S級駆逐艦 (初代)

S級駆逐艦：第一次世界大戦期のイギリス駆逐艦

S級駆逐艦は、第一次世界大戦中にイギリス海軍が建造した駆逐艦の艦級です。この艦級は、アドミラルティ型を基本とし、ソーニクロフト型とヤーロウ型という2つの特型を含みます。S級駆逐艦は、その設計思想と性能において、当時の駆逐艦建造技術の進歩を象徴する存在でした。

開発の背景

当初、イギリス海軍はドイツ帝国海軍の新型駆逐艦に対抗するため、R級を凌駕する性能を持つV級・W級駆逐艦を建造していました。しかし、ドイツの駆逐艦の情報が過大評価であったと判明したため、1917年2月、イギリス海軍は駆逐艦の設計をR級をベースとしたものに戻すことを決定しました。これにより、1917年度計画で建造されたのがS級駆逐艦です。

設計の特徴

基本設計

S級駆逐艦の基本設計は、アドミラルティ改R級を踏襲しています。しかし、船首楼部の設計は大きく変更されました。従来の平坦な前甲板とV字型断面に代わり、本級ではタートルバック型の船首楼甲板を採用。シアとフレアを強化することで艦首部の乾舷を5.4メートルに高め、凌波性を大幅に向上させました。1918年8月には、荒天時でもC級軽巡洋艦「カースター」に随伴し、20～24ノットを発揮した艦もおり、凌波性の高さが実証されました。

特型

ヤーロウ型は、他社艦に比べて排水量とGM値が小さく、低いシルエットが特徴です。ソーニクロフト型は、1番砲をプラットフォーム上に設置し、扁平な1番煙突を備えていました。

機関

機関構成はR級と同様に、ブラウン・カーチス式オール・ギヤード・タービンが基本です。パルマーズ社艦と一部の艦ではパーソンズ式が採用されました。ヤーロウ型は直結タービンを搭載しました。ボイラーはヤーロウ式重油専焼水管ボイラーを基本とし、ホワイト社艦ではホワイト・フォスター式が搭載されました。

計画速力と実際の性能

計画速力は36ノットでしたが、アドミラルティ型では排水量超過のため達成できない艦もありました。一方で、ソーニクロフト型とヤーロウ型は計画速力を達成し、「タイリアン」では39.401ノットを発揮しました。

装備

艦砲

S級駆逐艦は、40口径10.2cm砲（QF 4インチ砲Mk.IV）を3門搭載しました。これは当時のイギリス駆逐艦の標準装備でしたが、アドミラルティ改R級の長砲身・大発射速度のMk.Vに比べると性能はやや劣りました。

対空兵器

対空兵器としては、39口径40mm高角機銃（QF 2ポンド・ポンポン砲）を搭載しました。

水雷兵装

水雷兵装として、53.3cm連装魚雷発射管を2基搭載しました。また、戦訓に基づき冷走魚雷用の45cm魚雷発射管も搭載されました。ただし、アドミラルティ型では排水量増大による速力低下を補うため、後期建造艦では45cm魚雷発射管を省略した艦もありました。

同型艦

（同型艦リストは省略）

まとめ

S級駆逐艦は、第一次世界大戦期のイギリス海軍駆逐艦の重要な一角を担いました。アドミラルティ型を基本としつつ、ソーニクロフト型やヤーロウ型といった特型が存在し、それぞれの設計思想や性能の違いは興味深いものです。また、S級駆逐艦は、当時の駆逐艦の技術進歩を示すとともに、大戦中の実戦経験に基づいた設計変更も反映されています。その凌波性の高さや、速力など、その性能は当時の水準を大きく上回るものでした。

参考文献

（参考文献リストは省略）

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