UボートI型

UボートI型：黎明期の航洋型潜水艦

UボートI型は、第二次世界大戦勃発前にドイツ海軍が建造した潜水艦です。ヴェルサイユ条約による潜水艦保有禁止という制約を回避しつつ、再軍備を目指したドイツ海軍の初期の試みとして位置づけられます。

開発の背景

第一次世界大戦後、ドイツはヴェルサイユ条約によって潜水艦の保有を禁止されました。しかし、ドイツ海軍は1922年に海軍技術会社（IvS）を設立し、海外向けの潜水艦設計を通じて技術の維持・発展を図ります。このIvSでの経験が、後のUボート開発に繋がっていきました。

1932年、ドイツ海軍は再軍備計画を打ち出し、その一環として16隻の潜水艦建造を決定します。そのうち8隻が800トン型の航洋型潜水艦であり、これがI型として開発されました。設計のベースとなったのは、IvSがスペイン向けに設計したE1型潜水艦です。当初はMVBIという秘匿名称で呼ばれていました。

特徴と運用

当初32隻の建造が計画されていましたが、ドイツ海軍が航洋型潜水艦を500トン型と1,000トン型に集約する方針に転換したため、I型の建造は2隻に留まりました。U-25とU-26が建造され、第二次世界大戦に投入されました。

I型は数少ない航洋型潜水艦として実戦に参加しましたが、運用側の評価は高くありませんでした。水中での舵の反応が鈍く、タンク配置の問題からトリム調整が難しいなどの欠点がありました。これらの問題が、その後のUボート開発に影響を与えたと考えられます。

性能諸元

全長：72.39m
全幅：6.21m
吃水：4.30m
排水量：水上862トン、水中983トン
最大速度：水上18.6ノット、水中8.3ノット
兵装：53cm魚雷発射管×6（艦首4、艦尾2、搭載魚雷14本）、105mm単装砲×1、20mm対空機銃×1
乗員：43名（士官4名を含む）

同型艦

U-25：1936年4月6日就役。1940年8月3日、自艦が敷設した機雷に接触し沈没。
* U-26：1936年5月11日就役。1940年7月1日、イギリス海軍のショート サンダーランド飛行艇とフラワー級コルベット「グラジオラス」の攻撃を受け撃沈。

まとめ

UボートI型は、ドイツ海軍が再軍備を目指した初期段階で建造された潜水艦であり、その設計には多くの試行錯誤が見られました。2隻のみの建造に終わったものの、その経験は後のUボート開発に貴重な教訓をもたらしました。短命に終わったUボートI型は、Uボートの歴史における過渡期の存在として記憶されるべきでしょう。

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