U1206 (潜水艦)

U-1206：トイレの誤用が引き金となった悲劇のUボート

U-1206は、第二次世界大戦中にドイツ海軍が運用したVIIC型潜水艦です。しかし、その艦歴は、1945年4月14日に発生した、艦内トイレの操作ミスによる自沈という、特異な結末を迎えます。

艦歴

1943年6月12日、U-1206はダンツィヒのシーヒャウ造船所で起工されました。同年12月30日に進水し、1944年3月16日にギュンター・フリッチェ中尉の指揮下で就役しました。

就役後、U-1206は第8Uボート戦隊で訓練を行い、1945年2月1日に第11Uボート戦隊へ移籍。1944年7月には艦長がカール＝アドルフ・シュリットに交代し、シュノーケル搭載工事を経て哨戒任務に投入されました。

1945年3月28日、U-1206はキール軍港を出港し、北海で訓練哨戒を実施。3月30日に帰投後、4月2日にはノルウェーのホルテン海軍基地から一日だけの哨戒に出撃しました。そして4月6日、クリスチャンサンを出港し、初の本格的な哨戒任務を開始しました。

沈没

ヨーロッパ戦終結の24日前、1945年4月14日、U-1206はスコットランドのピーターヘッド沖8海里、水深61メートルの地点を潜航中に悲劇に見舞われます。新型トイレの操作を誤った結果、艦内に大量の浸水が発生したのです。

ドイツ海軍の潜水艦のトイレは、汚物を直接水圧で艦外に排出する方式を採用していました。U-1206に搭載された新型トイレは、従来のトイレよりも深い深度での使用が可能でしたが、操作には熟練が必要でした。

艦内で何が起こったかについては、複数の説があります。シュリット艦長の公式報告書によれば、ディーゼル機関の修理を手伝うため機関室にいたところ、前方区画でトイレを修理していた技術者が失敗し、漏水が発生したと報告を受けたとのことです。

別の説では、シュリット艦長自身が新型トイレを使用した際、複雑なバルブ操作を誤り、汚水が噴出したとされています。また、操作法をきちんと教わっていなかったため、技術者を呼んだものの、技術者が誤ったバルブを操作してしまったという話も存在します。

浸水はバッテリーを冠水させ、有毒な塩素ガスが発生したため、U-1206は浮上を余儀なくされます。浮上したところをイギリス空軍の哨戒機に発見され爆撃を受けたため、シュリット艦長は自沈を決断しました。

攻撃により1名が死亡、3名が退艦後に溺死。シュリット艦長を含む46名は、救命ボートでスコットランドの海岸に漂着したり、イギリス海軍のスループに救助され、捕虜となりました。シュリット艦長はU-1206の沈没位置を北緯57度24分 西経01度37分と記録しましたが、艦体は1970年代まで発見されませんでした。

発見とその後

1970年代半ば、BPがクルーデン・ベイへのフォーティーズ油田石油パイプライン敷設のための調査中にU-1206を発見。その位置は北緯57度21分 西経01度39分、水深約70メートルでした。

スコットランドの古代遺跡と歴史的建造物に関する王立委員会の調査では、U-1206の浸水は、既存の沈没船の残骸との接触によって発生した可能性が示唆されています。

この事件は、多くの文献で誤ってU-120の出来事として記述されています。

デア・シュピーゲルに掲載された2021年7月の記事では、元乗員の息子の話として、トイレからの漏水は虚偽であり、U-1206の士官たちが連合軍への投降を決定し、捕虜収容所で脱走兵として扱われないように、事故をでっち上げたという説が唱えられています。

U-1206の就役期間中に戦果はなく、捕虜となったシュリット艦長は戦争を生き延び、2009年4月7日に90歳で亡くなりました。

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