Savage

Savageシリーズ：S3社のグラフィックチップ

Savage（サベージ）は、アメリカのグラフィックチップ設計製造メーカーS3社が開発・販売していたグラフィックチップの製品およびそのシリーズ名です。1998年に最初の製品であるSavage3Dが発表され、その後、デスクトップPC、モバイル機器、チップセット統合グラフィックスなど、様々な用途に展開されました。

概要

Savageシリーズは、主にローエンドからミドルレンジ市場をターゲットとしていました。モバイル向けやチップセットに統合されるグラフィックスコアとしても広く採用されました。機能面では、動画再生支援機能であるMCを搭載し、低負荷でのDVDビデオ再生を可能にしていました。また、S3社独自のAPIであるMeTaLや、テクスチャ圧縮技術S3TC（DirectXではDXTnとして知られる）をサポートしていた点も特徴です。

歴史

1996年にViRGEシリーズを投入したS3社は、3Dアクセラレータ市場で先行し、一時的に大きなシェアを獲得しました。しかし、その後は競合他社との競争激化によりシェアを大きく縮小させました。S3社は、2Dと3Dの中間的な性能を指す「2.5D」や「スリーディー」をもじった「フリーディー」と揶揄されるほど低性能というイメージが定着していたViRGEの刷新を目指し、1998年に3D機能を大幅に強化したViRGE GX3をベースに、新ブランド「Savage 3D」を発表しました。

Savage 3Dは市場で大きな成功を収めることはできませんでしたが、後継のSavage4やモバイル向けのMobile Savageは高い評価を受け、シェアを拡大しました。しかし、ミドルハイ市場を狙って投入したSavage2000が期待通りの性能を発揮できず失敗に終わりました。さらに、ビデオカードの平均性能向上とローエンド向けのグラフィック機能統合チップセットの普及により、S3社のシェアは縮小、財務状況も急速に悪化しました。その結果、S3社はグラフィックス部門を台湾のVIA Technologiesに売却し、ほどなくして倒産しました。

VIAに売却されたS3のグラフィック部門は、S3 Graphicsとしてチップセット統合型のProSavageの開発を続けました。2002年のComputex Taipeiでは、新製品であるSavageXPの展示も行われましたが、製品化には至りませんでした。その後、S3 Graphicsは製品ブランドをChromeシリーズに改め、ProSavageの後継製品もUniChromeと命名し、Savageシリーズは完全に終了しました。

デスクトップ向け

Savage3D

1998年に発表されたSavageシリーズの最初の製品です。ViRGE GX3をベースとしており、Trio 3Dとピン互換性があります。128bitのグラフィックコアと64bitのメモリバスを持ち、最大8MBのSDRAMをサポートします。インターフェースはAGP 2xまたはPCIに対応しています。S3TCと呼ばれるテクスチャ圧縮技術を搭載しており、小容量メモリや狭帯域のメモリバスでも高解像度のテクスチャを扱えるようにしました。この技術は後にMicrosoftのDirectXにもDXTn (DXTC) として採用されました。その他、S3社独自のAPIであるMeTaLに対応し、MCによる動画再生支援機能を搭載しています。

主な仕様：
0.25μmプロセス
64bitメモリバス
動画再生支援(MC)
AGP 1.0
S3TC(DXTn)
フィルレート：1億2500万ピクセル/秒

Savage4

Savage3Dをベースに開発され、1999年に発表されたグラフィックチップです。0.25μmプロセスで製造され、基本的な仕様はSavage 3Dを継承していますが、メモリ容量は最大32MBまでサポートし、AGP 4xに対応しました。また、LCDコントローラを統合し、SXGA解像度までの液晶画面出力に対応しましたが、外部トランスミッタが必要でした。XtremeからLTまで、数多くのマイナーチェンジモデルが存在し、モデルによってコアやメモリのクロック、サポートするメモリ容量やインターフェースなどが異なりました。Savage4はメインストリーム向けのグラフィックチップとして多くのビデオカードベンダーに採用され、以降のS3社製品の基本モデルとなりました。

主な仕様：
0.25μmプロセス
64bitメモリバス
動画再生支援(MC)
AGP 2.0
LCDコントローラ
S3TC(DXTn)

Savage2000

Savage4の上位製品として、1999年に発表されたグラフィックチップです。0.18μmプロセスで製造され、約1100万トランジスタで構成されています。Savage 3Dの設計を引き継いだSavage 4と比較して、大幅に設計が刷新され、128bitのグラフィックコアと128bitのメモリバスを持ち、メモリは最大64MBのSDRAMをサポートします。インターフェースはAGP 4xまたはPCIに対応。主な機能はSavage4を継承していますが、GeForce 256のハードウェアT&Lに相当するS3TLと称するジオメトリエンジンを搭載し、動画再生支援も強化されています。しかし、Savage2000は当時の旧製品にすら及ばない性能で、相性問題も多発し、市場での評価は非常に低く、上位モデルとして計画されていたSavage2000+もキャンセルとなりました。この後、S3社は市場から撤退し、Savage2000はS3社にとって最後のグラフィックチップとなりました。

主な仕様：
0.18μmプロセス
128bitメモリバス
動画再生支援(MC)
AGP 2.0
LCDコントローラ
S3TL (ハードウェアT&L)
S3TC(DXTn)

Savage2000のS3TL

GeForce256に搭載されたハードウェアT&Lは、従来ソフトウェアで処理されていた座標変換処理および光源処理をGPUが行うことで、システムの3D性能を大幅に向上させました。しかし、Savage2000のS3TLは、当時のローエンドCPUシステムでソフトウェア処理させたほうがS3TLを使用するよりも高速な場合が多く、また描画の不具合も多く見られました。これはエンジン部にバグがあったためとも言われていますが、詳細は不明です。なお、Savage2000はDirectX 7に対応したハードウェアT&Lエンジンを搭載するGPUとしては、GeForce256に続く2番目の製品となります。

SavageXP

S3 Graphicsが発売を予定していたGPUで、開発コードネームはAlpha Chromeでした。サンプル製品の展示まで行われましたが、正式発表前にキャンセルとなりました。

モバイル向け

Mobile Savage

1999年に発表されたモバイル向けグラフィックチップのシリーズです。メモリをパッケージ内に統合したSavage IXと、外付けメモリを利用するSavage MXが存在します。Savage4をベースとしていますが、0.18μmプロセスルールで製造されています。VRAMとして64bitメモリバスで接続される4、8、16MBのメモリをサポートし、Savage IXではこれをパッケージ内に統合していることが特徴です。インターフェースはAGP 2xまたはPCIに対応。DuoViewと呼ばれるマルチディスプレイに対応しています。アイドル時0.75w、フル3D処理時でも1.5w以下という省電力なモバイル製品でありながらDirect3Dに対応していたため、各社のノートパソコンに採用されました。また、2002年にはメモリ8MBモデルのSavage IXを搭載したAGP 2xおよびPCIのビデオカードが登場しました。

主な仕様：
0.18μmプロセス
64bitメモリバス
動画再生支援(MC)
AGP 1.0
LCDコントローラ統合
メモリインパッケージ(IXのみ)
S3TC(DXTn)
DuoView
フィルレート 1億ピクセル/秒
500万トライアングル/秒

SuperSavage

Mobile Savageの後継製品として2001年に発表されたモバイル向けグラフィックチップのシリーズです。Mobile Savage同様に、メモリをパッケージ内に統合したSuperSavage IXと、外付けメモリを利用するSuperSavage MXが存在します。コアとメモリのクロックが引き上げられ、AGP 4xに対応し、画面出力もUXGAまで対応しています。メモリインターフェースが大幅に強化され、128bit接続のSDRAMまたは64bit接続のDDR SDRAMに対応しています。

主な仕様：
0.18μmプロセス
128bit SDRAM または 64bit DDR-SDRAM メモリバス
AGP 2.0
動画再生支援(MC)
LCDコントローラ統合
メモリインパッケージ(IXのみ)
S3TC(DXTn)
DuoView
1250万トライアングル/秒

統合グラフィックス向け

ProSavage

Savage2000の2Dエンジン、Savage4の3Dエンジンをベースとして開発された統合チップセット向けのグラフィックコアです。VIA TechnologiesのKM133、KL133などに搭載されました。PM133に搭載されているTwisterも基本的には同じものであり、デスクトップPC市場以外でもVIA C3プロセッサと組み合わせて組み込み用途で広く使用されました。

ProSavage-DDR

ProSavageをベースにDDR SDRAMに対応し、性能向上を図ったグラフィックコアです。内部的にはAGP 8x相当で接続されており、初期にはSavage8とも称されていました。KM333、PN266などに搭載されました。

関連項目

S3 ViRGE
S3 Trio
S3 Chrome
S3 Graphics
* VIA Technologies

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