Peripheral Component Interconnect

PCIバス：コンピュータ周辺機器を繋ぐ歴史的バスアーキテクチャ

PCI（Peripheral Component Interconnect）バスは、コンピュータの中央処理装置（CPU）と周辺機器間のデータ通信を高速に行うためのバスアーキテクチャです。2000年代初頭にはパーソナルコンピュータ（PC）、ワークステーション、サーバなどで標準的な拡張バスとして広く採用されました。しかし、より高速なPCI Expressが登場すると、徐々にその地位を譲っていき、2010年代半ばまでには多くのシステムから姿を消しました。

PCIバスの技術仕様

PCIバスは、最大33MHzまたは66MHzの動作クロックで動作し、バス幅は32ビットまたは64ビットでした。1つのバスセグメントには最大32台のデバイスを接続できますが、Intelのガイドラインでは、電気的負荷の観点から10デバイスまでと推奨されていました。64ビットカードを32ビットスロットに装着することも可能でしたが、カード側の設計による互換性の問題がありました。

信号電圧は5Vまたは3.3Vで、カードのスロット形状の違いにより誤挿入を防止する設計でした。PCIデバイスはそれぞれ固有のPCI IDを持ち、マザーボードのリソース競合により動作しない場合、別のスロットへの装着が推奨されていました。スロットの色は一般的に白色でした。

PCIバスは、ISAバスとは部品実装面が逆向きで、ATX規格の縦型PCケースでは部品面が下になるという特徴がありました。また、ISAバスとPCIバスが混在する時期には、PCケースのブラケット取り付け部分を共用するため、両方を同時に使用できないケースも多くありました。

PCIバスは、IRQ共有とデバイスによるバスマスタリングをサポートしていました。これは、それまでのISAバスでは不足していたIRQやDMAチャネルによる拡張性の問題を解決するものでした。また、PCIコンフィグレーションスペースを用いることで、デバイスの識別やレジスタベースアドレスの設定が容易になり、「卵と鶏問題」を解決しました。

PCIバスの歴史

PCIバスは、1991年にIntelが「Local Glueless Bus」として提案されたのが始まりです。当時、標準的な拡張バスであるISAバスは低速でバス調停機能がなく、高速なデバイスの接続やマルチタスクOSの運用におけるボトルネックとなっていました。MCA、EISA、VLバスといった競合規格もありましたが、それぞれに互換性やコスト、アーキテクチャ依存性などの問題がありました。

Intelの提案を受けた各社から、ISAバスを代替する高速な標準汎用バスの要望が多く寄せられ、PC/AT互換機|PC_AT互換機やPC-9821シリーズへの実装、64ビットバスへの拡張対応、拡張スロット形状を含めた仕様策定が進められました。

PCIバスは、当初からアーキテクチャ非依存の汎用高速バスとして設計されましたが、PC/AT互換機|PC_AT互換機における標準バスとしての地位は保証されていませんでした。そのため、初期のマザーボードではEISAバスやVLバスも搭載されたり、VLバス上にPCIブリッジを実装する製品も存在しました。

PCIバスは、ワークステーションやサーバ、オフィス[[コンピュータ]]でも採用され、特にコンピュータグラフィックスや大規模データ処理において重要な役割を果たしました。様々なCPUアーキテクチャに対応したPCIコントローラや、PCIバスを拡張するPCIブリッジも開発されました。

2002年には、PCIとAGPの後継規格であるPCI Expressが発表され、その後PCの標準汎用拡張バスとなりました。PCIバスは、歴史的な役割を終え、コンピュータ技術の進化を支えた重要なバスアーキテクチャとして記憶されています。

PCI規格のバージョン履歴

1991年：Local Glueless Busの発表
1992年：PCI 1.0策定
1993年：PCI 2.0策定（64ビット規格、コネクタ仕様制定）
1994年：PCI 2.1改訂（Delayed Transactionの明文化、PCIバスブリッジ、66MHz仕様追加）
1999年：PCI 2.2改訂（MSI機能追加）
2000年：PCI 2.3改訂（5V信号のみ動作の拡張カード廃止）
2002年：PCI 3.0制定（5V信号動作のマザーボードスロット廃止）、PCI-X 1.0bおよび2.0制定、PCI Express 1.0制定
2003年：ExpressCard策定

関連規格

PCI Express
PCI設定空間
AGP
EISA
ISA
MCA
VLバス
APバス
XTバス
ロープロファイルPCI
* コンパクトPCI

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