NMT

NMT（Nordic Mobile Telephony）とは

NMT（Nordisk MobilTelefoni、Nordiska MobilTelefoni-gruppen、Nordic Mobile Telecommunication System）は、エリクソンが中心となり、北欧諸国（デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド）とサウジアラビア、スペインが共同で開発した、FDD-FDMA-FM方式のアナログ携帯電話システムです。

開発の背景

1970年代初頭、フィンランドのARP（150MHz帯）やスウェーデンのMTD（450MHz帯）といったプッシュツートーク方式の自動車電話が普及するにつれて、深刻な回線混雑が問題となりました。この状況を打開するため、1973年にNMTの基本仕様が決定され、1977年には基地局の技術仕様が公表されました。これらの仕様は無料で公開され、多くの企業が機器製造に参入したことで、価格競争が進み、システムが広く普及しました。この規格の普及により、エリクソンやノキアといった企業は世界的な市場を獲得することになりました。

サービス開始と展開

1981年9月1日、サウジアラビアで1200人のユーザー向けにNMTサービスが開始されました。その1ヶ月後にはスウェーデンとノルウェー、1982年にはデンマークとフィンランド、1986年にはアイスランドでも450MHz帯を利用したサービスが開始されました。その後、チャネル不足を補うために、1986年から900MHz帯も使用されるようになりました。

現在の状況

2005年現在、デジタル携帯電話への移行が進んでいますが、北欧、東欧、ロシア、中東など、GSMの電波が届かない人口密度の低い地域では、国際ローミングサービスが利用できるため、漁師や旅行者を中心に需要があります。

技術的な特徴

• - 周波数帯: 450MHz帯、900MHz帯
• - 通信方式: FDD-FDMA方式。基地局間での自動ハンドオーバー機能を持つ集中制御型マルチチャネルアクセス無線。
• - 搬送波間隔: 25kHz
• - 変調方式: 音声はFM変調、制御信号はFSK変調（ハンドオーバー時には、音声と同じチャネルを使用するため、雑音として聞こえる）。
• - 移動局の空中線電力: 450MHz帯は15W、900MHz帯は6W（携帯電話は1W）。
• - セル半径: 2〜30km

セキュリティとデータ通信

初期のNMT規格には、音声の暗号化方式が規定されていませんでした。そのため、受信機で受信できる周波数から、電気通信役務に使用されている周波数を削除する法規制が行われました。しかし、この規制は、削除されていない受信機が容易に入手可能であったため、傍聴を防ぐための有効な対策とはなりませんでした。後に、音声の暗号化方式として可聴周波数2分割反転方式が標準化され、対応した端末間での暗号化通信が可能になりました。

また、DMS（Data and Messaging Service）やNMT-Textと呼ばれる制御チャネルを利用したショートメッセージサービスも提供されています。このサービスは、主にロシアやポーランドで利用されています。さらに、380b/sの外部モデムを接続することで、データ通信も可能でした。

関連情報

• - 移動体通信 : 規格の比較

NMTは、アナログ携帯電話の黎明期を支え、その後のデジタル携帯電話の発展に大きな影響を与えたシステムと言えるでしょう。

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