ネットブック

ネットブックとネットトップ：小型軽量パソコンの進化と終焉

概要

ネットブックとは、インターネット閲覧やメール、チャットなどの基本的なオンラインサービス利用を主目的とした、安価で小型軽量なノートパソコンのカテゴリーです。2007年のASUS Eee PC発売を機に市場に登場し、2012年頃には新規販売が終了しました。本記事では、ネットブックと同様のカテゴリーに属するデスクトップパソコンであるネットトップについても解説します。

一般的な構成と価格

ネットブックは、Intel Atomなどの低価格CPU、最小限のメモリ（1GB程度）、5～13インチ程度の小型液晶ディスプレイを搭載し、Windows XPなどの比較的軽量なOSが採用されていました。拡張性は限定的でした。価格は、登場当初は日本市場で5～10万円程度でしたが、2009年には円高の影響もあり3～8万円程度にまで下がりました。北米市場では300～800ドル程度でした。家電量販店などでは、移動体通信サービスとのセット販売も盛んに行われていました。

普及の背景

ネットブックとネットトップの普及には、ハードウェアの性能向上に加え、ウェブアプリケーションやクラウドコンピューティングの普及が大きく貢献しました。インターネット上で多くの処理やデータ保管が可能になったことで、パソコン側の性能や容量、OSの最新版への依存度が低くなったのです。この点において、ネットブックやネットトップは1990年代に登場したネットワークコンピュータと共通点があります。しかし、ネットワークコンピュータやPDAとは異なり、PC/AT互換機|PC_AT互換機であるため、基本的な互換性を維持していました。

ネットトップ

ネットトップは、ネットブックとほぼ同等の機能を持ちながら、デスクトップパソコンに近い形状と使用環境を持つ製品です。

歴史

ネットブックの誕生には、発展途上国の教育分野向けに開発された「100ドルPC」と呼ばれるOLPC XO-1プロジェクトが大きく影響しています。OLPCのコンセプトである、廉価で限定的な性能ながらインターネット端末としての機能を持つ点が、ネットブック開発の着想に繋がりました。2007年10月、ASUS Eee PCの発売がネットブック市場の誕生を告げ、多くのメーカーが参入する「ネットブック戦国時代」へと突入します。2008年には、東芝やNECなどの日本メーカーも参入しましたが、2009年中盤には市場飽和が見られ始めました。性能や拡張性への不満から、メーカーは上位機種の投入や機能向上による差別化を図るようになりました。しかし、スマートフォンの普及、ノートPCの低価格化・薄型化、そしてタブレットの登場により、ネットブックブームは終息へ向かいます。2012年頃には多くのメーカーがネットブックの開発を終了しました。Chromebookは、ネットブックのコンセプトを受け継いだ後継機種と捉えることができます。

ハードウェア

ネットブックのハードウェアは、小型・安価で性能は限定的でした。OSはWindows XP（特にULCPC向け限定ライセンス）やLinuxなどでした。

ネットワーク接続

イーサネット（有線LAN）と無線LANへの対応が標準的で、容易にインターネット接続が可能でした。LAN内にある他のコンピュータやネットワークストレージへのアクセスも可能でした。モバイル通信端末との連携により、場所を選ばずインターネット接続が可能な環境も提供されていました。

CPU

省電力で低価格なCPUが採用されていました。Intel Atom、VIA TechnologiesのC7-MやNano Uシリーズ、AMDのGeode、Athlon Neoなどが使用されました。GPUはチップセット統合型が一般的でした。

入出力

キーボード、タッチパネルやタッチパッドなどの入力機器に加え、外部モニター接続のためのVGA端子なども備えていました。

記憶装置

メインメモリは1GB程度が一般的でした。補助記憶装置にはHDDまたはSSDが搭載され、SSD搭載機種は容量が限定的でした。光学ドライブは省かれることが多く、外部ドライブを使用する必要がありました。USB接続による周辺機器の利用も可能でしたが、高負荷な作業には対応できない機種もありました。

電源

商用電源と内蔵バッテリーが利用可能でした。バッテリー持続時間は短く、2時間程度のものもありました。急速充電対応や大容量バッテリー搭載の上位機種も存在しました。

オペレーティングシステム

ネットブックはPC/AT互換機|PC_AT互換機であるため、各種OSが利用可能でした。初期導入OSとしてはWindows（主にWindows XP Home Edition ULCPC）やLinuxが採用され、軽量なバージョンや構成が選ばれる傾向がありました。

Linux

Linuxは、ライセンス料が安価または無料であること、軽量化が可能であること、豊富なツールやカスタマイズ性があることなどから、ネットブックに適したOSでした。しかし、Windows版アプリの利用ができないこと、専門知識が必要な保守運用、Windowsとのデータ互換性の制約などから、一般消費者には使いにくい面がありました。そのため、一般向け製品でのLinux搭載モデルは少なかったです。

Windows

Windows XP Home Edition ULCPCが初期のネットブックで多く採用されました。マイクロソフトはネットブック市場におけるWindows XPの販売を2010年6月まで延長しました。その後、Windows Vista Home Basic ULCPC版、Windows 7 Starter、Windows 7 Home Premiumなどがネットブック向けOSとして提供されました。Windows 7以降は、より高いハードウェア性能が求められるようになりました。Windows 8は、画面解像度の制約から既存の多くのネットブックでは動作に問題がありました。

ULCPC

ULCPC（Ultra-Low Cost PC）は、OSのライセンス形態に焦点を当てた用語です。ネットブックと同一視されることもありますが、全てのネットブックがULCPCの条件を満たすわけではありません。マイクロソフトは、ULCPC向けWindows XPライセンスに、ディスプレイサイズ、メモリ容量、CPU性能、ハードディスク容量などの条件を設けていました。

代表的なメーカーと機種

ASUS Eee PCシリーズ、エイサー Aspire Oneシリーズ、NEC LaVie Lightシリーズ、レノボ IdeaPad Sシリーズなど、多くのメーカーから様々なネットブックが発売されました。

市場性とユーザー動向

IDCなどの市場調査会社は、ネットブック市場を分析し、市場規模やユーザー動向などを予測していました。ネットブックは、メインPCの補助機として、または安価なパソコンを求めるユーザーに受け入れられました。しかし、処理能力の制限から高負荷な作業には向いておらず、ヘビーユーザーの中には、性能を最大限に活用する工夫をするユーザーもいました。

商標問題

PSION Teklogix社による商標権侵害訴訟がありましたが、Psion Teklogix社が商標権を放棄することで和解しました。

結論

ネットブックは、特定のニーズに対応した製品として一定の成功を収めましたが、スマートフォンの普及やタブレットの台頭により、その役目を終えました。しかし、その歴史と特徴は、現代のパソコン市場を考える上で貴重な知見となっています。

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