UBASIC

UBASICは、日本の数学者である木田祐司氏（立教大学理学部教授）によって開発された、パーソナルコンピュータ向けのBASIC言語インタプリタです。特に、数値計算能力に重点を置いて設計されており、多くの科学技術計算や数論の研究分野で利用されました。このソフトウェアは、かつて広く普及したMS-DOS上で動作するフリーウェアとして提供されていました。

一般的なBASIC処理系が扱う基本的なデータ型（整数、浮動小数点数、文字列）に加え、UBASICは高度な数学的対象を直接扱うことが可能です。具体的には、正確な計算が可能な有理数、虚数を含む複素数、さらには1変数の多項式といったデータ型を標準でサポートしています。これにより、より複雑な数式や数学的構造をプログラム内で容易に表現し、計算できるようになっています。

UBASICの最も顕著な特徴の一つは、非常に大きな整数を扱える「多倍長演算」機能です。標準的な整数型では扱えないような、最大で2600桁程度にも及ぶ巨大な整数を用いた計算を実行できます。この能力は、高度な数論的研究において特に有効です。例えば、巨大な素数を発見したり、数の素因数分解を行ったり、多項式の因数分解を探求するといった複雑な計算問題にUBASICを応用することが可能です。

プログラミング言語としての機能も整備されています。特に、サブルーチン内でそのサブルーチン専用の変数を使用できるローカル変数機能は、プログラムの構造化を容易にします。このローカル変数機能と組み合わせて、関数自身が自分自身を呼び出す「再帰呼び出し」もサポートしています。ただし、再帰呼び出しには40重までという深さの制限があります。

主な動作環境はMS-DOSでした。WindowsのDOSプロンプトなど、MS-DOS互換環境でも動作します。かつてはPC-9801シリーズやCGA互換機など、様々なプラットフォーム向けの版が存在しましたが、現在ではほとんどが入手困難となっています。しかし、DOS/V|DOS_V版や英語DOS版については、2015年時点の情報によれば、開発者のサイトなどを通じて今でもダウンロードが可能であり、過去のソフトウェア資産として利用することができます。

UBASICに関する詳細な仕様や使用方法については、開発者自身による専門書「UBASIC86 多倍長計算用BASIC ユーザーズマニュアル」が存在します。このマニュアルは、多倍長計算に特化したUBASICの機能を深く理解するための貴重な資料となります。また、ウェブ上には開発者のサイトや、過去のソフトウェアをアーカイブしているサイトなどで、実行ファイルや関連情報を見つけることができる場合があります。

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