TOI-1452 b
TOI-1452 bは、地球からおよそ100光年彼方、りゅう座の領域に位置する赤色矮星TOI-1452の周囲を公転する太陽系外惑星です。この惑星は、その密度や主星からの距離といった特性から、表面が大量の水に覆われた海洋惑星である可能性が極めて高いとして注目されています。
発見と観測
この惑星の発見は、2018年に打ち上げられたNASAのトランジット系外惑星探索衛星TESSによる観測データに基づいています。TESSは、惑星が恒星の手前を通過する際に生じるわずかな明るさの変化（トランジット）を捉えることで、系外惑星候補を見つけ出します。主星であるTOI-1452（当初はTIC 420112589などの名称で呼ばれていました）は、2019年から2022年にかけての長期間にわたり、TESSの観測視野内に位置していました。特に2019年の観測で得られた主星の光度曲線を詳細に解析した結果、その周囲に惑星が存在する可能性が示唆されました。これを受けて、2019年10月にはTESSオブジェクト・オブ・インタレスト（TOI）としてTOI-1452（主星）およびTOI-1452.01（惑星候補）という名称が付与され、惑星候補として公表されました。
その後のTESSによる追加観測期間において、この惑星候補によるトランジットが30回以上にわたって確認されました。カナダのモントリオール大学を中心とする国際研究チームは、これらのTESSデータを詳細に解析するとともに、カナダにあるモンメガンティク天文台やハワイ島にあるすばる望遠鏡などの地上望遠鏡を用いたフォローアップ観測を実施し、TOI-1452 bの存在を検証しました。日本の研究チームによる独立した観測でも、その存在が確認されています。さらに、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡に搭載された近赤外線分光偏光計SPIRouを用いた50時間以上に及ぶ精密な観測データからは、主星の視線速度の変化を分析することで、この惑星の正確な質量が導き出されました。これらの観測結果をまとめたTOI-1452 bの発見報告論文は、2022年8月に天文学専門誌アストロノミカルジャーナルに掲載されました。
惑星の性質
TESSによるトランジット観測から推定されたTOI-1452 bの大きさは、地球の約1.67倍です。また、SPIRouによる視線速度観測から決定された質量は、地球の約4.82倍とされています。これらの値に基づいて計算される惑星の密度は約5.6 g/cm³となり、地球の平均密度（約5.515 g/cm³）と非常に近い値を示します。この比較的高い密度から、TOI-1452 bは岩石質の成分を持つ地球型惑星であり、地球よりも大型のスーパーアースに分類されます。
TOI-1452 bは主星TOI-1452からわずか0.061天文単位（約913万キロメートル）という非常に近い軌道を公転しており、その周期は約11地球日と極めて短いものです。しかし、主星であるTOI-1452は太陽に比べて小さく温度も低い赤色矮星であるため、これほど主星に近い軌道にもかかわらず、惑星が受け取る放射エネルギー量は地球の約1.8倍（不確かさ±0.2倍）に留まっています。これは、太陽から金星が受け取るエネルギー量（地球の約1.91倍）とほぼ同等です。このことから、TOI-1452 bは表面に液体の水が存在しうる、いわゆるハビタブルゾーン内に位置している可能性があります。大気の有無やアルベド（反射能）を考慮しない場合の平衡温度は、アルベドを0と仮定すると約326 K（53 ℃）、地球に近い0.3と仮定すると約298 K（25 ℃）と推定されています。
海洋惑星である可能性
TOI-1452 bのサイズと質量から計算される密度は地球に似ていますが、金属や岩石だけで構成されている一般的な地球型惑星としては、その密度はやや小さいと解釈されます。このことは、惑星の内部に岩石よりも密度の低い物質が大量に含まれている可能性を示唆しています。研究チームは、観測で得られたサイズと質量に基づき、TOI-1452 bの考えられる内部構造や組成について複数のシナリオを検討しました。その中でも最も有力な一つとして挙げられているのが、惑星全体が液体の水で厚く覆われた海洋惑星であるという可能性です。
仮にTOI-1452 bが海洋惑星であった場合、主星の組成分析から得られる情報を考慮すると、惑星全体の質量に対して水が占める割合は22+21−13 %にも達する可能性があると推定されています。これは、地球において水が占める割合（全体の1%未満）をはるかに凌駕しており、太陽系におけるガニメデやタイタンのように、氷の地殻の下に深い内部海を持つとされる氷衛星に近い割合です。現在の観測データだけではTOI-1452 bが本当に海洋惑星であると確定するには至っていませんが、これまでに発見された系外惑星の中では最も有力な海洋惑星候補の一つであると、研究チームを率いたシャルル・カデュー氏（Charles Cadieux）は述べています。
今後のTOI-1452 bに関する観測には大きな期待が寄せられています。特に、2021年に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）は、TOI-1452 bが観測に適した方向に位置しており、ほぼ年間を通じて観測が可能です。また、地球から比較的近い距離にあるため、JWSTの持つ高い観測能力を用いて、この惑星の大気の組成を分析したり、海洋惑星説などの仮説を検証するための精密なデータを得たりすることが比較的容易であると期待されています。
発見と観測
この惑星の発見は、2018年に打ち上げられたNASAのトランジット系外惑星探索衛星TESSによる観測データに基づいています。TESSは、惑星が恒星の手前を通過する際に生じるわずかな明るさの変化（トランジット）を捉えることで、系外惑星候補を見つけ出します。主星であるTOI-1452（当初はTIC 420112589などの名称で呼ばれていました）は、2019年から2022年にかけての長期間にわたり、TESSの観測視野内に位置していました。特に2019年の観測で得られた主星の光度曲線を詳細に解析した結果、その周囲に惑星が存在する可能性が示唆されました。これを受けて、2019年10月にはTESSオブジェクト・オブ・インタレスト（TOI）としてTOI-1452（主星）およびTOI-1452.01（惑星候補）という名称が付与され、惑星候補として公表されました。
その後のTESSによる追加観測期間において、この惑星候補によるトランジットが30回以上にわたって確認されました。カナダのモントリオール大学を中心とする国際研究チームは、これらのTESSデータを詳細に解析するとともに、カナダにあるモンメガンティク天文台やハワイ島にあるすばる望遠鏡などの地上望遠鏡を用いたフォローアップ観測を実施し、TOI-1452 bの存在を検証しました。日本の研究チームによる独立した観測でも、その存在が確認されています。さらに、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡に搭載された近赤外線分光偏光計SPIRouを用いた50時間以上に及ぶ精密な観測データからは、主星の視線速度の変化を分析することで、この惑星の正確な質量が導き出されました。これらの観測結果をまとめたTOI-1452 bの発見報告論文は、2022年8月に天文学専門誌アストロノミカルジャーナルに掲載されました。
惑星の性質
TESSによるトランジット観測から推定されたTOI-1452 bの大きさは、地球の約1.67倍です。また、SPIRouによる視線速度観測から決定された質量は、地球の約4.82倍とされています。これらの値に基づいて計算される惑星の密度は約5.6 g/cm³となり、地球の平均密度（約5.515 g/cm³）と非常に近い値を示します。この比較的高い密度から、TOI-1452 bは岩石質の成分を持つ地球型惑星であり、地球よりも大型のスーパーアースに分類されます。
TOI-1452 bは主星TOI-1452からわずか0.061天文単位（約913万キロメートル）という非常に近い軌道を公転しており、その周期は約11地球日と極めて短いものです。しかし、主星であるTOI-1452は太陽に比べて小さく温度も低い赤色矮星であるため、これほど主星に近い軌道にもかかわらず、惑星が受け取る放射エネルギー量は地球の約1.8倍（不確かさ±0.2倍）に留まっています。これは、太陽から金星が受け取るエネルギー量（地球の約1.91倍）とほぼ同等です。このことから、TOI-1452 bは表面に液体の水が存在しうる、いわゆるハビタブルゾーン内に位置している可能性があります。大気の有無やアルベド（反射能）を考慮しない場合の平衡温度は、アルベドを0と仮定すると約326 K（53 ℃）、地球に近い0.3と仮定すると約298 K（25 ℃）と推定されています。
海洋惑星である可能性
TOI-1452 bのサイズと質量から計算される密度は地球に似ていますが、金属や岩石だけで構成されている一般的な地球型惑星としては、その密度はやや小さいと解釈されます。このことは、惑星の内部に岩石よりも密度の低い物質が大量に含まれている可能性を示唆しています。研究チームは、観測で得られたサイズと質量に基づき、TOI-1452 bの考えられる内部構造や組成について複数のシナリオを検討しました。その中でも最も有力な一つとして挙げられているのが、惑星全体が液体の水で厚く覆われた海洋惑星であるという可能性です。
仮にTOI-1452 bが海洋惑星であった場合、主星の組成分析から得られる情報を考慮すると、惑星全体の質量に対して水が占める割合は22+21−13 %にも達する可能性があると推定されています。これは、地球において水が占める割合（全体の1%未満）をはるかに凌駕しており、太陽系におけるガニメデやタイタンのように、氷の地殻の下に深い内部海を持つとされる氷衛星に近い割合です。現在の観測データだけではTOI-1452 bが本当に海洋惑星であると確定するには至っていませんが、これまでに発見された系外惑星の中では最も有力な海洋惑星候補の一つであると、研究チームを率いたシャルル・カデュー氏（Charles Cadieux）は述べています。
今後のTOI-1452 bに関する観測には大きな期待が寄せられています。特に、2021年に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）は、TOI-1452 bが観測に適した方向に位置しており、ほぼ年間を通じて観測が可能です。また、地球から比較的近い距離にあるため、JWSTの持つ高い観測能力を用いて、この惑星の大気の組成を分析したり、海洋惑星説などの仮説を検証するための精密なデータを得たりすることが比較的容易であると期待されています。
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