S-VHS-C

S-VHS-C（スーパーVHSコンパクト）とは

S-VHS-Cは、VHS-C規格をベースに高画質化を図ったビデオ規格です。1980年代後半に登場し、主にビデオカメラ（カムコーダ）で使用されました。従来のVHS-CカセットをS-VHSの技術で高画質化したもので、より鮮明な映像を記録・再生することを目的としていました。

概要

S-VHS-Cは、通常のフルサイズのVHSカセットと同様に、SP（標準）モードとEP（3倍）モードでの撮影が可能です。Hi8規格よりも先に市場に登場し、その画質の高さは当時評価されていました。

発表と発売

1987年1月にS-VHS規格が発表されましたが、VHS-CのS-VHS化に関する情報はほとんどありませんでした。同年4月に各社からS-VHSデッキが発売された際も、S-VHS-Cに関する公式発表はありませんでした。しかし、夏になると日本ビクター（現JVCケンウッド）とシャープから相次いで発表会開催の連絡があり、S-VHS-Cの発表競争が勃発。結果としてシャープが一番手、ビクターが二番手となりました。当時、8ミリビデオのハイバンド化も発表されておらず、各社はシェア獲得のため激しい競争を繰り広げました。

長所と短所

S-VHS規格は、テレビ録画での性能が十分に発揮されず、ビデオソフトのタイトル数も少なかったため、従来VHSからの移行は進みませんでした。しかし、S-VHS-Cはカムコーダでその性能を十分に発揮できた上、廉価なモデル（モノラルマイク、ノーマル音声記録方式）が登場したため、VHS-Cからの移行は比較的スムーズに進みました。一方で、8ミリビデオに比べて小型化が難しく、標準モードで最大20分、3倍モードで60分しか録画できないという制約がありました。40分テープが開発されたのはかなり後期であり、市場でのシェア争いはほぼ決着していました。

シェアの逆転

ソニーが8ミリビデオでパスポートサイズのハンディカムを発売すると爆発的にヒットし、市場シェアが逆転しました。その後、両陣営は新機能を搭載したカムコーダを投入しましたが、差は広がる一方でした。S-VHS-C陣営で先陣を切ったシャープが8ミリビデオ陣営に乗り換えたことが、この争いに決着をつけることになりました。シャープが大画面液晶ビューカムを8ミリビデオで発売し、その後も日立、東芝、三洋電機などが8ミリビデオ陣営に鞍替えしました。日本ビクターとパナソニックは最後までS-VHS-Cの製品開発を続けましたが、市場の動向を覆すことはできませんでした。

S-VHSデッキでの再生

S-VHS-Cの普及競争の中で、据え置きデッキで圧倒的なシェアを持つVHSで、アダプター無しでS-VHS-Cカセットを再生できるデッキが数機種発売されました。これに対し、8ミリビデオ陣営はVHSと8ミリビデオが一体化したダブルデッキで対抗しました。

アナログメディアの終焉

その後、カメラ一体型VTRの規格は、DV、DVD、HDD、メモリーカードなどのデジタルビデオ規格の普及により急速に衰退しました。S-VHS-Cもその例外ではなく、ほぼ使用されなくなりました。フルサイズのS-VHSに対して、デジタル記録が可能なD-[[VHS]]が発表されましたが、据え置き型デッキが数機種発売されただけで、S-VHS-Cのようなコンパクト化規格は登場しませんでした。主要メーカーである日本ビクターやパナソニックも、DV方式のカムコーダーを発売し、VHS-Cの系統はS-VHS-Cで途絶えることになりました。一方の8ミリビデオも、デジタル規格としてDVと信号の互換性があるDigital8を発売しましたが、2000年代後半からのハイビジョン化の進展により、過去の規格となりました。

現状

現在、S-VHS-Cを含むすべてのカメラやカセットの販売は終了しています。しかし、録画済みのテープは、カセットアダプターを使用することでS-VHSデッキやS-VHSの簡易再生機能付きVHSデッキで再生可能です。カセットアダプターは、JVCケンウッドとパナソニックから発売されており、店頭に在庫がない場合でも、メーカーにはまだ在庫が残っている場合があり、取り寄せることができます。2011年時点で、JVCケンウッドからは「C-P8」、パナソニックからは「VW-TCA7」という型番で販売されていました。


S-VHS-Cは、一時的に高画質カムコーダ市場を席巻しましたが、デジタル化の波に乗り切れず、その短い歴史を終えました。しかし、当時録画された映像は、今でもカセットアダプターと対応デッキがあれば、再生することが可能です。

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