NIPPON (椎名林檎の曲)

椎名林檎「NIPPON」：サッカーテーマ曲を巡る賛否両論

椎名林檎の14枚目のシングル「NIPPON」は、2014年6月11日にリリースされました。この楽曲は、NHKの2014年度サッカー放送のテーマ音楽として書き下ろされ、その後も2016年まで継続して使用されました。椎名林檎がNHKから依頼を受けた際、サッカー日本代表（SAMURAI BLUE）とサッカー日本女子代表（なでしこジャパン）の両方を応援する曲であること、そして「青」という言葉や、かつてのバンド・東京事変の楽曲「群青日和」のようなテンポやコード感が求められました。しかし、この楽曲は発表後、歌詞の内容を巡って様々な議論を呼びました。

制作の背景

NHKからの依頼で、「NIPPON」は2014 FIFAワールドカップブラジル大会以降のNHKのサッカー関連番組のテーマ曲として制作されました。椎名林檎は、この依頼に対して「今まで味わったことのないプレッシャーを覚え、本当に気負って書いた」と語っています。制作にあたっては、「人生に於いて時折訪れる厳しい勝負の時に絶対に勝ちに行く、そして楽しみに行く、そのすべてを込めるしかない」という強い覚悟で臨んだそうです。椎名は、幼少期をブラジル文化の影響を受けた清水で過ごした経験が、今回の楽曲制作に活かされているとも述べています。また、NHKからは具体的な要望として、「青」という言葉を入れることや「群青日和」のような曲調にすることに加え、放送に適さない歌詞のチェックも受けていたようです。

歌詞をめぐる批判と評価

「NIPPON」の歌詞は、一部で「純血性」を強調している、死を連想させるなどと批判されました。『週刊朝日』は、歌詞が「特攻隊を思わせる」と評し、音楽評論家の石黒隆之は「過剰で、TPOをわきまえていないフレーズ」と批判しました。また、ジャーナリストの清義明は、サッカーの文化を理解していないと批判しました。一方で、音楽評論家の宗像明将は、椎名林檎の音楽には特段の政治性はないと擁護し、過剰な様式美が議論を呼んだだけだと指摘しています。

椎名林檎の反論

これらの批判に対し、椎名林檎は雑誌『SWITCH』のインタビューで、「揚げ足を取られたと理解するほかない」と反論しました。また、不謹慎だとされた“死”という言葉については、「死は生と同じくみんな平等に与えられるもの」であり、勝負時に「ここを逃すなら死んだ方がマシという誇りや負けた後のことまで考えていられないという決死の覚悟をそのまま写し取りたかっただけ」と説明しました。また、ラジオ番組『JA全農 COUNTDOWN JAPAN』では、「最前線で戦う方だけにわかる、『ここを逃したら死ぬしかない、死んでもいいから突破したい』っていう気持ち」を表現したかったと語っています。

NHK「SONGS」での発言

アルバム『日出処』発売時に出演したNHKの音楽番組『SONGS』では、「日本代表を背負って世界の舞台に出ていく方は、日本の良い面悪い面誇らしい面恥ずかしい面どちらも全部背負っている」とし、批判や議論が巻き起こったことについては「どんな種類の感受性で見守るべきか、そういう提案をしてみたかったのかなと」と回顧しています。

楽曲構成と演奏

「NIPPON」は、椎名林檎自身がギターを担当するほか、名越由貴夫、生形真一の3人がギターを担当、ベースは渡辺等、ドラムは河村“カースケ”智康、プログラミングは中山信彦が担当しました。また、グレート栄田ストリングスによる壮大なストリングスも特徴的です。カップリング曲の「逆さに数えて」では、林正樹がwurlizer、佐藤芳明がオルガン、鳥越啓介がベース、みどりんがドラムを担当しています。

まとめ

「NIPPON」は、サッカーをテーマにした楽曲であると同時に、日本という国、そして勝負というものに対する椎名林檎の深い考察が込められた作品です。その歌詞や表現は、様々な解釈を呼び、多くの議論を巻き起こしましたが、それこそが椎名林檎の音楽の魅力であるとも言えるでしょう。この楽曲は、単なる応援歌という枠を超え、聴く人々に多様な感情や思考を喚起する、まさに問題作と言えるかもしれません。

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