THUNDER LIVE

CASIOPEA 3rd Album 『THUNDER LIVE』

日本のトップフュージョンバンド、カシオペアの通算3作目にあたるアルバムが、この『THUNDER LIVE』です。1980年、彼らのデビューから2年目を迎える時期にリリースされた本作は、バンドにとって初めてのライブ録音作品であり、ドラマーが神保彰へと交代した直後のタイミングで発表されました。

アルバムの内容と評価

本作には、過去にリリースされた2枚のオリジナルアルバムから選ばれた楽曲を中心に収録。加えて、「I'M SORRY」と「HAVE A NICE DREAM」という2曲の書き下ろし新曲が、このライブ盤で初披露されています。それまでのスタジオ作品で示されていた卓越したテクニックと緻密なアンサンブルはそのままに、ライブならではの躍動感と熱気が加わっています。特に、新メンバーとして加わった神保彰の洗練されたドラムワークは、バンドサウンドに新たな息吹をもたらしました。これらの要素が一体となり、各方面からこれまでの作品以上に高い評価を獲得することとなります。

伝説的なエピソード

本作の高い評価を示すエピソードとして、ジャズ専門誌の試聴企画で、世界的ドラマーであるハーヴィー・メイソンがこのアルバムを聴き、その演奏に深く感銘を受けた話は有名です。この出来事がきっかけとなり、彼は後にカシオペアのアルバム『EYES OF THE MIND』のプロデュースを手掛けることとなり、彼らの活動に大きな影響を与えました。

ライブ映像の存在

このアルバムの収録のために行われたライブは、同時に映像記録も行われていました。リリース当時はプロモーション用のビデオとして存在していたものの、長い間一般には販売されることはありませんでした。しかし、10年以上が経過した1992年、カシオペアのライブ映像集『ACT ONE』に、「HAVE A NICE DREAM」と「BLACK JOKE」（ただし、アルバムとは異なる日のテイク）が収録され、初めて作品として陽の目を見ることとなります。さらに1999年には、DVDソフト『CASIOPEA AGAIN』に、アルバムには未収録だった楽曲「TAKE ME」が「HAVE A NICE DREAM」と共に収録され、より多くの映像が公開されることになりました。

ジャケットデザインの変遷

『THUNDER LIVE』には、発売時期によって2種類の異なるジャケットデザインが存在します。1980年の初版では、燃え盛る炎を背景に、メンバーの似顔絵が鮮烈な色彩で描かれた、非常にインパクトの強いアートワークが採用されていました。しかし、再プレス版からは一転して、海面に雷が降り注ぐイラストをあしらった、落ち着いたトーンのデザインに変更されました。この初版ジャケットについては、神保彰の母親がそれを見て「息子がデビューしていきなりこれか……」と困惑したという逸話が残っています。

参加ミュージシャン

本作に参加したメンバーは以下の通りです。

野呂一生 - エレクトリックギター
向谷実 - キーボード
櫻井哲夫 - ベース
神保彰 - ドラム

この4人による鉄壁の布陣は、その後のカシオペアの黄金期を支えることとなります。

制作クレジット

本作は1980年2月8日と9日に東京のABC Hallでライブ録音されました。主な制作スタッフは以下の通りです。

エグゼクティブ・プロデューサー: 村井邦彦、川添象郎
プロデューサー: 宮住俊介、沢田信二
エンジニア: 吉沢典夫、寺田康彦、Katsuhiko Sato
アートディレクション: Yukimasa Okumura
イラストレーター: Makoto Saito
デザイン: Tomohiro Itami
* カバー・コーディネート: Toshinao Tsukui

2016年には、鈴木浩二によるハイレゾ音源のリマスタリング版もリリースされています。

『THUNDER LIVE』は、神保彰という新たな才能を迎え、ライブバンドとしての実力を証明した作品として、カシオペアの歴史において重要な位置を占めています。特に、ハーヴィー・メイソンとの関わりを生んだエピソードは、彼らが世界レベルで評価されていたことの証と言えるでしょう。

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