P-1 (哨戒機)

P-1 哨戒機：日本の技術を結集した次世代哨戒機

P-1は、防衛省技術研究本部と川崎重工業が共同開発し、川崎重工業が製造を担当、海上自衛隊が運用する国産の固定翼哨戒機です。P-3Cの後継機として、その高い哨戒能力と国産技術が注目されています。

開発経緯

老朽化したP-3Cの後継機として、国産技術の育成を目指し、2000年に国産開発が決定しました。P-X（次期哨戒機）とC-X（次期輸送機、後のC-2）の同時開発により、部品の共通化によるコスト削減が図られました。哨戒機の国内開発は、日本の航空産業界にとって長年の悲願であり、過去にはP-2JやPS-1などの国産哨戒機を生産した実績があります。

しかし、当初は海上自衛隊内でボーイング757をベースとする案や、アメリカ海軍のP-8との共同開発案も検討され、国産派と海外機導入派の間で対立が生じました。最終的には国産開発が決定し、技術研究本部による研究開発が進められました。

機体開発

設計は2001年度から2004年度、試作は2003年度から2009年度、試験は2006年度から2011年度にかけて行われました。主要部位は国産化され、中型機2機種の同時開発は世界的にも珍しい試みでした。川崎重工業内に大型機設計チームが設置され、三菱重工業、富士重工業（現SUBARU）など各社からの出向者を含め、約650名体制で設計作業が進められました。

アメリカ海軍との相互運用性を確保するため、電子機器に関する共同研究も行われました。2007年7月には試作1号機がロールアウトしましたが、リベットの強度不足やエンジンの不具合により、初飛行が延期されました。同年9月28日、XP-1として初飛行に成功し、その後、防衛省への納入、各種試験を経て、2013年3月12日に開発完了が発表されました。

機体

機体は川崎重工業、エンジンはIHIが製造するF7ターボファンエンジンを搭載。三菱重工業が中胴と後胴、富士重工業が主翼と垂直尾翼を担当するなど、国内各社が分担して製造しています。搭載レーダーは東芝、音響処理装置は日本電気、自己防御装置は三菱電機などが担当しています。アビオニクスには、光ファイバーを使用したフライ・バイ・ライト方式が採用され、操縦系統の軽量化、消費電力の低減が図られています。

P-3Cと比較して、巡航速度と上昇限度が向上し、航続距離も延伸。作戦空域への到達時間短縮、単位時間当たりの哨戒面積向上が期待されています。機体下部には爆弾倉、主翼下にはハードポイントを備え、対潜爆弾、魚雷、対艦ミサイルなどを搭載可能です。

能力向上

2020年代以降の潜水艦の静粛化、高性能化に対応するため、能力向上のための研究が進められています。具体的には、機材のCOTSリフレッシュ、情報融合能力を有した戦闘指揮システム、レーダーや光学及び音響センサーの信号処理技術などが挙げられます。

派生型

P-1をベースとした多用途型、電子情報・画像情報偵察型、早期警戒型などの派生型が検討されています。

多用途型: P-1試作1号機(5501)がUP-1に改修されています。
電子情報・画像情報偵察型: EP-3、OP-3Cの後継機として検討されています。
早期警戒型: E-2Cの後継機として、電波センサと光波センサを融合させた国産早期警戒機の開発が検討されています。

調達と配備

2008年度予算で初めて4機が導入され、2013年3月には最初の2機が厚木基地に配備されました。2015年度予算では単年20機の調達が決定され、本格的な量産体制に入りました。

輸出

武器輸出規制の緩和により、P-3を導入している国を中心に輸出の売り込みが行われています。しかし、ボーイングP-8など競合機が多く、導入国での型式証明、アフターサービス網の整備などが課題となっています。

性能諸元

乗員: 11名
全長: 38.0m
全高: 12.1m
翼幅: 35.4m
最大速度: 996km/h
航続距離: 8,000km
武装: 空対艦ミサイル、短魚雷、対潜爆弾など

P-1は、日本の防衛力強化に貢献する重要な装備であり、今後の活躍が期待されます。

もう一度検索