TOI-4010

TOI-4010

TOI-4010は、太陽系からおよそ177.5パーセク（約578光年）離れた位置に存在する恒星です。スペクトル分類ではK型に属し、太陽よりもわずかに小さく冷たい星であることが分かっています。その半径は太陽のおよそ0.88倍、質量はおよそ0.80倍、そして表面温度は約4888ケルビンと推定されています。この恒星は、TESS Input Catalog（TIC）においてはTIC 352682207という名称で識別されており、その他にも2MASS J01205143+6604202などの複数のカタログ名を持っています。

2023年、このTOI-4010の周囲を公転する4つの太陽系外惑星が発見されたことが発表され、その惑星系は天文学者の注目を集めています。

惑星系の発見と特徴

TOI-4010を巡る惑星たちの存在は、まずNASAの太陽系外惑星探索衛星TESSによる観測からその手がかりが得られました。TESSは、恒星の光が惑星の手前を通過する際に一時的に暗くなる現象（トランジット）を捉えることで、惑星候補を検出します。初期のTESS観測で、公転周期が約5.4日のTOI-4010.01と約14.7日のTOI-4010.02が惑星候補として特定され、2021年6月23日にTESS object of interest（TOI）として登録されました。さらに、約1.3日という短い公転周期を持つ別の候補、TOI-4010.03も検出され、こちらは2021年7月6日に追加されました。

これらの惑星候補の存在を確実にするため、様々な地上望遠鏡を用いた追跡観測が行われました。ラス・クンブレス天文台グローバル望遠鏡ネットワーク（LCOGT）などによる精密なトランジット観測が実施されたほか、恒星の揺らぎを捉えるドップラー分光法による観測も行われました。ヨーロッパ南天天文台のHARPS-N高精度視線速度系外惑星探査装置を用いたドップラー観測からは、既知の候補とは異なる、約762日周期の信号が検出され、第4の惑星が存在する可能性が示唆されました。

これらの徹底的なフォローアップ観測の結果、4つの惑星候補すべてが実際に惑星であることが確認されました。トランジット法で検出された3つの惑星は、内側から順に公転周期の短いものからTOI-4010 b（旧TOI-4010.03）、TOI-4010 c（旧TOI-4010.01）、TOI-4010 d（旧TOI-4010.02）と命名されました。ドップラー分光法で存在が示された長周期の惑星は、TOI-4010 eと指定されました。これらの発見およびその確認に関する研究結果は、2023年6月8日にプレプリントサーバーarXivで公開されました。

発見された4つの惑星は、それぞれ異なる特徴を持っています。最も恒星に近いTOI-4010 bは、海王星よりも小さいサブ・ネプチューンクラスの惑星です。その外側を公転するTOI-4010 cとTOI-4010 dは、木星よりも質量が小さいサブ・サターンクラスのガス惑星に分類されます。最も外側を巡るTOI-4010 eは、他の3つの惑星から大きく離れた軌道を周回しており、木星よりも質量が大きいスーパー・ジュピターである可能性が高いと考えられています。ただし、TOI-4010 eはドップラー分光法による間接的な検出のみであるため、その正確な半径や軌道傾斜角、そして真の質量についてはまだ不明であり、トランジットを起こすかどうかは確認されていません。

TOI-4010系は、特にその惑星の配置において珍しい特徴を持っています。公転周期が20日以下の比較的短い範囲に、サブ・サターンサイズの惑星が2つ（TOI-4010 cとd）見つかった例はこれまで少なく、TOI-4010系は知られている中で6番目の事例となります。さらに特筆すべきは、公転周期が15日以下の内側領域に、地球の半径の3倍を超えるサイズの惑星が3つ（TOI-4010 b, c, d）存在している点です。このような配置を持つ惑星系は、現在のところTOI-4010系が唯一知られている例であり、惑星系の形成や進化を理解する上で貴重なデータを提供すると期待されています。

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