Nepheshel

『Nepheshel』（ネフェシエル）は、同人ゲームサークルStudio Tilによって制作されたRPGツクール2000製のロールプレイングゲームです。2002年6月3日にフリーウェアとして公開され、2022年1月2日には最新版であるVer 2.06N/Rbetaが公開されています。

ゲーム概要

本作は、ダンジョン探索を主体としたRPGでありながら、プレイヤーの行動を制限する要素を極力排除した、自由度の高い作品です。物語は、外界から隔絶された「閉ざされた島」で、記憶を失った少年リトが目覚める場面から始まります。リトは、自身が持っていた本から、島の奥深くに存在する「漆黒の迷宮」に「人が触れてはならない途方もないもの」が眠っていることを知ります。そして、島内に点在する迷宮を探索する旅に出ることになります。

島には、人知を超えた力を持つ「魔神」と呼ばれる不死の存在がいます。これらの魔神は特殊な壺に封印されていますが、封印が解かれて暴走すると、人々を脅かす存在となります。プレイヤーは、これらの魔神と戦いながら、迷宮の謎を解き明かしていくことになります。

戦闘は、シンボルエンカウント方式で発生します。戦闘システムは、RPGツクール2000のデフォルトであるコマンド選択式のターン制バトルです。属性魔法のほか、武器にも3種の属性があり、敵への攻撃に影響を与えます。そのため、戦闘において属性を考慮した戦略が重要になります。また、同時に行動できるアイテムを入手するまでは、冒険に連れて行ける魔神は1人のみです。どの魔神を仲間にするかによって、戦闘の難易度や戦略が大きく変わってきます。

各地のダンジョンには「ゲート」が存在し、「ゲートクリスタル」を設置することで、ゲート間の移動が可能になります。これにより、広大なマップを効率よく移動できるようになります。

登場人物

リト: 主人公の少年。記憶を失った状態で目覚め、各地の迷宮を探索する旅に出ます。魔法や技は使用できません。
ファル: 龍の力を持つ魔神の幼い少女。水や風の属性を持つ攻撃魔法を覚えます。
ティララ: 癒しの力を持つ光の女神。回復魔法のほか、火や地の属性を持つ魔法も覚えます。
ディーヴァ: 剣術を極める闇の女神。両手で武器を操り、装備に応じた技を使用できます。
* イリス: 道具屋を営む少女。倒れていたリトを助け、回復アイテムを販売しています。

制作背景

本作は、「ダンジョンの探索」を最も重視したゲームとして制作されました。作者は、「そこに穴があればもぐってみたくなる好奇心旺盛な方にお勧め」と述べています。ダンジョン内のトラップや宝の隠し場所には、多くの工夫が凝らされており、ダンジョン作成やバランス調整には苦労したとのことです。

Studio Tilは、これまでノベルゲームの制作を中心に活動していましたが、初のRPG作品である本作では、「徹底的に今までやらなかった方向で行こう」と考え、あえてシナリオ要素を抑え、「ダンジョンの探索」を強調しました。その結果、シナリオに縛られることのない、自由なゲームプレイを実現しています。また、背景にあるストーリーは、ゲーム内で得られる断片的な情報から推測できるようになっています。

Zero-Gramは、本作が「派手なゲームが多い中で、公開しても埋もれてしまう」と思っていたそうですが、「予想以上に好評で驚いたと同時に、自分たちのゲームを理解してくれる人が多かったのが嬉しかった」と述べています。

音楽

BGMは、ARA（荒芳樹）氏が担当しており、氏の「趣味工房にんじんわいん」によって、サウンドトラックやアレンジCDが販売されています。サウンドトラックには、霜月はるか氏が歌うイメージソング「ツナグソノテ」と「忘れないで」も収録されています。

派生作品

2003年8月のコミックマーケットでは、対戦アクションゲーム『クゥるぼ〜る』が頒布されました。これは、『Nepheshel』にも登場する毛玉生物「クゥ」を捕まえてゴールとなる壺に入れ、対戦相手と得点を競うゲームです。プレイヤーキャラクターとして、ファル、ティララ、ディーヴァなど、Studio Til作品のキャラクターを選択できます。委託ショップでも販売されており、体験版は現在もダウンロード可能です。

同年12月の冬コミでは、アクションシューティングゲーム『クゥるべーだー』が頒布されました。プレイヤーキャラクターのイリスを操作し、爆弾で「クゥ」を吹き飛ばすゲームです。2010年3月2日にフリーウェア版が公開されています。

評価と影響

本作は、RPGツクール製のゲームである『イストワール』、『魔王物語物語』、『らんだむダンジョン』などに影響を与え、Crowdrive Gamesからは「フリーRPGゲームの草分けとなったゲーム」と評されています。

ベクターの「新着ソフトレビュー」では、「やればやるほど味が出てくる、非常に奥深いゲーム」と評されており、「取っつきはあまり良くなかった」が、「いくつかのダンジョンを征服し、魔神が仲間になったころにはすっかりとこのゲームの虜になってしまった」とされています。

『Dojin X』（大洋図書市ヶ谷編集局）では、「冒険の疑似体験」という点で「既存のRPGを大きく凌駕した存在」と評価されています。また、Studio Tilは「ジャンルを問わず、オリジナルにこだわりを持つサークル」であり、「その姿勢に共感したファン」も多いとされています。

『タダで楽しむ!最強ゲーム100』（インフォレスト）では、「自由度の高さが魅力のやりこみ型RPG」として紹介されており、「フリーソフトの中でも特に人気の高いゲーム」であるとされています。また、「時々クスリとさせる演出が、重くなりがちな展開をやわらげてくれる」とも評価されています。

『ダウンロード激ネタ得盛り4.7ギガ』（宝島社）では、レアアイテムなどのやり込み要素が多く、自由度の高さからアイテムのコンプリートや低レベルでのクリアなど、様々な遊び方が可能なゲームであり、「はまるととまらない中毒性の高さが魅力」と評されています。

『無料ゲームの殿堂』（英知出版）では、「召喚する魔神の女のコたちがみんなカワイイ」作品であり、「ストーリーや世界設定的にも作り込まれている」ゲームの一つと評価されています。

『WindowsXP World』（IDGジャパン）では、「豊富なアイテムや魔法などを駆使して、冒険そのものにどっぷりと浸ることができる」と評され、ダンジョンが広大で隠し部屋や罠も多く存在することから「ディープにやり込みたいプレイヤー」も満足できるだろうとされています。

Crowdrive Gamesでは、「広大なマップはもちろん、アイテムや隠し通路も多く、探索RPG好きにはたまらない仕様」と評されており、「マップ上の敵を避けつつ、隠し通路を探す爽快感が魅力の一つ」とされています。

もぐらゲームスでは、アイテムを集める過程が楽しいゲームであるものの、『盗人講座』とは異なり「硬派にひたすら探索するタイプのゲーム」と評価されています。そして「入り組んだダンジョンの中、襲いかかる強敵から命からがら逃げ切り、その先でついに装備を手に入れる」というゲームが好きな人に「何としてもプレイしていただきたい」作品であるとしています。

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