UNIX System V

System V：UNIX系OSの歴史を彩る重要な系統

System V（システムファイブ、SysV）は、AT&T社が開発したUNIXオペレーティングシステム (OS) の主要な系統の一つです。1983年の最初のリリース以降、数多くのバージョンが公開され、現代のUNIX系システムに大きな影響を与えました。本稿では、System Vの歴史と各リリースにおける重要な特徴を詳解します。

System Vの隆盛と衰退

System Vは、BSD系と並んでUNIXを二分する大きな勢力でした。特にSystem V Release 4（SVR4）は大きな成功を収め、多くの商用UNIXシステムの基礎となりました。SVR4は、システムの起動・停止を制御する`/etc/init.d`スクリプトなど、現在でも広く使われている機能の起源となっています。また、System V Interface Definition (SVID) は、System Vの動作を定義する重要な仕様書として、後続のUNIX系システム開発にも大きな影響を与えました。

AT&T社はSystem Vを動作させるハードウェアも販売していましたが、多くの顧客は、AT&T社の参照実装を基に、再販業者によって提供されたシステムを利用していました。IBMのAIX、サン・マイクロシステムズのSolaris、ヒューレット・パッカードのHP-UXなど、著名なUNIX系OSの多くは、System Vを基盤として開発されました。

1980年代にはBSD系と並んでUNIX市場を二分する存在でしたが、1990年代に入るとLinuxやQNXといった他のUNIX系OS、そして、それ以外のOSの台頭により、System Vの勢いは徐々に衰えていきました。UNIX戦争と呼ばれる競争の時代、BSDがデスクトップワークステーションなどで利用された一方、System Vは、大規模マルチユーザーシステムを求める企業にとって最適な選択肢でした。POSIX標準化の取り組みは、こうした異なるUNIX実装間の差異を縮小させる上で重要な役割を果たしました。

各バージョンの特徴

SVR1 (System V Release 1)

1983年にリリースされた最初のSystem Vです。AT&TのUnix Support Groupが、System IIIとベル研究所で使われていたUSG UNIX 5.0を基に開発されました。BSD 4.1からviエディタやcursesが導入され、バッファやinodeキャッシュの追加により性能が向上しました。DECのVAXやPDP-11で動作し、プロセス間通信機能としてメッセージ、セマフォ、共有メモリが導入されました。

SVR2 (System V Release 2)

1984年4月にリリース。シェル機能とSVIDが導入されました。ファイルロック、デマンドページング、コピーオンライトといった新たなカーネル機能も追加されました。「ポーティングベース」という概念が定式化され、DEC VAX 11/780が参照実装として選ばれました。AppleのA/UXや初期のHP-UXは、SVR2をベースとして開発されました。

SVR3 (System V Release 3)

1986年にリリースされたSVR3は、STREAMS、リモートファイル共有(RFS)、仮想ファイルシステム機構であるFile System Switch(FSS)、共有ライブラリ、Transport Layer Interface (TLI) ネットワークAPIなどをサポートしました。1988年のRelease 3.2ではXENIXとの互換性が追加されました。OpenServerなどは、この3.2をベースとしていました。IBMのAIXもSVR3から派生したOSです。

SVR4 (System V Release 4)

1988年10月18日に発表され、1989年以降に各社から商用UNIXとしてリリースされました。USLとサン・マイクロシステムズの共同開発で、Release 3、4.3BSD、XENIX、SunOSの技術を統合したものです。BSD、SunOS、XENIXからの技術を取り込み、TCP/IPサポート、NFS、ksh、POSIX準拠など、多くの新機能が追加されました。x86とSPARCが主なプラットフォームとなり、サン・マイクロシステムズはSPARC版をSolaris 2としてリリースしました。多くのハードウェアベンダーがSVR4を採用し、様々な派生版が開発されました。

SVR4以降

SVR4をベースとした様々な派生版、そして、その後のSystem V Release 5、開発がキャンセルされたRelease 6と、System Vは、その後も様々なバージョンが開発され、改良が重ねられていきました。しかし、他のUNIX系OSや非UNIX系OSの台頭により、System Vは徐々にその存在感を失っていきました。

System Vの遺産

System Vは、その長い歴史の中で、多くのUNIX系システムに大きな影響を与えました。System Vから派生したOSや、System Vの機能を取り入れたOSは、現在でも数多く存在し、私たちの生活を支えています。System Vは、UNIXの歴史において、重要な役割を果たしたOSと言えるでしょう。

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