15型フリゲート

15型フリゲート：第二次大戦型駆逐艦からの変貌

15型フリゲート（Type 15 frigate）は、第二次世界大戦中に建造されたイギリス海軍の駆逐艦を、戦後の新たな脅威、特に水中高速潜水艦に対抗するための対潜フリゲートとして改装した艦級です。この改装は、冷戦初期におけるイギリス海軍の戦力再編の重要な一環でした。

背景

大西洋の戦いで大きな損害を被ったイギリス海軍は、終戦までに潜水艦の脅威をほぼ克服しました。しかし、ドイツが開発した水中高速潜水艦UボートXXI型のような新型潜水艦の出現は、既存の護衛艦艇では対応困難でした。ブラックスワン級スループのような従来の護衛艦は、水中高速潜水艦に対して速度が不足しており、新たな対潜艦艇の必要性が高まりました。そこで計画されたのが、12型（ホイットビィ級）フリゲートでしたが、主機の開発遅延により、既存の駆逐艦を改装して対潜フリゲートとする計画が生まれました。

大戦中に大量建造された駆逐艦は、終戦時に245隻に達していました。これらの艦艇を退役させる一方で、残りの艦艇を護衛艦として改装するという方針が決定されました。その中でも、対潜フリゲートの1等艦としての改装が15型フリゲートです。

1947年、最初に「ロケット」と「リレントレス」の改装が計画され、1949年にはT級以前の艦を対象とした改装案が提示されました。

設計

15型フリゲートの改装は、上部構造物、船体、機関、装備など多岐にわたりました。艦内容積を確保するため、船首楼を大幅に延長し、上部構造物も艦体幅いっぱいに拡幅されました。船首楼甲板に打ち上げる波を考慮して、上部構造物の前面にはカーブが設けられ、荒天時でも25ノットの速力を維持できるよう船首部を強化しました。

主船体については、主横隔壁は変更されませんでしたが、他の横隔壁は全て換装されました。上部構造物にはアルミニウム合金が導入され、軽量化が図られました。艦橋は、クロスロード作戦の知見に基づき、放射性物質防護のため完全にエンクローズされました。操艦上の不都合を解消するため、一部の艦では艦橋構造を1層高くしました。密閉状態での戦闘継続のため、艦橋には周囲視察用のペリスコープやバブルウィンドウが設置されました。

「トラウブリッジ」「アルスター」「ゼスト」は、リアンダー級以降のフリゲートに採用される新しい設計の艦橋を備えていました。この艦橋は、良好な視界を提供するとともに、夜間の灯火の反射を防ぐものでした。平時には練習艦として使用されることもあり、その際は艦橋上の機銃が撤去され、露天艦橋が設置されました。

ボイラーと主機は換装されませんでしたが、オーバーホールされました。主発電機は維持されたものの、ディーゼル発電機が増設され、電子機器の増設に伴う電力需要の増加に対応しました。燃料搭載量は減少し、航続距離も短縮しました。

装備

センサー:

レーダーは、目標捕捉用の293Q型、高角測定用の277Q型、航法用の975型を搭載しました。293Q型は戦闘指揮所と連接され、目標情報は砲撃指揮に活用できました。後に993型レーダーに換装されました。
ソナーは、捜索用に174型、海底捜索用に162型が搭載されました。戦闘指揮所（AIO）も設置され、センサー情報を統合処理しました。

武器システム:

主兵装である対潜兵器として、新開発のリンボー対潜迫撃砲2基が艦尾甲板後部に配置されました。両舷にはMk.20「ビダー」対潜誘導魚雷のための魚雷発射管が搭載される予定でしたが、ビダーの開発が中止されたため、実際に搭載したのは「アルスター」のみでした。リンボーの開発遅延により、初期建造艦にはスキッドが搭載され、後にリンボーが装備化されました。
艦砲は、45口径10.2cm連装砲を船首楼甲板後端に搭載し、射撃指揮装置としてCRBFが装備されました。近距離対空兵器としては、56口径40mm連装機銃が艦橋上方などに搭載され、STDの指揮を受けました。

1956年、「グレンヴィル」の艦尾甲板にヘリコプター甲板が設置され、フェアリー ウルトラライト・ヘリコプターの運用試験が行われました。これにより、フリゲートとして初めてヘリコプターを搭載・運用した艦となりました。「アンドーンテッド」でも同様の試験が行われました。

運用

1949年から1957年にかけて、23隻が改装されました。1957年には「ラングラー」が南アフリカ海軍に売却され、「フレイスタート」と改名されました。

オーストラリア海軍:

オーストラリア海軍は、イギリス海軍から受領したQ級駆逐艦4隻に、15型フリゲートに準じた近代化改修を行いました。艦橋構造はイギリス海軍の「トラウブリッジ」「アルスター」「ゼスト」と同様の閉鎖型を採用し、対潜兵装はリンボーを搭載しました。

カナダ海軍:

カナダ海軍は、イギリス海軍から譲渡されたV級とCr級の駆逐艦に15型フリゲートに準じた改修を行いました。火砲はイギリス製とアメリカ製を混載し、対潜兵器やレーダーもアメリカ製を導入するなど、アメリカ海軍の影響が強く見られました。

登場作品

映画『駆逐艦ベッドフォード作戦』では、「トラウブリッジ」と「ウェイクフル」が撮影に使用されました。

まとめ

15型フリゲートは、戦後初期のイギリス海軍における対潜戦力の中核を担いました。第二次世界大戦中に建造された駆逐艦を改装することで、迅速かつ経済的に戦力を増強し、冷戦期の新たな脅威に対応しました。その設計と装備は、後のフリゲート開発に大きな影響を与えました。

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