PhyloCode

PhyloCode（ファイロコード）

PhyloCode、正式にはInternational Code of Phylogenetic Nomenclature（国際系統命名規約）は、系統発生学に基づいて生物の名前を定義・命名するためのルールを定めた規約です。この規約は、特にクレード名（単系統群に基づく生物の分類名）の命名を中心に構築されています。PhyloCodeは、International Society for Phylogenetic Nomenclature（ISPN）が管理するもので、現在は第6版が2020年に紙媒体で出版され、同時に『Phylonyms』が初めてPhyloCodeに基づく命名の出発点としても刊行されました。

PhyloCodeの特徴は、種名などに関しては既存の命名規約に従い（国際藻類・菌類・植物命名規約や国際動物命名規約など）、新しい命名策はこちらの規約を置き換えるのではなく補完することを目的としている点です。

系統的な定義

PhyloCodeでは、どのように系統が形成されるかに基づいて名前が付けられます。具体的には、単系統群のクレード名称のみが有効で、側系統群や多系統群の命名は不適切とされています。定義を行う際には、標本、種、または派生形質が用いられます。
階級に基づく従来の命名規約とは異なり、PhyloCodeでは必ずしも階級を使用しなくてもよいものの、必要に応じて使用することも認めています。

PhyloCodeの命名方法には、いくつかの具体的な定義があります。例えば、最小クレード定義では「AとBの最も近い共通祖先に由来する群」など、最大クレード定義では「Aを含むがZは含まない最も広い群」などが用いられます。また、派生形質に基づく定義もあり、特定の形質を持つ最初の生物に基づく群を定義します。

PhyloCodeの構成

PhyloCodeの規定は明確に条文で整理されており、各条文には注釈や実例が記されていることが特徴です。目次の構成は、原則、細則、分類群、公表、名称などに分かれており、合理的に情報が整理されています。また、PhyloCodeの登録はRegNumデータベースを通じて行われ、クレード名やその定義を一般に共有することが目指されています。

歴史的背景

PhyloCodeの策定は1998年のハーバード大学でのワークショップがきっかけであり、その後、多くの改定が行われました。2000年には草案が公開され、科学者からのフィードバックが求められました。続く数々のワークショップや国際会議を経て、PhyloCodeはより洗練されたものとなってきました。

今後の展望

PhyloCodeが取り入れるべき命名法としての実用性については賛否が分かれていますが、登録データベースRegNumに基づくルールから着手することが推奨されています。PhyloCodeが科学界で実際に広く取り入れられるかどうかは、今後の発展に委ねられています。批判的な意見も存在しますが、多くの科学者がPhyloCodeの思想を検討し続けています。

これらのルールや定義が生物の分類学に与える影響は大きく、PhyloCodeは今後の生物命名法の基盤となる可能性を秘めています。

もう一度検索