V級駆逐艦 (2代)

V級駆逐艦

V級駆逐艦は、イギリス海軍が第二次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級です。1941年度の戦時予算に基づいて8隻が建造され、1943年から1944年にかけて順次就役しました。第二次世界大戦中に1隻が戦没し、2隻がカナダ海軍に譲渡された後、残りの艦は1950年代に15型フリゲートに改装され、水中高速潜水艦時代の対潜戦を担いました。

来歴

第二次世界大戦の勃発を受け、イギリス海軍は戦時緊急計画を発動し、駆逐艦の急造に着手しました。まず、1940-41年度計画で建造を予定していた中間的な駆逐艦（J級に準じた設計）の建造を前倒ししてO級・P級が建造されました。その後、新たな戦時要求を反映し、急造に適応した設計への変更が行われ、Q級・R級・S級・T級と、1940年度戦時予算の下で6次にわたる戦時急造艦隊の建造が進められました。

1941年2月、1941年度戦時予算において、さらに5次にわたる戦時急造艦隊の建造が盛り込まれることとなりました。その第二陣として、1941年9月1日に発注されたのが本級です。

設計

V級は、同年度予算で建造されたU級の準同型艦であり、J級以来の単煙突・船首楼型という船型を踏襲しています。また、Q級で導入された燃料搭載量の増大や復原性の改善、艦尾のトランサム・スターン、そしてS級で導入されたトライバル級と同様の艦首形状も採用されました。本級では、S級・T級で省かれていた北極圏行動用の防寒設備が復活しましたが、加熱管などの設備重量は24トンに達しました。しかし、レーダーや高角機銃の増備に伴い上部重量が増大したため、復原性の低下を避けるべく、1945年より防寒設備の撤去が行われました。

機関は、S級・T級と同様にQ級・R級の構成が踏襲され、アドミラルティ式3胴型水管ボイラー（蒸気圧力300 lbf/in2 (21 kgf/cm2)、温度332.2℃）、パーソンズ式オール・ギヤード・タービンによる2軸推進、出力40,000馬力です。

装備

艦砲としては、S級・T級と同様、45口径12cm砲（QF 4.7インチ砲Mk.IX）を最大仰角55度のMk.XXII砲架と組み合わせて4基搭載しました。射撃指揮装置も両級と同様で、対空用には285型レーダーを備えたMk.II(W)方位盤とFKC射撃盤、対水上用には基線長3.66メートルの測距儀を備えたDCT方位盤とAFCC射撃盤が用いられました。

近距離用の対空兵器としては、計画当初は39口径40mm4連装機銃（QF 2ポンド・ポンポン砲）を予定していましたが、1941年6月の決定に基づき、S級で装備化されたヘイズメイヤー社製のFCS連動式56口径40mm連装機銃（ボフォース）が搭載されることになりました。これと70口径20mm連装機銃（エリコン）4～6基が基本構成とされました。ただし、各艦ごとの差異が大きく、例えば「ヴォレイジ」は56口径40mm連装機銃の代わりに39口径40mm4連装機銃を搭載して竣工した後、56口径40mm単装機銃4基に換装し、この際に70口径20mm連装機銃は全て撤去されました。また、「ヴェルラム」では70口径20mm連装機銃の一部を、「ヴィーナス」「ヴィジラント」では全部を56口径40mm単装機銃に換装しました。「ヴィーナス」では実に56口径40mm単装機銃10基を搭載したといわれています。

同型艦

防寒設備の撤去は、北氷洋でのソ連向け船団護衛の終了と対日作戦参加に連動して行われました。各艦は1944年末からインド洋に進出し、「ヴェルラム」、「ヴィーナス」、「ヴィラーゴ」の3隻は第26駆逐隊に所属し、1945年5月16日のペナン沖海戦で日本海軍の重巡洋艦羽黒を撃沈しました。

脚注

[参考文献]

[関連項目]

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