Mental ray

mental ray：高度な3Dレンダリングを支えた技術

mental rayは、NVIDIAが開発・提供していたレイトレーシングベースの3次元コンピュータグラフィックスレンダリングエンジンです。元々はドイツのmental images GmbHによって開発され、後にNVIDIAが買収しました。その高度なレンダリング能力から、多くの3DCGソフトウェアに採用されていましたが、2017年に開発が終了しました。

歴史

mental rayの開発は1989年に始まり、2017年まで継続的にアップデートが行われていました。1993年には、SOFTIMAGE Creative Environment（後のSoftimage 3D）に内部レンダラーとして統合されたのを皮切りに、Softimage | XSI、Discreet Logic社の3ds Max、Alias SystemsのMayaといった主要な3DCGソフトウェアに次々と採用されました。また、Autodesk社のCADソフトウェアであるAutoCADやRevitにも搭載されるなど、幅広い分野で利用されていました。

2008年には、GPU対応のREYESスキャンラインレンダラーであるGelatoの開発終了に伴い、その開発チームがmental rayの開発に加わりました。しかし、その後AutodeskがSoftimage社とAlias Systemsを買収し、自社レンダラー「Autodesk Raytracer」の開発を進め、さらにArnoldの開発元であるSolid Angle社を買収したことで、mental rayは次第に排除されていきました。最終的に、2017年に開発終了となりました。

特徴

mental rayは、フォトンマッピング技術により、物理的に正確なグローバルイルミネーションのシミュレーションを行なうことができました。これにより、コースティクスのような複雑な光学現象をリアルに再現することが可能です。また、スペクトルレンダリングにも対応しており、より現実に近い光の表現が可能でした。

非写実レンダリング（NPR）の分野では、Softimageに付属するToonシェーダが高い評価を受けていました。このToonシェーダを3ds MaxやMayaから利用する方法も存在しました。

さらに、mental rayにはirayエンジンも統合されており（Iray mode）、3ds Maxからmental rayを通してirayを使用することができました。

NVIDIA Iray

NVIDIA Irayは、NVIDIAが開発しているGPU対応レンダラーで、そのレンダリングエンジンはmental rayにも搭載されていました。Irayは、Autodesk 3ds Max、DAZ Studio、CATIA、SOLIDWORKS Visualize、Siemens NX、Substance Designer、Substance Painterなど、多くのソフトウェアに標準で搭載されています。

分散レンダリング用のNVIDIA Iray Serverも存在し、より高速なレンダリングを可能にしていました。また、3DCG/3DCADソフトウェア用のプラグインも多数開発されていました。

Irayプラグインの例

現行
Iray for 3ds Max (旧Iray+ for 3ds Max)：Autodesk 3ds Max用。Lightwork Design（後にシーメンスが買収）が開発。
Iray for Autodesk Maya (旧IrayForMaya)：Autodesk Maya用。[0x1] Software und Consultingが開発。Maya 2020まで対応。
過去
BIM IQ Render：Autodesk Revit用。Oldcastle BuildingEnvelopeが開発。
Allura Renderer：SketchUp用。Render Plusが開発。
Iray for Cinema 4D (旧m4d)：Cinema 4D用。at² Softwareが開発。開発終了。
Iray for Rhino：Rhinoceros 3D用。migeniusが開発。Rhinoderos 3D 6まで対応。2023年廃止。
ProWalker GPU：SketchUp用。Cadalog開発。Irayベースだったが廃止され、後継のPodiumxRTはIntel OSPrayベースとなっている。

また、クラウドレンダリング向けのmigenius RealityServerも存在します (migenius は2021年にPTCに買収されました)。

Iray+

Iray+（旧Lightworks Iray+）は、Lightwork Design Ltd.が開発していたNVIDIA Irayベースのソフトウェア開発キット（SDK）です。同社の「Iray for 3ds Max」をはじめ、様々なNVIDIA Irayベースのプラグインに利用されています。

Lightworks Designは、当初独自のレンダリングソリューション「Lightworks Author」を他社に提供していましたが、2013年よりNVIDIA Irayの総代理店となり、そのサポートを提供していました。Lightworks Iray+は、Irayの利用を容易にするために開発されました。Lightworks Designは2019年にシーメンスに買収され、その後、Iray+はシーメンスより提供されるようになりました。

関連情報

NVIDIA
3ds Max
Maya
* Softimage

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