TOI-4599

TOI-4599は、地球から約9.9976パーセク離れた位置にある恒星で、これは光年換算でおよそ32.6光年に相当します。この恒星の周囲を公転する2つの太陽系外惑星の存在が、2022年の観測によって明らかになりました。TOI-4599は、自身の周囲を回る惑星が恒星面を通過する「トランジット」現象を起こすことが観測されている恒星系の中で、グリーゼ892、LTT 1445 A、そしてけんびき鏡座AU星に続き、太陽系から4番目に近い恒星系として位置づけられています。

この惑星系の存在が最初に示唆されたのは、2021年11月1日のことです。アメリカ航空宇宙局（NASA）のトランジット系外惑星探索衛星TESSによるセクター43の観測データにおいて、トランジット法を用いた分析から、この恒星の周囲を公転する2つの太陽系外惑星候補が検出されました。これらの候補天体は、TESSの観測対象天体を示す「TESS object of interest」として「TOI-4599」という名称が恒星に与えられ、惑星候補にはそれぞれ「TOI-4599.01」および「TOI-4599.02」という暫定名称が付けられました。当時の観測では、それぞれの候補天体が恒星の周囲を一周する公転周期が、.01は約2.77日、.02は約5.70日と推定されました。これらの惑星候補の性質をより詳しく調べるため、その後、地上の観測設備であるHIRESやCARMENESを用いたドップラー分光法による観測データなども活用したフォローアップ観測が実施されました。

これらの継続的な観測に基づき、TOI-4599の周囲を公転する惑星候補は、2022年に入って正式に惑星として確認されました。その確認に関する研究論文は、プレプリントサーバーであるarXiv上で2022年4月21日に公開されています。確認されたこれらの惑星には、それぞれ「TOI-4599 b」と「TOI-4599 c」という確定名称が与えられました。これらの惑星は、いずれも地球型惑星に分類される可能性が高いと考えられています。

個々の惑星に注目すると、TOI-4599 bは地球と近い密度を持っていると推定されています。その内部構造においては、鉄の核が惑星全体の質量の約32.5パーセントを占めていると分析されています。一方、TOI-4599 cについては、もし揮発性物質がほとんど存在しないと仮定した場合、その内部組成は鉄の核を含まず、完全にケイ酸塩のみで構成されているというモデルと整合することが示されています。この仮定に基づけば、TOI-4599 cの鉄核の質量比率は0パーセントとなります。同じ惑星系内に存在する惑星であるにもかかわらず、このように鉄核の質量比率が大きく異なる（bは約32.5%、cは0%）という事実は極めて珍しい特徴です。これまでに知られている他の惑星系の中で、惑星間の鉄核比率の差が最も大きかった例は、TRAPPIST-1系におけるTRAPPIST-1cとTRAPIST-1gの間で見られた約15パーセントの差でした。TOI-4599系で見られるこのような大きな質量比率の違いは、惑星bと惑星cが形成される際に含まれた揮発性物質の含有量に、顕著な差があったことが原因である可能性が高いと考えられています。

TOI-4599系においては、追加の観測によって他の惑星の存在についても調査が行われました。TESSの観測データからは、公転周期が20日よりも短く、かつ地球サイズ以上の大きさを持つトランジットを起こす惑星は存在しないことが明らかになっています。また、ドップラー分光法を用いた観測データによる分析では、公転周期が10日以内の範囲で、地球質量の1倍から3倍程度の質量を持つ惑星が存在する可能性が排除されました。さらに、それ以上の質量を持つ惑星についても、公転周期が100日の範囲内には存在しないことが観測的に除外されています。これらの観測結果は、TOI-4599系において、現在知られている2つの惑星（bとc）以外の、特定の範囲内の惑星が存在しないことを示唆しています。

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