Puppy Linux

Puppy Linux（パピーリナックス）は、その名の通り軽量なLinuxディストリビューションの一つです。特徴的なのは、Live CDとして動作し、ハードディスクへのインストールを必須としない点です。このため、CDから直接起動し、システムを体験することができます。

概要



Puppy Linuxは、GPLライセンスに基づいて無償で配布されており、誰でも自由に利用できます。マスコットには子犬が採用され、親しみやすい印象を与えます。初期のバージョンではSlackwareとの高い互換性がありましたが、現在はSlackware、Ubuntu、Debianをベースとした複数のバージョンが存在し、それぞれのパッケージを利用可能です。

特徴



  • - 軽量性と柔軟性:
Live CDとして提供され、ハードディスクやUSBメモリへのインストールも可能です。特に「フルーガルインストール」が推奨されており、システムの大部分が圧縮ファイルとして扱われます。個人設定は差分として保存できるため、システムの変更も容易です。
  • - リソース消費の少なさ:
かつては古いPCでも動作するように設計されており、CPUがPentium 166MMX、メインメモリが128MBでも動作可能でした。しかし、現在のバージョンでは最低限のメインメモリ要件が増加しています（6.x系では768MB、7.x系では1GB）。
  • - RAMベースの動作:
起動時にシステムをRAMへ読み込むため、ハードディスクがなくても動作します。起動後はCDドライブが不要になるため、他の用途に使用できます。
  • - パッケージ管理:
パッケージ管理にはPETパッケージマネージャーが利用され、PET形式のパッケージが用いられます。これは、ディレクトリ構成とインストール情報をパッケージ化したtgz, txzファイルです。
  • - カスタマイズ性:
リマスタリング機能を利用することで、ユーザーは自分好みのカスタマイズを施したLive CDを作成できます。主要なアプリケーションやライブラリは、Slackware、Ubuntu、Debianから移植されています。また、多くのアプリケーションはスクリプトによって構築されています。
  • - Debパッケージ対応:
バージョン4.3以降では、DebianやUbuntuで利用されているdebパッケージに標準で対応し、Ubuntuのパッケージを利用できるようになりました。

推奨環境



バージョンによって推奨環境は異なりますが、一例としてtahrpup 6.0.5 CEの場合、以下のような環境が推奨されています。

  • - プロセッサ: 1GHz Pentium 4
  • - メモリ: 768MB
  • - ブート可能なCDドライブまたはUSB接続のドライブ

歴史



Puppy Linuxは、オーストラリアのBarry Kauler氏によって開発されました。公式ウェブサイトでは英語版がリリースされていますが、世界中で人気があり、各国語版に改編されたバージョンも多く存在します。公認された日本語版も提供されています。

リリース



Puppy Linuxは、複数の系列に分かれて開発が進められています。

  • - Precise Puppy:
Barry K氏による開発で、Ubuntu 12.04.1(Precise Pangolin)とバイナリ互換性があります。PAEカーネルが標準となり、Ubuntuのリポジトリにもアクセスできます。
  • - Slacko Puppy:
01micko氏が率いるプロジェクトチームによる開発で、Slackwareをベースとしています。新しいカーネルやライブラリを採用し、32bitOSながら4GB超えのRAMをサポートするPAEカーネルもリリースされています。Slacko 7.0ではzramに対応しました。
  • - Wary Puppy・Racy Puppy:
Barry K氏による開発で、古いハードウェアのサポートを意図しています。RacyはWaryよりも新しいカーネルやXサーバーを採用しています。バージョン5.5.1以降はPrecise Puppyに集約される見込みです。
  • - Lucid Puppy:
Playdayz氏が率いるプロジェクトチームによる開発で、Ubuntu 10(Lucid)とバイナリ互換性があります。カーネル2.6.33.2を使用し、保守されてきましたが、現在は更新が停止しています。
  • - Raring Puppy:
Barry K氏による開発で、Ubuntu 13.04(Raring Ringtail)とバイナリ互換性がありますが、アルファ版のみが公開されています。
  • - tahrpup CE:
666philb氏が取りまとめているプロジェクトで、Ubuntu 14.04 (Trusty Tahr) とバイナリ互換性があります。32bit版と64bit版が存在し、PAEカーネルの有無が異なります。
  • - xenialpup CE:
666philb氏が取りまとめているプロジェクトで、Ubuntu 16.04 (Xenial Xerus) とバイナリ互換性があります。公式版は 7.5 です。
  • - bionicpup32・bionicpup64 CE:
Ubuntu 18.04 (Bionic Beaver) とバイナリ互換性があります。32bit版と64bit版で収録されているアプリケーションの一部が異なります。
  • - Raspup:
01micko氏によるプロジェクトで、Raspberry Pi OSのバイナリパッケージと互換性があります。x86, x64以外のアーキテクチャ(armhf 32bit)をサポートする最初のPuppyです。
  • - fossapup64 CE:
666philb氏が取りまとめているプロジェクトで、Ubuntu 20.04 (Focal Fossa) とバイナリ互換性があります。アプリをほとんど含まないミニマルシステムとして起動することもできます。
  • - S15Pup:
Peebee氏によるプロジェクトで、Slackware 15.0とバイナリ互換性があります。zramに対応しています。
  • - F96-CE (Fossapup64 9.6):
Rockedge氏を中心とするプロジェクトで、Fossapup64 9.5をベースにしています。カーネルは6.0系で、音源システムにはpulseaudioが採用されています。
  • - BookwormPup:
Debian Bookwormをベースとしたバージョンで、64bit版と32bit版が存在します。パッケージ管理にaptやsynapticを使用しますが、Puppy独自のpetパッケージも扱えます。カーネルは6.1系で、音源システムにはPipeWireが採用されています。

日本語化



日本語化ファイルを導入することで、最新版でも日本語表示が可能です。ただし、日本語入力システムは32bit用であるため、64bit Puppyでは動作しない場合があります。

パピーリナックス日本語版



有志によって英語版を日本語化し、初心者でも使いやすいようにアプリケーションの追加・修正が行われたバージョンです。

派生版



  • - Lxpup:
Puppy Linuxのデスクトップ環境をLXDEに置き換えたものです。
  • - Yara OSX:
デスクトップ環境にXfceを採用し、MacOS風の画面を実現したものです。

まとめ



Puppy Linuxは、軽量で柔軟性があり、古いPCでも動作するLinuxディストリビューションです。カスタマイズ性が高く、様々な派生バージョンが存在するため、用途に合わせて最適なものを選ぶことができます。Live CDとして手軽に試せるため、Linux初心者にもおすすめです。

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