P400型哨戒艇

P400型哨戒艇：フランス海軍の海洋警備を担った多機能艦

フランス海軍は、1970年代、領海警備強化のため、ブルー計画に基づきPATRA型哨戒艇（トライデント級）を配備しました。しかし、国連海洋法会議による排他的経済水域（EEZ）設定で警備範囲が拡大したことで、トライデント級の小型さは課題となりました。そこで、より大型で航洋性に優れた新型哨戒艇の開発が急務となり、計画排水量422トンのP400型が誕生しました。これは、当初計画されていた30隻のトライデント級建造計画を中止し、代替として建造されたものです。

設計と性能

P400型は、鋼鉄製の船体と上部構造物を持ち、荒波にも耐えられる航洋性を確保するため、船首にブルワークが装備されました。前任のトライデント級（満載排水量148トン）と比較して大幅な大型化が図られ、航続距離や搭載能力が向上しました。

主機は当初、不具合により計画が遅延しましたが、最終的にV型16気筒のSEMT ピルスティク16PA4 V200 VGDSディーゼルエンジンを搭載。初期の船尾排気式から、換装に伴い煙突が設置されました。また、3基のディーゼル発電機（出力120キロワット）を備えています。

通常時の武装は中小口径の機銃に限られますが、必要に応じてミストラル近接防空ミサイルやエグゾセMM38艦対艦ミサイルを搭載可能でした。さらに、SS.12可変深度ソナーの搭載試験も行われています。搭載弾薬は、40mm機銃弾840発、20mm機銃弾2100発です。

物資輸送能力も強化されており、油圧クレーン1基と35立方メートルの貨物室2室を備え、島嶼地域への物資輸送に活躍しました。乗員に加え、コマンド部隊など20名分の居住区も確保されています。

建造と運用

P400型は、1982年5月に6隻、1984年3月に4隻の追加発注があり、計10隻が建造されました。これらの艦艇は、フランス海軍の海洋警備、領海防衛、そして島嶼部への物資輸送など、多様な任務を担いました。

類似艦艇

海上保安庁のあまみ型巡視船は、P400型とほぼ同等の規模と構成の主機を搭載しており、設計思想や運用面で共通点が見られます。両艦艇は、それぞれの国の海洋警備体制において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

まとめ

P400型哨戒艇は、冷戦後の新たな海洋秩序に対応するため、フランス海軍によって開発・運用された重要な艦艇です。その大型化、航洋性、多様な任務遂行能力は、現代の海洋警備における艦艇設計に大きな影響を与えました。トライデント級からの技術的進化と、EEZ拡大という時代の要請に応え、フランス海軍の海洋防衛力を強化したと言えるでしょう。

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