Q&Aサイト

Q&Aサイトとは

Q&Aサイトは、インターネット上でユーザーが質問を投稿し、それに対して他のユーザーが回答することで、疑問や問題を解決する仕組みを提供するウェブサイトです。質問サイト、Q&Aコミュニティ、ナレッジコミュニティとも呼ばれ、知識や経験を共有する場として広く利用されています。

Q&Aサイトの種類

Q&Aサイトには、大きく分けて専門家が回答するタイプと、不特定多数のユーザーが相互に回答するコミュニティ型の2種類があります。

専門家型: 特定の分野に精通した専門家が質問に回答します。例えば、法律分野の「LawPivot」、医療分野の「保団連の健康相談サイト」、IT分野の有料サイト「Experts Exchange」などがあります。
コミュニティ型: ユーザー同士が知識や経験を共有し、質問に自由に回答し合う形式です。幅広いジャンルを扱うものとしては、「Yahoo!知恵袋」「人力検索はてな」「OKWave」などがあります。海外では、「Ask.fm」「Yahoo! Answers」「知識 in」「百度知道」などが有名です。特定のジャンルに特化したサイトもあり、女性向けの「発言小町」、製造業・技術系の「技術の森」、情報システム系の「シス蔵」、数学・科学系の「NazoLab」、プログラミング系の「Stack Overflow」などが存在します。

一部のQ&Aサイトは、他のQ&Aサイトと連携している場合もあります。「教えて！goo」はOKWaveのシステムを利用しており、投稿された質問を他のサイトでも閲覧・回答できるようになっています。また、OKWaveは自社システムを外販しており、「技術の森」などでも採用されています。Q&Aサイトのシステムは、CRMやFAQなど企業内の業務にも利用されています。例えば、OKWaveは金融、保険、製造、小売など様々な業界にシステムを販売し、多くのサイトで導入されています。

質問と回答の手順

コミュニティ型のQ&Aサイトでは、質問者は質問ボタンを押し、質問文を入力、カテゴリを選択して投稿します。すると、質問ごとに専用ページが作成され、サイトのトップページやカテゴリページに表示されます。ランキング機能があるサイトでは、閲覧数や評価の高い質問が一覧表示されることもあります。

閲覧者は興味のある質問を選び、内容を確認して、回答できる場合は回答を投稿します。回答は質問文の下に追加され、質問者や他の閲覧者に公開されます。必要に応じて、質問者は補足質問をしたり、回答にコメントを投稿することも可能です。

回答の受付は質問者が満足するまで続き、最終的に質問者が最も良い回答を一つ選び、終了となります。一部のサイトでは、未解決のまま一定期間が経過すると自動的に終了する場合もあります。

投稿された質問と回答は、サイト内や検索エンジンから検索できる過去ログとして利用されたり、類似質問表示機能によって再利用されることがあります。コミュニティ型サイトでは、回答はあくまで個人の見解であり、その正確性は保証されません。

Q&Aサイトの機能

Q&Aサイトは、質問と回答に特化したウェブサイトとして、様々な工夫が凝らされています。汎用的な掲示板とは異なり、質問の手順や場所が明確で、初心者でも安心して利用できるようになっています。

多くのQ&Aサイトでは、会員登録が必須であり、発言者はIDによって識別され、発言履歴が公開されることもあります。質問ページでは、発言者ごとに回答や補足がまとめられるため、内容を把握しやすいのが特徴です。発言はIDと関連付けられて残るため、問題発言はコミュニティ内での評価に影響し、荒らし対策にも有効です。

Q&Aサイトは、質問者と回答者をマッチングするナレッジマーケットとしての側面も持ち合わせています。例えば、「Yahoo!知恵袋」には「回答ひろば」という機能があり、回答者が興味を持ちそうな質問を一覧表示します。また、回答者には無償のボランティアが多いですが、対価を求める回答者や専門家も存在します。そのため、ポイントシステムや専門家を招聘するサービスも提供されています。

回答の質や意欲を高めるために、様々な仕組みが導入されています。例えば、「Yahoo!知恵袋」では、質問者がベストアンサーを選び、ポイントを付与します。「人力検索はてな」では、回答者がポイントをAmazonギフト券などと交換できる制度があります。ベストアンサーが多い利用者には、カテゴリーマスターの称号が与えられることもあります。

その他、アンケート機能やブックマーク機能、ハウツーサイト的なサービスを提供しているQ&Aサイトもあります。

質問の傾向

Q&Aサイトでは、日々多くの質問と回答が投稿されています。例えば、「教えて！goo」では、月に約200万件以上の質問があり、平均3.5件の回答がついています。「Yahoo!知恵袋」では、累計1億件以上の質問と2億3千万件以上の回答が投稿されています。

質問は、カテゴリ別に分類されていることが多く、IT、生活、医療、スポーツ、ビジネス、教育、社会、文化、ゲーム、エンターテイメントなど、多岐にわたります。カテゴリの人気には国ごとの違いが見られますが、恋愛相談や人生相談、法律に関する質問は人気の傾向があるようです。

利用者層

Q&Aサイトの利用者は非常に多く、「教えて！goo」では月間3000万人以上の利用者がおり、閲覧数は1億PVを超えています。利用者の中心は30代、40代で、専業主婦や様々な職業の方が利用しています。「Yahoo!知恵袋」には1000万人以上の登録ユーザーがいます。

研究分野としてのQ&Aサイト

Q&Aサイトのデータは形式が一定であり、研究資料として活用しやすいという特徴があります。例えば、「Yahoo!知恵袋」のデータは、自然言語処理研究に利用されています。

Q&Aサイトの歴史

Q&Aサイトの原型は、2000年頃に登場しました。それ以前にはパソコン通信の掲示板やニュースグループがありましたが、設定が難解でした。ウェブブラウザで利用できるHTTP技術の普及に伴い、「2ちゃんねる」のような大規模掲示板やウェブ型のQ&Aサイトが登場しました。

2000年代は、パソコンやインターネットが急速に普及した時期であり、初心者からの質問が急増しました。メーカーやプロバイダのサポートセンターは電話が繋がりにくく、ユーザーはQ&Aサイトに助けを求めました。一部のユーザーは有料でも丁寧に教えてもらいたいというニーズがあり、「人力検索はてな」のような有料Q&Aサイトも誕生しました。また、Q&Aサイトは、eコマースサイトや企業内のナレッジマネジメントにも利用されるようになりました。

2000年代中盤には、Yahoo!やライブドアなどのポータルサイトが相次いでQ&Aサイトを開設しました。この時期は、Web 2.0の台頭やCGM（Consumer Generated Media）の普及と重なり、Q&Aサイトはブログなどと共に利用が推奨されました。また、Q&Aサイトを題材にした書籍やドラマも登場しました。iモードへの対応も進み、2007年〜2008年にかけてQ&Aサイトの利用は急増しました。

大規模化したQ&Aサイトは、犯罪や不正も引き起こしました。例えば、宿題の丸写しや大学入試問題の投稿、ステルスマーケティングなどが問題視されました。また、ストーカー殺人事件でQ&Aサイトが利用された事例も存在します。また、ネタ質問の増加も問題となっています。

近年は、スマートフォンへの移行が進み、Q&Aサイトの利用はさらに身近になっています。IDや事前検閲などの従来の仕組みを超える、新しい工夫が模索されています。

Q&Aサイトの沿革

以下は、Q&Aサイトの主な沿革です。

1999年8月: OKWaveがOK Webのベータ版を開始
1999年9月: Xpertsite.comのベータテストを開始
1999年10月: ExpertCentral.comを開始、読売新聞社が発言小町を開始
2000年1月: OKWaveがOKWebコミュニティを開設、About.comがExpertCentral.comを買収
2000年3月: Xpertsite.comがAskMe.comに改称
2000年5月: リアルコミュニケーションズがKスクエアを開始
2000年10月: DBdicを開始
2000年11月: gooがOK Webのシステムを使って教えて！gooを開始
2001年7月: はてなが人力検索はてなを開始
2002年4月: GoogleがGoogle Answersのベータテストを開始
2002年6月: マイクロソフトが答えてねっとを開始
2002年10月: NAVERが知識 inを開始
2004年1月: NHN Japanが知識plusを開始
2004年4月: Yahoo!知恵袋のベータ版を開始
2004年11月: TSUTAYAがTSUTAYA online はてなを開始
2005年1月: OK Webの質問が書籍化、ドラマ化
2005年6月: 百度が百度知道を開始
2005年10月: エキサイトがexcite質問広場を開設、OK Webがサービス名をOKWaveに変更
2005年12月: Yahoo!がYahoo! Answersのベータ版を開始
2006年2月: ライブドアがlivedoor knowledgeを開始
2006年5月: YAHOO!がモバイル版のYahoo!知恵袋を開始
2006年8月: 答えてねっとのシステムトラブルが発生、Windows Live QnAのベータ版を公開
2006年10月: マイクロソフトがMSN相談箱を開始
2006年11月: Google Answersが終了
2006年12月: AmazonがAskvilleを開始
2007年11月: AOLがYeddaを買収
2008年2月: リアルコムがAskmeを買収
2008年5月: Stack Overflowを開始
2009年6月: 知識plus、答えてねっとが終了
2010年6月: Quoraを公開
2010年7月: FacebookがFacebook Questionsの計画を発表（実際はアンケート機能）
2010年9月: カカクコムのokyuu.com Q&Aが終了
2010年10月: Ask.fmを開設
2011年1月: 知乎が開始
2011年3月: 大学入試問題ネット投稿事件が発覚
2011年6月: 従業員がHivemine社を設立してAskMeを買収
2012年1月: ステルスマーケティング事件が発覚
2012年8月: YAHOO!がAndroidに対応した「Yahoo!知恵袋アプリ」を公開
2017年11月: Quora日本語版リリース

参考文献

山崎秀夫 (2001). 成功する会社は「知恵市場」から生まれる. 徳間書店. ISBN 978-4198613129