Mobipocket

Mobipocketとは

Mobipocketは、フランスのMobipocket社が開発したWindows PC用電子書籍システムです。このシステムは、電子書籍を読むための「Mobipocket Reader」と、書籍を作成するための「Mobipocket Creator」で構成されていました。Mobipocket Readerは、PC上でテキスト、HTML、PDFなどのファイルを直接変換して読むことができ、WordやExcelファイルも変換に対応していました。一度変換されたデータは、ライブラリに保存され、いつでも閲覧可能でした。

このシステムは、PCで作成・購入した電子書籍を携帯端末で閲覧することを主な目的としていました。PC版では、書籍を読みながらコメントを付けたり、書籍内を検索する機能が利用できました。コメントは、携帯端末側のリーダーが対応していれば表示可能でしたが、検索機能は端末によっては利用できない場合がありました。

Mobipocketは、電子書籍システム全体、開発したMobipocket社、そして電子書籍フォーマットであるMobipocket形式のいずれかを指すことがあります。

Mobipocket社の歴史

Mobipocket社は2000年に設立され、独自のMobipocketファイルフォーマット（拡張子「.mobi」）を採用した電子書籍を制作・販売していました。しかし、2005年にAmazonに買収され、その後もウェブサイトはサポートのために継続されましたが、2016年10月31日に運営を停止しました。

買収後、Mobipocketファイルフォーマットは、2007年に発売された電子書籍リーダー「Kindle」の標準ファイルフォーマットのベースとなりました。その後、Amazonは2011年にHTML5とCSS3を採用した「Kindle Format 8（KF8）」を発表しましたが、2021年8月にはリフロー型電子書籍におけるmobiの対応を廃止しました。さらに、2022年5月には「Kindleパーソナル・ドキュメントサービス」のサポート形式に「EPUB」が追加され、MOBIファイルの送信はできなくなる予定です。

Mobipocket形式の構造

現在、Mobipocket社はAmazon傘下であり、Kindle形式とMobipocket形式は内部構造的に同等です。ただし、購入した電子書籍にはDRM（デジタル著作権管理）としてPIDというIDコードによるコピーガードが施されており、Mobipocket形式で購入した書籍をKindleで直接読み込むことはできません。また、閲覧可能な端末数は3つまでで、端末を登録解除することで別の端末で閲覧できるようになりますが、上限回数が設定されています。

Mobipocket形式はHTMLをベースにしており、フォントの種類、サイズ、色などのテキスト情報やJPEGなどの画像データ、リンク機能などを備え、レイアウトの自由度が高いのが特徴です。また、将来的には、mp3などの音声データやムービーへのリンクにも対応できるような拡張性も備えていました。

Mobipocket Readerの辞書機能

Mobipocket形式の辞書を購入すれば、Mobipocket Readerを電子辞書として利用でき、不明な単語を調べることが可能です。これは他の電子書籍システムでも可能な機能ですが、Mobipocket Readerでは、電子書籍を読みながら単語をクリックすると、購入した辞書にヒットした場合、その意味を表示してくれます。複数の辞書を同時に使用することも可能で、特に洋書を読む際には非常に便利な機能でした。

購入可能だった主な辞書

英辞郎
ジーニアス英和辞典
ジーニアス和英辞典
明鏡国語辞典
New Oxford American Dictionary
Oxford Advanced Learner's Dictionary
Merriam-Webster's Collegiate Dictionary
LONGMAN Dictionary of Contemporary English
The Chambers Dictionary
Collins unabridged English Dictionary
Collins Student's COBUILD Dictionary
The World's Biggest Dictionary (= Wikitionary)
* The Big English Encyclopedia (=Wikipedia)

複数の辞書を登録すると検索に時間がかかる場合があるため、常に使用する辞書を一つだけ設定することも可能でした。

現在の状況

Mobipocket形式の電子書籍を扱う電子書籍ストアはほとんどなくなり、Mobipocket形式での購入は困難です。また、電子ブック書店のWebサイトが閉鎖されると、将来的に別の端末に書籍を移行する手段がなくなるという、電子書籍の欠点も露呈しました。

Mobipocket Readerの活用

Mobipocket形式の書籍は、指定したフォルダに保存され、拡張子.prc（または.mobi）が書籍本体、.mbpが設定ファイルです。設定ファイルはテキストエディタで開くことができ、表紙画像などの情報を確認できます。また、PC版のMobipocket Readerでは、電子書籍のタイトルを自由に編集でき、シリーズものを順番通りに並び替えるなど、独自のカスタマイズが可能です。

さらに、テキストデータやHTMLデータをMobipocket Readerで変換して読むことで、青空文庫などの大量の無料書籍を読むことも可能です。無料で提供されるMobipocket Creatorを使えば、表紙や目次を設定した、市販の電子書籍と遜色のないものが作成できます。

Mobipocketの弱点

多くのユーザーが電子書籍を携帯端末で読めることを重視しますが、Mobipocket形式はAndroid端末でiReaderなどのアプリをインストールすれば表示できるものの、辞書機能が使えなくなるという欠点があります。また、類似のKindleでは、対応端末が多く、内蔵辞書が利用できるものの、追加購入した辞書を電子書籍を読む際に使用できないという制限があります。そのため、Mobipocketは独自の強みを持っていたものの、Kindleがその代替候補となっています。もし、Kindle形式をMobipocket形式に変換できれば、PC上ではMobipocket Readerを利用できます。

Mobipocket Reader日本語版

Mobipocket Reader日本語版は、2007年にSIIから発売された電子辞書に初めて搭載されました。これにより、インターネットで入手した電子書籍やニュース記事をパソコンから転送して読めるほか、Word/PowerPoint/PDF/text/HTMLファイルを変換して利用することができました。

まとめ

Mobipocketは、独自のファイル形式とリーダーを備えた電子書籍システムで、特にPCでの書籍作成や辞書機能、柔軟なカスタマイズ性が魅力でした。しかし、現在はAmazonに買収され、その技術はKindleに引き継がれています。Mobipocket形式は入手が難しくなりましたが、その思想や技術は電子書籍の歴史において重要な役割を果たしました。

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