TOI-1136

TOI-1136系

TOI-1136は、地球から見てりゅう座の方向に約276光年離れた位置に存在する恒星です。この恒星が天文学者の注目を集めているのは、その周囲に複数の太陽系外惑星が発見されているためです。2022年に行われた観測により、少なくとも6個の惑星がこの恒星の周りを公転していることが明らかになりました。

恒星 TOI-1136の特徴

主星であるTOI-1136は、スペクトル分類がG型に属する恒星であり、これは私たちの太陽と同じタイプであることを意味します。質量や表面温度といった基本的な性質も太陽に比較的近いと考えられています。しかし、太陽との決定的な違いはその年齢です。TOI-1136の年齢はわずか推定約7億年とされており、約47億年の太陽に比べて非常に若い恒星です。この若い年齢や内部組成の特徴から、その半径は太陽よりもわずかに小さいと推定されています。現在のところ、TOI-1136に伴星（連星系をなす別の恒星）は発見されていません。

惑星系の発見経緯

TOI-1136に惑星系が存在することが明らかになったのは、NASAのトランジット系外惑星探索衛星TESSによる観測がきっかけです。TESSは、惑星が主星の手前を通過（トランジット）する際に発生するわずかな減光を捉えることで惑星を探しています。最初の観測データから、4つの惑星が存在する可能性を示す信号が検出されました。これにより、この恒星にはTESS Object of Interest（TOI）のカタログ番号「TOI-1136」が与えられました。当初特定された4つの候補は、公転周期が短い順に約6.3日、約12.5日、約18.8日、約26.3日でした。その後の追加観測や詳細な解析により、さらに約4.2日と約39.5日の公転周期を持つ2つの惑星候補が発見され、合計6つの惑星候補となりました。これらの候補は、Box-Least-Square法などの手法を用いてその存在が確認され、2022年に正式に惑星として認められました。確定した惑星は、主星に近いものから順にTOI-1136 b, c, d, e, f, gと命名されています。

6つの惑星の特徴と軌道共鳴

確定した6つの惑星は、いずれも地球よりも大きなサイズを持っています。半径は地球の約2倍から5倍の範囲に分布しており、これはミニ・ネプチューンやスーパーアースといったサイズの惑星に相当します。これらの惑星は、主星であるTOI-1136から比較的近い軌道を周回しており、その公転周期は最も内側の惑星bが約4.2日、最も外側の惑星gが約39.5日と、いずれも短期間です。

この惑星系の最も注目すべき特徴は、内側の惑星bから外側の惑星gまでのすべての惑星が、互いに連続した軌道共鳴状態にあることです。これは、隣り合う惑星の公転周期が簡単な整数比になっている状態です。TOI-1136系で観測されている軌道共鳴の比率は以下の通りです。

惑星bと惑星cの間：約3:2
惑星cと惑星dの間：約2:1
惑星dと惑星eの間：約3:2
惑星eと惑星fの間：約7:5
* 惑星fと惑星gの間：約3:2

このように複数の惑星が連鎖的に軌道共鳴を形成しているシステムは比較的珍しく、惑星系の形成や進化の過程を理解する上で重要な手がかりとなります。

7番目の惑星候補の可能性

2023年12月には、TOI-1136系における7番目の惑星の存在を示唆する観測結果が報告されました。これは、1回のトランジット現象として捉えられたものであり、その特徴からミニ・ネプチューンサイズの惑星である可能性が指摘されています。しかし、1回のトランジットだけでは軌道要素などを正確に決定することは難しいため、現時点では「惑星候補」という位置づけです。もしこの7番目の惑星の存在が正式に確認されれば、TOI-1136系は、知られている中で最も多くの惑星を持つシステムの1つとなるでしょう。

TOI-1136系は、若い恒星の周りに複数の惑星が密接して存在し、複雑な軌道共鳴を示している点で、私たちの太陽系とは異なる興味深い構造を持つ惑星系です。今後のさらなる観測によって、これらの惑星の詳しい性質や、どのようにしてこのような特異な軌道配置が形成されたのかが明らかになることが期待されています。

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