UP (ピーター・ガブリエルのアルバム)

ピーター・ガブリエルによるスタジオ・アルバム『UP』は、サウンドトラック作品を除くと通算7作目にあたり、2002年にリリースされました。特筆すべきは、純粋なスタジオレコーディングによる前作『Us』から実に10年もの期間を経て発表されたことです。本作は日本で世界に先駆けて発売されました。

制作背景

アルバムの制作は1995年から開始され、長期間にわたり進められました。この過程で約130曲もの候補が生み出されたといいますが、最終的にアルバムに収録されたのは厳選された10曲です。特に、収録曲「シグナル・トゥ・ノイズ」では、著名なパキスタンのカッワーリー歌手ヌスラト・ファテー・アリー・ハーンのボーカルがフィーチャーされています。しかし、ハーンは正式なレコーディングを行う前の1997年に逝去したため、この曲で聴かれる歌声は、1996年に行われた彼の歌唱からサンプリングされたものが使用されています。また、「シグナル・トゥ・ノイズ」のインストゥルメンタル・パートは、マーティン・スコセッシ監督の映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』のサウンドトラックにも採用されています。

各国での反響と評価

『UP』は各国で好成績を収めました。母国イギリスでは、全英アルバムチャートで最高11位を記録し、5週にわたってトップ100に留まりました。シングルカットされた「モア・ザン・ディス」は、全英シングルチャートで47位にランクインしています。

アメリカ合衆国ではBillboard 200チャートで最高9位を記録。9週間にわたりチャートインし続け、ガブリエルにとって3作目となる全米トップ10入りを果たしました。

イタリアでは特に大きな成功を収め、2002年9月26日付のアルバムチャートで首位を獲得しました。その後も6週連続でトップ20圏内に留まるロングヒットとなりました。イタリアのシングルチャートでは、「ザ・バリー・ウィリアムズ・ショウ」が10位、「モア・ザン・ディス」が39位、「グローイング・アップ」が35位と、複数の楽曲がチャートインしています。

収録曲「ザ・バリー・ウィリアムズ・ショウ」は、その音楽性が評価され、第45回グラミー賞において最優秀男性ロック・ボーカル・パフォーマンス賞にノミネートされました。

音楽評論家からの評価は分かれる面もありました。オールミュージックのStephen Thomas Erlewineは5点満点中3点を与え、「『Us』の穏やかでダークな路線を引き継いでいるが、ガブリエルは本作で闇、悲嘆、瞑想といったテーマをより深く掘り下げており、その妥協なき姿勢は評価に値する」と評しています。一方、『ガーディアン』紙のAlexis Petridisも5点満点中3点としつつ、「10年ぶりのアルバムとしては驚くべきではないが、過剰に作り込まれている」「10曲中9曲が6分を超える長さ」「アレンジは、ガブリエルがサウンドや参加ミュージシャンを積み重ね続けたかのように大げさだ」と、楽曲の尺の長さやアレンジの密度に言及し、やや批判的な見方も示しました。

収録曲と参加ミュージシャン

アルバムに収録された10曲は全てピーター・ガブリエル自身によって書かれています。

主な収録曲は以下の通りです（括弧内は収録時間）。

ダークネス (6:51)
グローイング・アップ (7:33)
スカイ・ブルー (6:37)
ノー・ウェイ・アウト (7:53)
アイ・グリーヴ (7:24)
ザ・バリー・ウィリアムズ・ショウ (7:16)
マイ・ヘッド・サウンズ・ライク・ザット (6:29)
モア・ザン・ディス (6:02)
シグナル・トゥ・ノイズ (7:36)
ザ・ドロップ (3:01)

日本盤CDにはボーナス・ディスクが付属し、「ザ・バリー・ウィリアムズ・ショウ (Unadulterated Radio Edit)」、「マイ・ヘッド・サウンズ・ライク・ザット（ロイクソップ Remix）」、「Cloudless (Radio Edit)」の3曲が追加収録されています。

本作の制作には、ピーター・ガブリエル（ボーカル、各種楽器、アレンジ）自身に加え、デヴィッド・ローズ（ギター、バッキング・ボーカル）、ダニエル・ラノワ（ギター、パーカッション）、トニー・レヴィン（ベース）、マヌ・カチェ（ドラムス）、スティーヴ・ガッド（ドラムス、パーカッション）など、多くの名だたるミュージシャンが参加しています。ヌスラト・ファテー・アリー・ハーンのボーカルもクレジットされています。

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