TOI-1266

TOI-1266

TOI-1266は、地球からりゅう座の方向に約118光年離れた宇宙空間に存在する恒星です。この星はスペクトル分類がM2に属する赤色矮星であり、その性質は私たちの太陽とは大きく異なります。質量や半径は太陽の半分以下と小ぶりで、年齢はおよそ80億年と推定されています。この恒星はTIC 467179528や2MASS J13115955+6550017といった別名でも知られています。

惑星系

TOI-1266の周囲には、これまでに3つの太陽系外惑星が確認されています。これらの惑星は、恒星の光を遮る「トランジット」と呼ばれる現象や、恒星のわずかな揺れを捉えるドップラー分光法といった観測手法によって発見されました。

最初の2つの惑星、TOI-1266 bとTOI-1266 cは、NASAのトランジット系外惑星探索衛星（TESS）による観測で発見されました。これらの発見を示す論文は2020年6月19日にプレプリントサーバーであるarXivに投稿され、その後、ホバート・アンド・ウィリアムス・スミス・カレッジやアパッチ・ポイント天文台に設置された地上望遠鏡を用いた追跡観測によって、これらの惑星が実際に恒星の前を通過する様子（トランジット）が確認されました。

さらに、2023年10月20日には、ドップラー分光法を用いた観測データから、3番目の惑星候補であるTOI-1266 dの存在が示唆されました。その後の詳細な観測を経て、2024年9月24日に正式にその存在が確認されました。TOI-1266 dは、地球から見て恒星の前を通過しない軌道を公転しているため、トランジット法ではなくドップラー分光法によってその存在が明らかになった惑星です。

個々の惑星

TOI-1266 b: この惑星はミニ・ネプチューンに分類されるタイプの系外惑星です。恒星TOI-1266の非常に近い軌道を、約10.9日の周期で公転しています。TOI-1266 bが公転する領域は、恒星からの熱によって大気が暴走温室効果を起こし、金星のような環境になる可能性のある「Venus Zone」に位置していると考えられています。

TOI-1266 c: こちらの惑星はスーパー・アースに分類されるタイプの系外惑星です。TOI-1266 bよりもやや外側の軌道を、約18.8日の周期で公転しています。TOI-1266 cの質量は地球の最大で6.4倍程度と推定されています。この質量の上限値から、cが単なる岩石質の惑星ではなく、水などの揮発性物質を多く含む可能性も指摘されています。TOI-1266 bと同様に、この惑星も「Venus Zone」またはその境界付近に位置していると分析されています。

* TOI-1266 d: 最後に発見されたこの惑星は、ドップラー分光法で確認された天体です。公転周期は約32.3日と、内側の2つの惑星に比べて長い周期で恒星を回っています。先述のように、この惑星は地球からは恒星の前面を通過する（トランジットを起こす）軌道ではないため、その存在は主に恒星の視線速度の変化を捉えることで明らかになりました。

TOI-1266星系は、比較的近い距離にある赤色矮星の周囲に、多様な性質を持つ惑星が存在する興味深い例として、今後の詳細な観測研究の対象となるでしょう。

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