコントローラーを搭載する設計ではなかったため、内部増設は困難でした。しかし、General Computer Corporation社のHyperdrive hard driveなど、高度な技術を要する内部増設も存在しました。

DynaMac

DynaMacは、キヤノン販売がMacintosh 512KにJIS第1水準漢字ROMを搭載して1985年8月20日に発売したモデルです。アラン・ケイが提唱したダイナブック(Dynabook)にちなんで名付けられました。

当時、Macintoshは標準で日本語に対応していなかったため、キヤノン販売は独自に漢字ROMボードを開発し、日本語対応を実現しました。DynaMacの登場により、日本国内でのMacintoshの出荷台数は大幅に増加しました。

エミュレーター

Macintosh 512Kは、Mini vMacなどのエミュレーターで動作させることが可能です。

まとめ

Macintosh 512Kは、初代Macintosh 128Kのメモリ容量を増強し、実用性を高めたモデルです。DTP環境の確立に貢献し、出版業界に革命をもたらしました。また、日本語対応モデルであるDynaMacの登場は、日本におけるMacintoshの普及に大きく貢献しました。

参考文献
中原晃司、梶浦正規著『マッキントッシュ礼賛』株式会社カットシステム、1997年6月1日。ISBN 4-906391-45-1

外部リンク
Macintosh 512K - apple-history
* Macintosh 512Ke - apple-history

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