SPECULOOS-3

SPECULOOS-3：極低温の赤色矮星と惑星系

SPECULOOS-3（LSPM J2049+3336としても知られる）は、はくちょう座の方向に位置する、地球から約54.6光年離れた赤色矮星です。この星はスペクトル分類がM6.5であり、太陽に比べて非常に小さく、低温で暗いという特徴を持っています。質量は太陽の約0.1倍、光度はわずか0.08%であり、その有効温度は2,800 K（2,530℃）と、太陽の半分以下です。SPECULOOS-3は、既知の恒星の中でも特に小さい部類に入り、超低温矮星に分類されます。

特徴

SPECULOOS-3の推定年齢は約66億年とされていますが、誤差が大きいことも指摘されています。ベイズ推定による質量は太陽の0.101倍、有効温度は2,800K、光度は太陽の8.35×10^-6倍と算出されています。これらの数値から、SPECULOOS-3は超低温矮星に分類され、主系列星の終端に位置する恒星であることが分かります。超低温矮星は、その温度、光度ともに低く、大きさは木星程度であるのが特徴です。SPECULOOS-3の自転速度は4.8km/s、自転周期は1.34日と予測されています。

シュテファン＝ボルツマンの法則を用いて計算された半径は、太陽半径の0.134倍（約93,000km）です。この大きさは、トランジットを起こす惑星を持つ恒星としては、TRAPPIST-1に次いで2番目に小さい値です。SPECULOOS-3の見かけの等級は17.8と推定されており、肉眼での観測は不可能ですが、赤色矮星としては、典型的な値です。赤色矮星は、銀河系内の恒星の約70%を占める最も一般的なタイプであり、その寿命は太陽の10倍、1000億年以上と非常に長いことが予想されています。

SPECULOOS-3は、2005年にLSPM-Northカタログの一部として初めて発見されました。このカタログは、北半球の恒星のうち、固有運動が年間0.15秒角以上で、見かけの等級が21等級より小さい恒星をリストアップするものでした。その後、2014年に初めて三角視差が測定され、当初は距離が約48光年とされました。しかし、Gaia Data Release 3（2023年）では、視差が59.7ミリ秒角、距離が54.6光年と修正されました。これにより、SPECULOOS-3は地球に比較的近い恒星であることが確認されています。

惑星系

2024年には、トランジット法を用いてSPECULOOS-3の周囲を公転する太陽系外惑星が発見されました。この惑星はSPECULOOS-3bと命名され、地球とほぼ同じ大きさの地球型惑星です。半径は地球の0.98倍とされています。SPECULOOS-3bは、SPECULOOS-3の周りを約17時間という非常に短い周期で公転しており、その近さから非常に強い放射を受けています。そのため、自転と公転が同期している可能性が高く、常に片側が昼、もう片側が夜になっていると考えられます。

SPECULOOS-3bの発見は、SPECULOOSプロジェクトによって行われ、その成果は2024年5月15日に学術雑誌Nature Astronomyで発表されました。質量はまだ測定されていませんが、NASAの太陽系外惑星ページでは地球の0.894倍と推定されています。平衡温度は約553K（280℃）と推定されており、昼側は固体の岩石で形成されている可能性が高いとされています。この惑星は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測に最適なターゲットであると考えられており、将来的に大気の存在や鉱物組成などの詳細な情報が得られることが期待されています。

まとめ

SPECULOOS-3は、その小ささと低温さから、他の恒星とは異なる独自の特性を持つ天体です。また、その周囲を公転するSPECULOOS-3bの発見は、超低温矮星の惑星系研究において重要な一歩となりました。今後の観測によって、SPECULOOS-3とSPECULOOS-3bに関する理解がさらに深まることが期待されます。

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