MZ-2500

シャープ MZ-2500：8ビットパソコンの集大成

MZ-2500は、1985年10月にシャープから発売された8ビットパーソナルコンピュータです。「スーパーMZ」の愛称で親しまれ、MZシリーズの最終機種として、その高い性能から「最強の8ビット機」の一つとも評されます。MZ-2000/2200の後継機であり、MZ-80B系の直系後継機でもあります。3年ぶりの大幅なリニューアルにより、機能の追加と高速化が図られましたが、市場の固定化が進んでおり、シェアを覆すには至りませんでした。

概要

MZ-2500は、従来のMZシリーズと同様に、本体にシステムプログラムを持たない「クリーン設計」を採用しています。しかし、旧機種がIPLのみを内蔵していたのに対し、高機能化したハードウェアを制御するプログラムがIOCSとして内蔵され、何度かの改修が行われています。

このIOCSには、特定のアドレスを直接コールできる機能があるため、ROM内のモジュールのアドレスを指定して直接呼び出すアプリケーションには、非互換の要素が含まれます。

また、MZ-2500には、従来のMZユーザーに馴染み深いBASIC-S25と、当時主流になりつつあったMicrosoft系のBASIC-M25の2種類のBASICが添付されています。これは、従来のHu-BASICとは異なる実装です。

CPUにはZ80Bが搭載され、6MHzで動作します（一部M1サイクル時に1ウェイト）。従来のZ80A（4MHz）と比較して、高速化が図られています。

メモリ管理も強化されており、MB-S1と同様にメモリコントローラを搭載し、8分割されたメモリ空間に対し、8KB単位で任意の空間を割り当てることが可能です。これにより、メインメモリ256KB、グラフィックスVRAM128KBを管理できるようになりました。

BASICには、アルゴ機能と呼ばれる機能が追加されました。これは、アルゴー船のマークが付いたキーを押すことで、内蔵アプリケーションを呼び出す機能です。ユーティリティ中では、「Algorithm」から派生した「Algo」と表記されています。

表示機能も大幅に強化されており、320x200モードで256色、最大640x400モードで16色の出力に対応しています。カスタムチップの設計仕様により、増設ビデオメモリを搭載すれば、320x400の解像度で出力することも可能です。また、複数プレーンへの同時書き込みがサポートされ、高速な描画が可能になっています。

漢字テキストVRAMも搭載されており、JIS第二水準までの漢字フォントが表示可能です。これにより、漢字ROMからフォントイメージを転送するよりも、はるかに処理が軽くなり、快適な日本語入力を実現しています。

データレコーダは従来機種と同様に添付されており、2トラック独立消去ヘッドを採用しています。片方のチャンネルをデータレコーダ、もう片方を音声トラックとして利用することができ、留守番電話としての利用も可能でした。

シリアルポートも標準装備されており、専用モデムフォンと組み合わせることで、パソコン通信が可能でした。

ハードウェア

MZ-2500では、旧機種のサポートがモードスイッチによって行われます。MZ-80Bモードを用意することで、旧機種の資産を全て利用できるようになりました。また、80B/2000モードを6MHzで動作させる隠し機能も存在しますが、音の再生やデータレコーダの扱いには非互換性があります。

周辺機器は従来機種と同じものが利用できますが、16ビットボードは利用できません。FDDは3.5インチで、動作音は大きめです。

外観は直方体の本体にカールコードで接続されたキーボードという構成です。フロントパネルには、解像度モード、MZ-2000/80Bモードの切り替えスイッチ、音量調整ボリューム、IPL、RESETボタンが配置されています。

ジョイスティックはATARI仕様、マウスはMZ-5500やXシリーズと互換性があります。

FDDの制御は旧機種の実装を踏襲しているため、割り込みを禁止してソフトウェアで転送を行う必要があり、BGMを止めずにアクセスするなどの処理はできません。

モデルは、MZ-2511（FDD1台）、MZ-2521（FDD2台）の初期モデル、MZ-2531（辞書ROM、増設メモリ、テレビコントロール機能を追加）のマイナーチェンジモデル、MZ-2520（廉価版、データレコーダと旧機種互換モードを削除）の4種類が発売されました。

主な仕様

CPU: Z80B 6MHz/4MHz
RAM: メイン 128KB（最大256KB）、GVRAM 64KB（最大128KB）、CGRAM 14KB
ROM: IPL/IOCS 32KB、TELENET 16KB、漢字フォントROM 256KB、辞書ROM 256KB（オプション）
表示能力: テキスト 80x25/20/12行、グラフィック 640x400(4/16色) / 640x200(16色) / 320x200(16/256色)
音源: YAMAHA YM2203（FM音源3ch+SSG音源3ch）
FDD: 3.5インチ2DD（MZ-2511は1台、他は2台）
データレコーダ: 2トラック独立ヘッド
インターフェース: プリンター、シリアルポート（A/B）、外部FDD、ジョイスティック、キーボード、マウス、ディスプレイ出力、拡張スロット、ボイスボード

ソフトウェア

MZ-2500では、発売前からソフトウェアの作成依頼を行っていたため、発売直後にソフトウェアが無いという状況は避けられました。メモリマッピングによる移植性の高さから、他機種からの移植も進みましたが、固有の機能や性能を活かしたものは少なく、ベタ移植が多く見られました。市販ソフトウェアは比較的多く揃っていましたが、市場のシェアを覆すには至りませんでした。

添付ソフトウェア

BASIC M25/S25: Microsoft系のBASIC-M25と、シャープ純正のBASIC-S25が搭載されています。起動時に選択可能で、コンバータによって旧機種のプログラムを変換することもできます。
テレフォンソフト: シリアルポートを利用した簡易通信ソフト。

システムソフトウェア

P-CP/M|CP_M: Personal CP/M|CP_Mの移植版。
MSX-DOS: Multiplanを動作させるためのDOS。
S-OS "SWORD": Z80搭載機種共通のシステム。
FENIX: MZ-2500専用に設計されたOS。

ゲームソフトウェア

ゼビウス: 電波新聞社による移植。パレットボード、スムーススクロールに対応。
パックマン: 電波新聞社による移植。キャラクタのアルゴリズムなどが変更されている。
ムーンチャイルド: HOT-BによるRPG。データレコーダの音声トラックを利用。
レイドック: T&EソフトによるMSX2からの移植。MZ-2520では動作しない。
デーモンクリスタル: 電波新聞社によるMZ-1500からの移植。256色モードで動作。
SPACEBLASTER SG: Oh!MZ掲載のMZ-700のゲームをアルゴ機能へ移植。
お嬢様くらぶ: 徳間インターメディアより発売された美少女ゲーム。FM音源を強引に利用。

同人

星くずばこ: 同人ベースのディスクマガジン。EMMボードに対応。

周辺機器

MZ-2500には、多様な周辺機器が用意されていました。

MZ-1F07: 純正5.25インチFDD。
MZ-1D22/24/26: 専用アナログディスプレイ、ディスプレイテレビ。
MZ-1E26: ボイスコミュニケーションボード。
MZ-1E32: パラレルポート。
MZ-1E35: ADPCMボード。
MZ-1E30: HDD I/F。
MZ-1F23: 20MB HDD。
MZ-1R24: 辞書ROMボード。
MZ-1R37: 640KB EMMボード。
MZ-1U09: 拡張スロット。
MZ-1M08: ボイスボード。
MZ-1M10: 4096色パレットボード。
MZ-1X29: 純正マウス。
MZ-1X30: モデムホン。
XE-1AJ/CZ-8NJ2: アタリ仕様のジョイスティック。
優音: MZ-2500用MIDI I/Fを備えたHD64180ボード。

その他

キーボードは従来の配置から変更され、カーソルキーが矢印の向きに配置されました。
MZ-2511/2521/2531のフロントパネルのボリュームやボタン類は、経年劣化で接触不良が起きやすいです。
MZ-2531は、MZ-2521に増設VRAM、辞書ROM、テレビコントロール回路を組み込んだものです。
MZ-2520は、MZ-2521の廉価版で、データレコーダや旧機種互換モードが削除されています。

脚注

MZ-2500 テクニカル・マニュアル（工学社）
BASIC-M25ソース・リスト SuperMZ（工学社）
Super MZ 活用研究（電波新聞社）

関連項目

MZ (コンピュータ)
MZ-80B
MZ-2000
MZ-2200
MZ-2861
Oh!X
マイコンBASICマガジン

MZ-2500は、シャープの8ビットパソコン技術の集大成であり、多くのユーザーに愛されました。その高性能と拡張性は、当時の8ビットパソコンの中でも群を抜いており、その後のパソコンの進化にも大きな影響を与えました。

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