SIG SAUER P250

SIG SAUER P250は、スイスとドイツに拠点を置くザウエル&ゾーンによって開発された自動拳銃です。公用での使用を想定して2001年から開発が進められ、2004年にドイツ・ニュルンベルクで開催された拳銃専門展示会IWAで初めてその姿を現しました。

SIG Proシリーズに引き続くポリマーフレームを採用した本銃は、フルサイズ、コンパクト、サブコンパクトの3種類のサイズが展開されています。使用できる弾薬も多様で、当初は9x19mmパラベラム弾のみでしたが、後に.40S&W弾、.357SIG弾、そして.45ACP弾といった主要な口径が追加されました。

特徴

P250の最も特徴的な点は、これまでのSIG SAUER製自動拳銃、例えばP220やP226といったアイコン的モデルに標準装備されていたデコッキングレバーが廃止されたことです。これにより、P250はハンマーがコックされた状態から安全にデコックするためのレバーを持たず、常にダブルアクションでのみ射撃が可能な完全ダブルアクションオンリー（DAO）システムを採用しています。

また、もう一つの注目すべき点は、部品点数の少なさと高度なモジュラーシステムです。主要な部品はわずか40点程度に抑えられており、これにより生産コストの削減やメンテナンスの容易さが図られています。モジュラーシステムにおいては、「ファイヤー・コントロール・ユニット」と呼ばれるインナーシャーシが核となります。このユニットにはハンマー、トリガー、スライドレールなどの主要な機構が集約されており、バレル、スライド、そしてグリップと一体化したポリマーフレーム、マガジンといった他のパーツを簡単に交換・組み替えることが可能です。このシステムにより、同じインナーシャーシを使って、異なるサイズや口径の銃に容易にコンバートできます。この構造は軽量化にも寄与しており、例えばマガジンを除いたコンパクトサイズで比較すると、アルミニウムフレームのP229より約155g、同じポリマーフレームのSP2022よりも約70g軽量です。

操作性においても、左利き射手への配慮が見られます。スライドストップは両側に配置されており、マガジンキャッチも左右どちらにも付け替えが可能です。

アメリカ合衆国では、法規制上、通常シリアルナンバーが刻印されるフレーム（ロワーレシーバー）が銃本体と見なされ、購入時などに課税（特定の税）対象となります。P250は、この規制に対応し、組み替え時に複数回の課税を受けないための工夫が凝らされています。具体的には、銃本体と見なされるシリアルナンバーを、インナーシャーシである「ファイヤー・コントロール・ユニット」側面に直接刻印し、ポリマーフレームには外部からシリアルナンバーを確認できる穴を設けています。公式にはインナーシャーシを「フレーム」、ポリマーフレームを「グリップ・モジュール」と呼称することで、インナーシャーシのみが法的な銃本体であるという扱いを明確にしています。

バリエーション

P250は、そのモジュラーシステムにより多様なサイズと口径に対応します（.45ACP弾用のフレームは他の口径と異なります）。

フルサイズ
9x19mm弾: 17+1発
.45ACP弾: 10+1発
.357SIG弾・.40S&W弾: 14+1発
コンパクト
9x19mm弾: 15+1発
.45ACP弾: 9+1発
.380ACP弾: 15+1発
.357SIG弾・.40S&W弾: 13+1発
サブコンパクト
9x19mm弾: 12+1発
.45ACP弾: 6+1発
.357SIG弾・.40S&W弾: 10+1発

採用国

香港 - 香港警察
オランダ - オランダ警察
アメリカ合衆国 - 連邦航空保安局

登場作品

P250は多くの映画やゲームにも登場しています。

映画・テレビドラマ
『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義』（香港警察が使用）
『ナイト&デイ』（主人公ロイ・ミラーがシルバースライドのコンパクトを使用）
『泣く男』（冒頭で主人公ゴンがサプレッサー付きコンパクトを使用）
『ホワイトハウス・ダウン』（テロリストやシークレットサービスが使用）
ゲーム
『ウォッチドッグス』（「P-9mm」としてコンパクトが登場）
『カウンターストライク グローバル・オフェンシブ』（.40S&W弾仕様のコンパクトが登場）

これらの特徴と多様性により、SIG SAUER P250は公用拳銃として、また民間市場においても一定の評価を得ているモデルと言えます。

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