O・A・クライン

オーティス・アデルバート・クライン（Otis Adelbert Kline、1891年 - 1946年）は、パルプ・マガジン全盛期にアメリカ合衆国で活躍したSF作家、冒険小説家、そして著作権エージェントです。彼の作品は、当時の読者を熱狂させましたが、現在日本語訳されているのは『火星の無法者』と『火星の黄金仮面』の2作のみとなっています。

バローズとの確執

クラインを語る上で欠かせないのが、エドガー・ライス・バローズとの文芸上の確執です。1929年、クラインは惑星間ロマンスの先駆けとなる金星を舞台にしたSF冒険小説「Planet of Peril」を発表しました。この作品が、自身のSF領域を侵されたと感じたバローズは、「火星シリーズ」に対抗するように「金星シリーズ」を書き始めます。クラインはこれに対し、火星を舞台にした小説をさらに2作発表し、バローズの「ターザン」シリーズを彷彿とさせるジャングル冒険譚を執筆するなど、より直接的な「侵入」を試みました。しかし、この確執を裏付ける直接的な証拠はなく、二人の作家の死後も、その真偽は定かではありません。

ハワードとの交友

1930年代半ばから、クラインは友人であったロバート・E・ハワードの著作権エージェントとしての仕事に注力するため、執筆活動を控えるようになります。1933年春からハワードが亡くなる1936年6月までその職務に携わり、その後はハワードの遺産管理人を務めました。

主な著書

金星シリーズ（Venus series）

Planet of Peril （1929年）
The Prince of Peril （1930年）
The Port of Peril （1932年）

火星シリーズ（Mars series）

The Swordsman of Mars （1933年）
The Outlaws of Mars （1933年）
『火星の無法者』 （1967年、久保書店QTブックス、井上一夫訳）
『火星の黄金仮面』 （1978年、創元SF文庫、井上一夫訳、武部本一郎画）

その他

Maza of the Moon （1930年）
The Call of the Savage（Jan of the Jungle） （1931年）
Tam, Son of the Tiger （1931年）
Stolen Centuries （1939年）
Jan in India （1935年）
* The Man Who Limped and Other Stories （1946年）：短編集

オーティス・アデルバート・クラインは、その作品を通して、パルプ・マガジン時代のSF・冒険小説界に大きな足跡を残しました。バローズとの確執やハワードとの友情など、彼の生涯は様々なエピソードに彩られており、その作品とともに、今もなお多くのファンを魅了し続けています。

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