Prime Video Boxing

「Prime Video Boxing」は、世界的なオンラインストリーミングサービスであるAmazon Prime Videoが展開するプロボクシング中継コンテンツ、およびその興行ブランドの総称です。かつては「Prime Video Presents Live Boxing」という名称で親しまれていましたが、2024年10月開催の第10弾より現在の名称に改称されました。

本シリーズは、2021年11月にアマゾンジャパンが日本の老舗ボクシングジムである帝拳プロモーション、そして世界的なプロモーターであるトップランクと戦略的なパートナーシップを締結したことに端を発します。この提携に基づき、帝拳が中心となって企画・運営する世界タイトルマッチをメインとした大規模な興行を、プライムビデオで独占ライブ配信しています。

配信されるのは、メインイベントの世界タイトル戦に加え、アンダーカードから原則として8回戦以上の主要試合を厳選し、概ね3試合から5試合程度で構成されます。Amazonプライム会員であれば、これらのプレミアムなボクシングイベントを追加料金なしで視聴することが可能です。番組内では、ラウンドインターバルや試合の合間にパートナー企業のCMが挿入されますが、これは2025年4月にプライムビデオが導入した広告つきプランとは別の形式です。

プライムビデオにとって日本国内で初めて手掛けたスポーツ中継となったのは、記念すべきシリーズ第1弾です。2022年 4月9日にさいたまスーパーアリーナで開催されたこのイベントでは、WBA・IBF・IBO世界ミドル級王座統一戦として、当時日本のエースであった村田諒太と、世界的な強豪ゲンナジー・ゴロフキンが対戦し、大きな注目を集めました。

これまでに数々のビッグマッチが配信されており、日本のトップボクサーたちが世界王座を争う激闘が繰り広げられています。特に、バンタム級、スーパーバンタム級で世界を席巻する井上尚弥や、複数階級制覇を達成した寺地拳四朗、中谷潤人、田中恒成、そしてプロボクシング転向後に注目を集める那須川天心といった人気選手の試合が多く組まれています。

過去の主な配信カードには以下のようなものがあります。（一部抜粋）

第1弾 (2022年 4月9日、さいたまSA): 村田諒太 vs G.ゴロフキン (WBA・IBF・IBOミドル級王座統一戦) - ゴロフキン9回TKO勝利
第2弾 (2022年 6月7日、さいたまSA): 井上尚弥 vs N.ドネア (WBA・IBF・WBCバンタム級王座統一戦) - 井上2回TKO勝利
第3弾 (2022年 11月1日、さいたまSA): 寺地拳四朗 vs 京口紘人 (WBC・WBAライトフライ級王座統一戦) - 寺地7回TKO勝利
第4弾 (2023年4月8日、有明アリーナ): 井上拓真 vs R.ソリス (WBAバンタム級王座決定戦) - 井上判定勝利、那須川天心 vs 与那覇勇気 (スーパーバンタム級6回戦) - 那須川判定勝利 (プロデビュー戦)
第5弾 (2023年9月18日、有明アリーナ): 寺地拳四朗 vs H.ブドラー (WBA・WBCライトフライ級タイトルマッチ) - 寺地9回TKO勝利、那須川天心 vs L.グスマン (スーパーバンタム級8回戦) - 那須川判定勝利
第8弾 (2024年5月6日、東京ドーム): 井上尚弥 vs L.ネリ (主要4団体Sバンタム級王座統一戦) - 井上6回TKO勝利、井上拓真 vs 石田匠 (WBAバンタム級タイトルマッチ) - 井上判定勝利
第9弾 (2024年7月20日、両国国技館): 中谷潤人 vs V.アストロラビオ (WBCバンタム級タイトルマッチ) - 中谷1回KO勝利、那須川天心 vs J.ロドリゲス (10回戦) - 那須川3回TKO勝利
第12弾 (2025年5月5日、ラスベガス): 井上尚弥 vs R.カルデナス (主要4団体Sバンタム級王座統一戦) - 井上8回TKO勝利

本シリーズの制作体制には変遷があります。第1弾から第8弾までは、フジテレビのボクシング中継班『FUJI BOXING』のスタッフがプロデュースを手掛け、実況も主に同局のアナウンサーが担当しました。これは、初期の主要選手である村田諒太の試合放映権がフジテレビにあったためです。第9弾からは、日本テレビ系列で帝拳が関与する別の中継番組『DYNAMIC GLOVE』の映像制作を行うAX-ONがプロデュースを担当し、実況も日本テレビ所属または出身のアナウンサーが担っています。また、海外開催となった第12弾（ラスベガス）では、現地プロダクションの映像を基にWOWOWが番組プロデュースを担当するという協力体制が見られました。

視聴記録の面でも特筆すべき点があります。2022年 6月7日に配信された井上尚弥対ノニト・ドネアのバンタム級王座統一戦は、配信初日の視聴数で当時のプライムビデオ国内歴代1位を記録しました。この記録はその後、2023年のWBC決勝戦に一時譲りましたが、2024年5月6日の井上尚弥対ルイス・ネリ戦で再び視聴者数の新記録を樹立しています。

本シリーズのプライムビデオでの配信は日本国内に限定されており、海外では興行ごとに異なるプラットフォームで配信されています。なお、アメリカのプライムビデオで配信されている「プレミア・ボクシング・チャンピオンズ（PBC）」とは異なり、日本では非PPV興行の一部がプライム会員以外も視聴可能な無料生配信として提供されることもありますが、日本語実況は付かない点が異なります。

配信された試合は、約2ヶ月後にWOWOWライブのボクシング専門番組「エキサイトマッチSP」にて、出場選手本人のセルフ解説付きでダイジェスト放送されるのが恒例となっています。この番組はWOWOWオンデマンドに加え、プライムビデオ内のチャンネル「WOWSPO」でも視聴できます。

ボクシング界の話題やPrime Video Boxingの展望を深掘りする関連番組として、「ボクシングナビ〜プレミアムラウンジ」がプライムビデオで配信されています。この番組は香川照之がナビゲーターを務め、元世界王者などをゲストに迎え、ボクシングファン必見の内容となっています。

このように、「Prime Video Boxing」は日本のボクシング中継において、オンラインストリーミングサービスの強みを活かした新たな視聴体験を提供し、数々の歴史的な試合をファンに届けています。

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