REAL (L'Arc〜en〜Cielのアルバム)

L'Arc〜en〜Ciel アルバム『REAL』

『REAL』は、L'Arc〜en〜Cielが2000年8月30日にリリースした8枚目のオリジナルアルバムです。前作『ark』『ray』から約1年1ヶ月ぶりとなる本作は、バンドにとって新たな挑戦が込められた作品となりました。全11曲が収録され、ミレニアムを跨いだ時代背景とメンバーの音楽性が色濃く反映されています。

アルバム概要

『REAL』は、前作の2枚同時リリースという特殊な状況から一転、「1枚のアルバムに濃縮する」というコンセプトで制作されました。サウンド面では、これまでの作品と比較して、よりソリッドでハードなアプローチが特徴です。2000年代という新時代を迎え、1999年から2000年にかけて制作された楽曲群は、hydeの未来観を反映した歌詞世界を形成しています。また、全曲のタイトルが英数字表記である点も特徴的で、これはL'Arc〜en〜Cielのアルバムにおいて唯一の試みです。

本作のマスタリングは、ニューヨークのスターリング・サウンドのエンジニア、トム・コインが担当。tetsuyaは、マスタリングのやり直しを依頼したエピソードを語っており、細部にまでこだわった音作りを伺わせます。トム・コインは、tetsuyaのソロ作品でもマスタリングを担当しており、tetsuyaは彼を「気さくでやさしいパパ」と慕っていました。彼の死はtetsuyaにとって大きな衝撃だったようです。

背景とコンセプト

前作での2枚同時制作を踏まえ、本作では「何曲も作り、1枚に濃縮する」という原点回帰の方針がとられました。サウンド面では、よりソリッドなサウンドを追求。2000年代という新たな時代を迎え、楽曲には未来観が盛り込まれています。1999年末から2000年初頭にかけて、バンドは初のカウントダウンライブ「RESET>>LIVE 000」を開催。このライブでは、新曲「finale」と「NEO UNIVERSE」が初披露され、新たなミレニアムの幕開けを告げました。

録音と音楽性

録音作業は2000年初めから6月頃まで行われ、シングルとして先行リリースされていた「LOVE FLIES」「NEO UNIVERSE」「finale」に加え、新曲が収録されています。メンバーそれぞれが作曲した楽曲が収録され、共同プロデューサーとして岡野ハジメに加え、CHOKKAKUと亀田誠治が参加。楽曲ごとにスタジオを変えてレコーディングが行われ、各メンバーが音作りに拘り抜いた様子が伺えます。

本作の音楽性としては、ハードロックやグランジの要素を強めたギターアプローチが特徴的です。kenは、ギターをメインに作曲したことで、偶発性を重視したと語っています。また、Pro Toolsを全面的に導入したことも本作の特徴の一つで、録音環境に拘り抜いて制作されました。hydeのボーカルも変化が見られ、高音重視から低音域中心の発声へと変化しています。歌詞のテーマは、hydeが感じた現実と夢であり、ミレニアムを跨いだ時代背景が反映された内容となっています。

各楽曲について

get out from the shell -asian version-: yukihiro作曲のインダストリアル色が強い楽曲。6弦ベースをギターのように演奏するtetsuyaのベースプレイが特徴的。歌詞はグリム童話のような怖さを意識してhydeが手掛けた。
THE NEPENTHES: ken作曲のハードロックナンバー。変拍子を多用し、ギターソロではトーキングモジュレーターを使用。hydeがギターを弾いているパートも収録。tetsuyaはスラップ奏法でベースを演奏。
NEO UNIVERSE: ken作曲のエレクトロポップ。シンセサイザーを多用し、バンドサウンドから離れたアプローチが特徴。歌詞は未来への希望と現実を見据えた内容。
bravery: tetsuya作曲のメロディアスなロックナンバー。亀田誠治が編曲に参加。歌詞は過去に囚われず、前向きに進むことを歌っている。
LOVE FLIES: ken作曲のグランジロック。シンセサイザーなどの電子楽器を排し、ギター、ベース、ドラムのスリーピースサウンドを強調。タイトルは愛が羽ばたいていく様子を表している。
finale: tetsuya作曲のバラード。映画『リング0 バースデイ』の主題歌。ブリストルサウンドを意識したアレンジが特徴。映画の登場人物に自身を重ねてhydeが作詞した。
STAY AWAY: tetsuya作曲のポップロック。歪んだベースサウンドとキャッチーなメロディーが特徴。メンバーがダンスを披露するユニークなMVも話題になった。歌詞は自由を求める心情を歌っている。
ROUTE 666: hyde作曲のハードロックナンバー。古典的なロックンロールを意識して制作。ギターソロとベースソロが聴きどころ。タイトルは「国道66号線」と「獣の数字」を掛け合わせている。
TIME SLIP: ken作曲のミディアムテンポナンバー。ノスタルジックな歌詞が印象的。シンプルな構成ながら、ギターサウンドに拘りが見られる。
a silent letter: ken作曲のバラード。空間的な広がりを持たせたサウンドが特徴。歌詞は大切な人に宛てた手紙をイメージ。
ALL YEAR AROUND FALLING IN LOVE: hyde作曲のストレートなラブソング。日常の何気ない情景を切り取った歌詞が特徴。シンセサイザーを効果的に使用。

リリース形態

CD、MD、LP、Super Audio CDの4形態でリリース。CDは初回限定盤がデジパック仕様となっています。LPは初の試み、Super Audio CDは最初で最後。後に、ハイレゾ音源やサブスクリプションサービスでの配信も開始されました。

評価

音楽評論家からは、多彩な作風とソリッドなサウンドが評価されています。平野和祥は「パワフルなロックモード」と評し、堀江晶太は「tetsuyaのベースプレイは自身のルーツ」と述べています。沢田太陽は、この頃のラルクを「グランジ/オルタナ期」と位置づけ、高橋翔は「泥臭いロックバンド」と評しました。

チャート成績

オリコン週間アルバムチャートで初登場1位を獲得し、2週連続1位を記録。ミリオンセラーも達成しました。

ライヴツアー

アルバム発売後には、ライブハウスツアー「CLUB CIRCUIT 2000 REALIVE」とドームツアー「TOUR 2000 REAL」を開催。ライブハウスツアーでは、機材のみを置いたシンプルなステージセットで、ドームツアーでは大規模な演出で観客を魅了しました。

まとめ

『REAL』は、L'Arc〜en〜Cielの音楽性を深化させた意欲作であり、メンバーのソロ活動への萌芽も感じられる作品です。ハードロックやグランジの要素を取り入れつつ、緻密に作り込まれたサウンドは、リスナーを魅了し続けています。

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