TB (航空機)

TB - 超大型爆撃機の計画

TBは、大日本帝国軍向けに川西航空機が設計した超大型爆撃機で、その名称は「渡洋爆撃機」（Toyou Bakugekiki）の略称です。川西では内部的に「KX9」という名称が用いられていました。

開発の経緯

1943年夏、川西航空機には内閣企画院から米本土爆撃用の大型爆撃機の発注が行われました。この発注は陸海軍とは無関係に進められ、軍からの具体的な試作名称もない中、海軍が主導的な役割を果たしました。要求性能は、当時他の航空機メーカーが計画していた富嶽と同等で、航続距離は22,222 km以上であるとされていました。計画は、米本土への攻撃後、ドイツに一時着陸し、燃料を補給して帰還する構想を描いていました。

川西は東京帝国大学航空研究所（航研）と共に設計を進め、航研が中心となって主翼や胴体の設計を行い、全体の設計を担当しました。風洞実験が行われた結果は良好で、1944年1月には全体計画がまとまりました。しかし、海軍関係者による説明会では関心が薄く、軍から出された質問は速度に関する内容のみでした。

このTBは、陸海軍が富嶽や他の機体と比較しつつ検討が進められていましたが、最終的に富嶽が選ばれ、TBの開発は終了することに決まりました。実は、TBの構想以前にも陸軍から川西へ遠距離爆撃機の研究が指示されており、当時の技術革新を背景に比較的高い性能が求められていました。

機体仕様

TBは、すでに存在している技術を駆使した設計が基本方針とされ、既存のエンジンを改良して使用することが計画されていました。最初の富嶽案では新規開発のエンジンが6基搭載される予定でしたが、TBは4発機として設計されました。爆弾搭載量は富嶽より少なかったものの、堅牢性に優れた機体でありました。

エンジンには三菱重工業製の「ハ43」や中島飛行機製の「ハ45-20」が計画され、さまざまな改造が施される予定でした。主翼には、空気抵抗を減少させるための層流翼型「LB翼」が採用され、高い揚抗比を実現しました。胴体設計では、空気抵抗を極力削減するために細身の形状が追求され、与圧気密室は設けられず、液体酸素を機内に放出する方式が検討されました。

また、離陸距離を短縮するために、自動フラップや固体ロケットによる補助、電動台車、傾斜滑走路の使用などが模索されました。こういった工夫の積み重ねがTBの設計に生かされました。

諸元（計画値）

• - 全長：28.0 m
• - 全幅：52.5 mまたは52.4 m
• - 主翼面積：220.0 m²
• - 自重：26,500 kg
• - 正規全備重量：45,000 kg
• - 過荷全備重量：74,000 kg
• - エンジン出力：1,900 hp × 4
• - 最大速度：600 km/h（高度12,000 m時）
• - 戦闘高度：12,000 m
• - 航続距離：23,700 kmまたは22,224 km
• - 武装：13mm機関砲 × 4、爆弾2,000 kg - 6,000 kg（爆弾倉内）、最大15,000 kg（主翼下面）
• - 乗員：6名

登場作品

TBはフィクション作品にも登場しており、特に以下の2つの小説が挙げられます。

• - 『侵攻作戦パシフィック・ストーム』：この作品では、TBは富嶽を回避して五式長距離陸上攻撃機「剣山」として制式採用され、8発機として完成したとされています。
• - 『東の太陽 西の鷲』：本作では、日本本土から米本土へ原爆を投下できる長距離爆撃機として試作された設定になっており、物語の重要な役割を果たします。

TBは、その計画が実際には実現しなかったものの、日本の航空史における重要な試みの一つとして記憶されています。

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