Teide 1

Teide 1 は、おうし座の方向に位置する若い星団、プレアデス星団に属する天体です。この天体は、惑星よりも重く、恒星よりも軽い、いわゆる褐色矮星に分類されます。褐色矮星は、中心部で軽水素の核融合を起こすには質量が足りず、恒星のように自ら光り輝き続けることができません。

発見と初期の観測

Teide 1 は、1994年1月にカナリア天体物理研究所 (IAC) の研究チームによって発見されました。彼らはテイデ天文台の80cm望遠鏡を用いて取得された画像データの中からTeide 1を見つけ出しました。この発見に続き、より詳しい情報を得るため、同年12月にはロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にある4.2mのウィリアム・ハーシェル望遠鏡が用いられ、天体のスペクトルが取得されました。Teide 1 はプレアデス星団の一員であるため、その距離や化学組成、そして年齢を比較的正確に推定することが可能でした。当時の最先端の恒星および亜恒星天体の進化モデルを適用して質量を計算した結果、その質量は太陽質量のわずか約0.052倍、木星質量の55 ± 15倍と推定されました。この推定値は、恒星として安定した核融合を維持するために必要な最小質量を下回っていました。このことから、Teide 1 は恒星ではなく、褐色矮星である可能性が極めて高いと考えられました。

物理的特徴

Teide 1 は、いくつかの顕著な物理的特徴を持っています。視等級は17.76と非常に暗く、一般的な望遠鏡では観測することが困難であり、大型の天体望遠鏡を用いる必要があります。天体が10パーセク（約32.6光年）の距離にあった場合の明るさを示す絶対等級は12.38です。現在位置であるプレアデス星団までは約120パーセクの距離があるため、地球から観測される明るさは、もし10パーセクの距離にあれば見える明るさの約140分の1に過ぎません。
質量は前述の通り、木星の55 ± 15倍であり、これは巨大ガス惑星と低質量の恒星の中間に位置する「亜恒星天体」の典型的な質量です。半径は木星とほぼ同じサイズで、太陽半径の約10分の1程度と見積もられています。表面温度は約2,600 ± 150 ケルビンと推定されており、これは太陽の表面温度の約半分に相当します。そのため、光度は太陽のわずか0.1%しかありません。太陽が4時間で放射するエネルギーをTeide 1が放射するには、約6ヵ月もの非常に長い時間を要します。また、年齢は推定で約1億2000万歳と、太陽の46億歳と比較して非常に若い天体です。

褐色矮星であることの確証

Teide 1 の中心部の温度は、重水素の核融合反応を起こすには十分な温度に達していますが、軽水素を安定的に核融合させるほど高温ではありません。褐色矮星は、その質量によって内部で進行する核融合反応の種類が異なります。特に、木星質量の約65倍よりも軽い褐色矮星は、その生涯のどの段階においてもリチウム原子を熱核融合によって消費することはありません。この事実は、低光度で表面温度が低い天体が本当に恒星ではないか（つまり褐色矮星か）を判断するための重要な基準の一つ、「リチウムテスト」の原理となっています。
1995年11月、ハワイにあるケックI望遠鏡を用いて取得された高品質なスペクトルデータは、Teide 1 がプレアデス星団を形成した分子雲が持っていた初期のリチウムを依然として豊富に保っていることを明確に示しました。これは、Teide 1 の核でリチウムの熱核融合が起きていないことの決定的な証拠となります。これらの観測結果は、Teide 1 が紛れもない褐色矮星であることを裏付けただけでなく、分光観測によるリチウムテストの有効性を実証する形となりました。当時、Teide 1 は直接観測によってその存在が同定された太陽系外天体の中で、最も質量が小さい天体としても注目されました。若い褐色矮星の研究において、Teide 1 はその後の多くの観測や理論研究の基準となる、重要な役割を果たしています。

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