Mmbi

株式会社mmbi（エムエムビーアイ）とは

株式会社mmbi（mmbi, Inc.）は、かつて日本において移動体向けのマルチメディア放送事業を展開していた企業です。2012年から「NOTTV（ノッティービー）」のサービス名で放送を開始しましたが、2016年にサービスを終了し、解散しました。本記事では、mmbiの設立からサービス終了までの経緯、技術規格、事業収支、沿革について詳細に解説します。

設立の背景と経緯

mmbiは、地上アナログテレビ放送終了後のVHF-high帯の周波数帯（207.5-222MHz）を活用し、携帯端末向けに動画や音楽、電子書籍などの大容量コンテンツを配信する目的で設立されました。2006年12月、フジテレビジョン、伊藤忠商事、NTTドコモ、スカイパーフェクト・コミュニケーションズ（現・スカパーJSAT）、ニッポン放送の5社が出資し、「マルチメディア放送企画LLC合同会社（MMBP）」として事業を開始しました。その後、2009年1月には株式会社マルチメディア放送に改組し、2月にはNTTドコモが筆頭株主となりました。

2010年9月には、移動受信用地上放送事業者の認定を受けました。当時、KDDIを中心とするメディアフロージャパン企画が推進するMediaFLO方式と、mmbiが採用したISDB-Tmm方式のどちらを標準規格とするかで議論がありましたが、最終的にmmbiが認定を受ける形となりました。2011年1月には、放送事業を担う子会社「ジャパン・モバイルキャスティング（Jモバ）」を設立し、同年4月には社名を株式会社mmbiに変更しました。

NOTTVのサービス開始と終焉

2012年4月、mmbiは「NOTTV」の名称でサービスを開始しました。当初は単年度黒字化を3～4年後と見込んでいましたが、事業開始後も赤字が拡大し、2016年6月にはサービス終了を発表しました。競争激化や加入者数の伸び悩みなど、経営状況は厳しく、結局サービス終了までに黒字化を達成することはできませんでした。

サービス終了の背景には、当初の想定とは異なる市場環境の変化がありました。また、mmbi以外の事業者の参入がなかったため、Jモバへの参入条件を緩和しましたが、実際に参入したのはスカパー・エンターテイメントなど衛星放送事業者でした。そのため、テレビジョン放送として参入したものの、実際には衛星放送のサイマル放送に留まりました。

2015年4月からは6チャンネルのテレビジョン放送を開始し、視聴料を割り引くNOTTVパックも発売しましたが、赤字は改善せず、2016年3月末にはNTTドコモの完全子会社となりました。2016年 6月30日をもってNOTTVはサービスを終了し、翌7月1日にmmbiはJモバを吸収合併、さらにNTTドコモに吸収合併され、解散しました。約9年半の歴史に幕を閉じました。

ISDB-Tmmとは

mmbiが採用したISDB-Tmmは、日本のデジタルテレビ放送で使用されているISDB-T方式をベースに開発されたマルチメディア放送用の規格です。ISDB-Tにマルチメディアの略である「mm」を付加したものです。リアルタイムでの放送受信に加え、受信したデータを蓄積して任意のタイミングで視聴できる「蓄積型放送」も可能であることが特徴です。

ISDB-Tmmは、総務省令の「標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に関する送信の標準方式」に規定されています。一方、競合規格であったMediaFLO方式も同省令に規定されています。ソフトバンクモバイル（現・ソフトバンク）もISDB-Tmmを支持していましたが、対応端末は発売されませんでした。

事業収支

mmbiの事業収支は、決算公告で公開されていますが、サービス開始から終了まで赤字が累積しました。特にサービス末期は、1000億円近い赤字を抱え、経営状況は非常に厳しいものでした。サービスの早期終了は、この赤字の拡大を抑えるための苦渋の決断だったと言えるでしょう。

沿革

2006年 12月6日: マルチメディア放送企画LLC合同会社として設立。フジテレビジョン内に本社を置く。
2009年 1月9日: 株式会社マルチメディア放送に組織変更。
2009年2月2日: 第三者割当増資を実施、NTTドコモの出資比率が51%となる。
2010年 6月4日: マルチメディア放送用特定基地局開設計画を提出。
2010年 9月9日: 特定基地局開設計画が認定され、事業免許を取得。
2011年1月11日: Jモバを設立。
2011年2月16日: Jモバへの認定開設者の地位承継が許可される。
2011年4月1日: 社名を株式会社mmbiに変更。
2011年6月27日: 本社を港区赤坂に移転。
2011年10月13日: 移動受信用地上基幹放送事業が認定される。
2011年11月29日: 資本金を8.4億円から248.9億円に増資。NTTドコモの出資比率が60.45%となる。
2012年 4月1日: NOTTVサービス開始。
2012年 5月1日: 日本民間放送連盟に準会員として加盟。
2013年 12月10日: 支配関係にあるのは日本電信電話（NTT）とされた。
2015年 4月1日: Jモバが「フジテレビONE」など6チャンネルの放送を開始。mmbiはNOTTVパックを発売。
2015年 11月27日: 2016年6月末にNOTTV終了、Jモバも事業停止すると発表。
2015年12月17日: NOTTVの新規受付を全て終了。
2016年 3月31日: NTTドコモの完全子会社となる。
2016年 6月30日: 正午にNOTTV終了。
2016年 7月1日: Jモバを吸収合併した上でNTTドコモに吸収合併され解散。

まとめ

株式会社mmbiは、移動体向けマルチメディア放送の先駆けとして期待されましたが、市場環境の変化や競争激化により、短期間でサービスを終了しました。その技術規格や事業収支、沿革は、今後のメディア事業の展開において貴重な教訓となるでしょう。

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