VIS (鉄道システム)

VIS (Visual Information System)

VIS（ヴィス）は、Visual Information Systemの頭文字をとった略称で、東日本旅客鉄道（JR東日本）が通勤・近郊形電車に導入している旅客案内システムです。その主な目的は、車内の乗客に対して、列車の運行に必要な様々な情報を提供することにあります。

このシステムは、主に車両の乗降扉上部などに設置された表示媒体を通じて情報を発信します。表示される内容は多岐にわたり、現在の運行状況、次の停車駅とその到着予測時刻、他路線への乗り換え案内、目的駅までの到達時分（所要時間）、さらには運行に直接関連しない各種アナウンス（例えば、鉄道施設の警備強化に関するお願いなど）が含まれます。VISは車両と地上の間で双方向の通信が可能であり、車両側に蓄積されたTIMS（Train Information Management System）の情報などを地上設備へ送信することもできます。

表示媒体の種類

VISが情報を表示するための媒体は、搭載されている車両形式によって異なります。主な方式として、高精細な画像や映像を表示できる液晶ディスプレイを用いる方式と、文字情報をスクロール表示するスクロール式LEDパネルを用いる方式が採用されています。

液晶ディスプレイ方式

この方式は、特に「トレインチャンネル」という名称でも知られており、多くの場合、乗降扉上部に2基の液晶ディスプレイが設置されています。表示内容は、停車駅や乗り換えといった列車に関する情報、遅延などのリアルタイムな運行状況に加え、CMなどの広告も表示されます。これらの情報は、広告は主にミリ波を利用したSS無線や無線LAN、モバイルWiMAXといった無線通信を用いて、運行状況はデジタル列車無線を使用して内容が更新されます。

表示品質に関しては、初期のE231系500番台ではアナログ伝送のため映像にノイズが見られることがありましたが、E233系では伝送速度が向上し、デジタルRGB伝送を採用したことでより鮮明な映像を実現しています。画面のアスペクト比も進化しており、E233系0番台までは4:3でしたが、1000番台以降では16:9のワイド画面が採用されています。このため、4:3で制作された映像や広告を表示する際には、画面の左右に黒い帯が表示されることがあります。また、E233系2000番台では導入当初は1基のみ設置で広告表示はありませんでしたが、後に順次開始され、東京メトロ千代田線内での駅ナンバリング表示にも対応しました。E233系7000番台では、アニメーション表示に対応した三菱電機製の「セサミクロ」が搭載されています。さらに新しいE235系では、従来のトレインチャンネルに加え、窓上部に3基、妻上部に1基の21.5インチ液晶ディスプレイによる「まど上チャンネル」と「サイドチャンネル」が新たに設置され、情報提供能力が強化されています。

主な搭載車両：

• - E231系500番台
• - E233系（3000番台を除く）
• - E235系
• - E129系
• - E331系（現在は廃車解体済）

スクロール式LEDパネル方式

スクロール式LEDパネルは、主に文字情報を表示するシンプルな媒体です。列車の運行状況を主に表示しており、E231系通勤タイプでは加えて目的駅までの到達時分も案内します。E231系近郊タイプの初期編成では、運行状況表示は当初グリーン車のみでしたが、2009年頃からは普通車でも表示されるようになりました。2004年以降に製造された後期編成では、当初から全ての車両で運行状況が表示されています。

主な搭載車両：

• - 209系
• - E217系
• - E231系（500番台を除く）
• - E531系
• - E233系3000番台

私鉄における類似システム

JR東日本以外の多くの鉄道事業者でも、名称は異なるものの、VISと同様の旅客案内システムを導入しています。これらの多くも液晶ディスプレイを利用しており、停車駅、所要時間、運行状況などの情報を乗客に提供しています。

代表的なシステムと事業者、主な搭載系列は以下の通りです。

• - TIP (Train Information system for Passenger) / TOQビジョン：東京急行電鉄、横浜高速鉄道（5000系[2代]、5050系、5080系、6000系[2代]、7000系[2代]、2020系、6020系、3020系、3000系[相鉄線直通対応車]、Y500系）。次駅案内、広告、運行状況を表示。
• - TVOS (Train Vision Odakyu System) / 小田急TV：小田急電鉄（1000形[リニューアル車]、3000形[2代・4次車以降]、4000形[2代]、5000形、50000形）。次駅案内、運行状況を表示。一部車両は2画面設置、50000形は車外カメラ映像も表示。
• - SIS (Sotetsu Infovision System)：相模鉄道（11000系、12000系、20000系/21000系、9000系[リニューアル車]）。ワイド液晶で次駅案内、広告、ニュース、運行状況を表示（9000系リニューアル車除く）。
• - S-TVS (Seibu-Train Vision System) / 西武スマイルビジョン：西武鉄道（30000系、40000系、6000系[一部搭載工事済]）。次駅案内、広告、運行状況を表示。
• - TVIS (Tokyo Metro ビジョン)：東京地下鉄（10000系、13000系、15000系、16000系、17000系、18000系、1000系、2000系、02系・8000系・9000系・05系[更新車]、08系[更新全車]）。

その他、以下のような鉄道事業者でも類似のシステムが導入されています。

• - 京成電鉄：3000形（2代）、3100形（2代）
• - 京王電鉄：9000系（9736F以降）、5000系（2代）、7000系（一部）、1000系（2代）（1721F以降とリニューアル車）
• - 京浜急行電鉄：600形、新1000形（10次車以降）、2100形（更新工事施工済）
• - 横浜シーサイドライン：2000形
• - 東武鉄道：50070系（51076F以降、後に51071～51075Fも）、60000系、70000系（70090型含む）
• - ゆりかもめ：7300系

これらのシステムは、鉄道利用者がより快適かつ安心して乗車できるよう、必要な情報をリアルタイムで提供するために不可欠な装置となっています。

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