SCENE III

『SCENE III』概要

ASKAのオリジナルアルバムとしては通算6作目にあたる『SCENE III』は、2005年11月23日にユニバーサルミュージックよりリリースされました。

ASKAが自身の多様な音楽性を表現するシリーズとして位置づけられている『SCENE』としては、1991年の『SCENE II』から数えておよそ14年ぶりとなる作品です。

これまでの『SCENE』シリーズは、主にASKAが他のアーティストに提供した楽曲をセルフカバーして収録することが特徴でしたが、本作ではその慣例を破り、収録されたすべての楽曲がオリジナルで構成されている点が、シリーズにおける大きな転換点となっています。

アルバムのテーマについて、ASKA自身は「古きよきアメリカ音楽」「映画音楽」「ジャジーなテイストの経過音」などを挙げており、同時にポップスとしての聴きやすさも重視して制作が進められたと語っています。

本作に収録されている楽曲のうち、先行してリリースされたシングル曲以外については、作詞家である松井五郎との共作により歌詞が書かれています。

現在、『SCENE III』は廃盤となっており、市場では入手が困難な作品となっています。

収録曲解説

本作に収録されている楽曲は、それぞれに制作背景やテーマが込められています。

birth
フジテレビフラワーセンターの2006年1月から3月までのCMソング第2弾として使用され、ASKA本人出演のミュージックビデオがCM映像として流されました。「子供は生まれてくるときのことを覚えている」という説がテーマの一つとなっており、ASKAが以前発表した詩集『オンリー・ロンリー』に収められた「生誕の憧憬」というテーマを、改めて歌詞として表現した楽曲でもあります。

good time (album ver.)
2000年7月12日にリリースされた同名シングルのアルバムバージョンです。ASKAは、今回のアレンジを手がけた澤近泰輔によって、原曲とは異なる新たな世界観が楽曲に広がったと感じていると述べています。

愛温計
フジテレビフラワーセンターの2005年11月から12月までのCMソング第1弾として起用され、本人出演のプロモーションビデオ映像が使用されました。この楽曲のテーマは「ものには温度があるように、人の気持ちや心にも温度がある。ならば愛の温度は…」という思考から着想を得ており、「愛の温度を計る」という発想から「愛温計」という言葉が作られました。また、この楽曲は、代表曲である「はじまりはいつも雨」のその後のストーリーを描いた作品とも位置づけられています。ミュージックビデオには女優の細川直美が出演しており、後に発売されたセレクションアルバム『SCENE of SCENE 〜selected 6 songs from SCENE I,II,III〜』の初回盤付属DVDにも収録されました。

walking around the Xmas
作詞はASKAと松井五郎の共作、作曲はASKA、編曲は鈴川真樹が担当しています。2005年3月にハワイで行われたファンクラブイベントの際に、ASKAがウクレレを弾きながら作り始めた楽曲です。ウクレレという楽器から連想されるイメージとは逆の、冬をテーマにしてみたら面白いのではないかというアイデアから、さらにイメージを広げてクリスマスへと発展させて制作されました。

心に花の咲く方へ (album ver.)
2003年12月17日にリリースされたシングルのアルバムバージョンです。シングルバージョンに対し、ストリングスを主体としたアレンジが施され、楽曲の雰囲気が新たに表現されています。この楽曲には、「人生の岐路に立たされた時や、どちらの道に進むべきか迷った時に、心の中に花が咲く、明るく前向きな方へと歩んでいこう」というテーマが込められています。

君の好きだった歌へのプロローグ
CHAGE and ASKAのアルバム『Code Name.1 Brother Sun』に1コーラスのみ収録されていた楽曲「君の好きだった歌」を基にしたインストゥルメンタル作品です。本作では、続く楽曲への導入となる序曲として位置づけられています。

背中で聞こえるユーモレスク
ASKAが「自分たちの世代が共感できるようなものに向かって音楽を作りたい」という自身の思いを反映させて制作した楽曲です。

loop ("birth" reconstructive mix)
アルバムの冒頭を飾る「birth」のリミックスバージョンとして収録されています。

* 抱き合いし恋人
過去の『SCENE』シリーズ作品に収録されていても違和感がないような楽曲を作りたい、というASKAの思いから制作された楽曲です。

初回限定盤と関連リリース

『SCENE III』の初回限定盤には、収録曲である「birth」と「心に花の咲く方へ」のミュージックビデオが収録された特典DVDが付属していました。これらのミュージックビデオには、それぞれのシングルバージョン音源が使用されています。

また、『SCENE III』の発売と同日には、2006年4月30日までの期間限定生産として、ASKAの『SCENE』および『SCENE II』をセットにしたボックスセット『SCENE I & II limited edition』も発売されました。

制作チーム

本作のオーディオマスタリング、および同時発売されたボックスセットの音源リマスタリングは、いずれもニューヨークにおいて、著名なエンジニアであるテッド・ジェンセンの手によって行われました。これにより、アルバム全体のサウンドクオリティが追求されています。

『SCENE III』は、約14年の時を経てリリースされたシリーズ作品でありながら、全曲オリジナルの構成や新たな音楽的テーマの探求を通じて、従来の『SCENE』像を刷新した意欲的なアルバムと言えるでしょう。残念ながら現在は廃盤となっていますが、ASKAの音楽性の幅広さを示す重要な作品の一つです。

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