SINGLES (氷室京介のアルバム)

氷室京介 『SINGLES』：時代を彩った軌跡

1995年7月19日にリリースされた氷室京介のベストアルバム『SINGLES』は、彼の音楽キャリアにおける重要なマイルストーンです。1988年のソロデビューから1994年までの東芝EMI在籍時代のシングル曲を中心に、カップリング曲を加えた全16曲を収録。氷室自身の音楽的な変遷と成長を凝縮した作品と言えるでしょう。

ベストアルバム誕生の背景

4thアルバム『Memories Of Blue』での成功を背景に、氷室はBOØWYという過去の栄光を超克したと認識。しかし、それは新たな苦悩の始まりでもありました。「対自分」という新たなテーマを抱え、5thアルバム『SHAKE THE FAKE』の制作中に自律神経失調症を発症するなど、精神的に追い詰められていきます。完成度の基準をさらに高く設定した結果、アルバムをお蔵入りにすることも検討されましたが、ホッピー神山の参加によってリリースに漕ぎ着けました。

楽曲解説：シングル曲を中心に

アルバムには、「ANGEL」や「DEAR ALGERNON」など、氷室の代表曲が多数収録されています。

ANGEL：ソロデビューシングルであり、BOØWY時代からの流れを汲むロックンロールナンバー。氷室自身も「みんなの喜ぶものをサービスしよう」という意識で作ったと語っています。

DEAR ALGERNON：2ndシングル。氷室は「この曲しかない」という確信を持って詞を書いたものの、CDに入れるには勇気が要ったと述懐しています。

SUMMER GAME：3rdシングル。コンセプトアルバムを意識し、ポップソングを入り口にしてテーマに深く入り込む構成を試みた意欲作です。

MISTY：4thシングル。好きなコード進行からあえて外れたメロディラインを追求したナンバー。

JEALOUSY：5thシングル。テレビドラマ主題歌として起用され、幅広い層にアピールしました。

CRIME OF LOVE：6thシングル。重いビートとマイナー調のメロディが特徴的な、新たな試みを感じさせる楽曲。

URBAN DANCE：7thシングル。リミックスアルバム『masterpiece ＃12』収録バージョン。異国情緒あふれるサウンドが魅力。

GOOD LUCK MY LOVE：8thシングル。アルバムバージョンを収録。氷室はビートを外した時にどれだけメロディが残るかという課題に取り組んだと語っています。

KISS ME：9thシングル。アルバムバージョンを収録。ソロになって初めて自分自身と向き合い、痛みや優しさを表現した楽曲。

VIRGIN BEAT：10thシングル。アルバムバージョンを収録。お気に入りのコード進行と、浮き沈みの激しい展開が特徴的なナンバー。

リリースと評価

アルバムはオリコンチャートで1位を獲得し、136.7万枚を売り上げる大ヒットを記録。日本レコード協会からトリプル・プラチナ認定を受けました。音楽情報サイト『CDジャーナル』は「ヒット曲を満載したベスト・アルバム」と評価し、アルバム未収録のカップリング曲やヒストリーブックが付属している点を評価しました。

その後

本作のリリース後、氷室は個人レーベル「BeatNix」を設立し、ポリドール・レコードへ移籍。新たな音楽活動をスタートさせました。『SINGLES』は、氷室京介の音楽キャリアにおけるターニングポイントとなった作品と言えるでしょう。

収録された数々の楽曲は、時代を超えて愛され続けています。氷室京介というアーティストの魅力が凝縮された、まさにベスト・オブ・ベストな一枚です。

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