R音性母音

R音性母音（アールおんせいぼいん）とは、発音時にRのような音色を伴う母音のことです。これは、単に母音を発するだけでなく、舌の動きが加わることで生じる特殊な音響現象です。具体的には、母音を調音する際に舌の先を反らせたり、舌全体を盛り上げたりする動作が伴います。この動作によって、咽頭部に狭めが生じ、その結果として母音がR音のような音色を帯びるようになります。この現象は「R音化」とも呼ばれています。

R音性母音の特徴

R音性母音の最も重要な特徴は、その音色が通常の母音とは異なる点にあります。これは、舌の動きによって生じる咽頭部の狭めが、母音の音響的な特性に変化をもたらすためです。R音性母音は、その特有の音色から、他の母音と区別することができます。また、R音性母音は、単独の音素として存在するだけでなく、他の音素と組み合わさって現れることもあります。

国際音声記号での表記

国際音声記号（IPA）では、R音性を示すための特別な記号が用意されています。それは[ ˞ ]で、この記号は、R音性を持つ母音を表すために、母音の文字の右側に密着して付加されます。例えば、[a˞]はR音性を帯びた母音[a]を表します。また、シュワー（曖昧母音）のR音性を示すための特別な記号も存在し、これはシュワーを表す記号の中央の横線が斜め上にあがってR音性を示す記号と連結するような形をしています。

具体的な言語例

R音性母音は、世界中の様々な言語に見られますが、その現れ方は言語によって異なります。以下にいくつかの例を挙げます。

中国語

中国語、特に北京語などの北方方言では、R音性母音が非常に多く現れます。ピンインで「er」と表記される音や、児化音と呼ばれる音がこのR音性母音に相当します。例えば、「花儿 (huār)」[xuɑ˞˥]は、R音性を持つ母音を含む単語の例です。このように、中国語ではR音性母音が、単語の意味を区別する上で重要な役割を果たしています。

アメリカ英語

アメリカ英語にもR音性母音が見られます。例えば、単語「murder」の最初の母音[ˈmɝ.dɚ]はR音性母音です。アメリカ英語では、R音が母音に影響を与え、結果としてR音性母音が生じることがあります。これは、アメリカ英語特有の音韻現象の一つです。

イギリス英語

一方、イギリス英語にはR音性母音は存在しません。イギリス英語では、R音は子音として発音され、後続の母音と連結する際にのみ現れることがあります（Rリンキング）。例えば、アメリカ英語で[ˈmɝ.dɚ]と発音される「murder」は、イギリス英語では[ˈmɜːdə]のように発音されます。

まとめ

R音性母音は、舌の動きによってRのような音色を帯びる特殊な母音です。国際音声記号では、専用の記号を用いて表記され、世界中の様々な言語に見られますが、その現れ方は言語によって異なります。中国語やアメリカ英語ではR音性母音が比較的多く現れる一方、イギリス英語にはR音性母音は存在しません。R音性母音は、各言語の音韻体系を理解する上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

関連項目

• - 英語の /r/ の発音

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