WASP-47

WASP-47

WASP-47は、地球から約870光年離れたみずがめ座の方向にある恒星です。この恒星は、質量、半径、明るさの点で太陽と非常に似ており、スペクトル分類もG型主系列星（G9V）に分類されます。太陽（約45億年）よりやや高齢の約65億年と推定されており、表面温度は約5576ケルビン（太陽は約5778ケルビン）です。興味深いことに、WASP-47は恒星を構成する金属元素が太陽に比べて非常に豊富であり、これが特異な惑星系の形成に影響した可能性が示唆されています。恒星自身の明るさ（光度）は太陽の約1.16倍ですが、地球からの見かけの明るさは約12等級と暗く、肉眼で観測することはできません。

名称と発見の歴史

WASP-47という名称が付けられる以前、この恒星は複数のサーベイ観測で記録されており、2MASSサーベイでは2MASS J22044873-1201079、広視野赤外線探査機WISEではWISE J220448.74-120108.4といった名称が与えられていました。NASAのケプラー宇宙望遠鏡によるK2ミッションで観測された際には、EPIC 206103150としてカタログに登録され、後に惑星dとeの発見を受けてK2-23という名称も使用されています。

この恒星の周囲を公転する惑星の発見は、2012年にスーパーWASPプロジェクトのチームがホット・ジュピタータイプの惑星、WASP-47bを見つけたことから始まりました。この惑星は恒星のすぐ近くを約4日の周期で公転しています。当初は、WASP-47系は典型的なホット・ジュピター系だと考えられていました。しかし、2015年になると状況は一変します。チリのラ・シヤ天文台にあるHARPS分光器を用いた観測から、Neveu-Van Malleらの研究チームが、WASP-47bよりも遠く、恒星のハビタブルゾーン内を公転する木星型惑星WASP-47cを発見しました。さらに同時期に、ケプラー宇宙望遠鏡のK2ミッションの観測データを利用した市民科学プロジェクト「プラネットハンターズ」のボランティアが、恒星面を通過（トランジット）する複数の惑星の存在を示唆するデータを発見しました。これらのデータを詳しく分析したBeckerらの研究チームは、トランジットを起こす2つの追加の惑星、ホット・ネプチューンに分類されるWASP-47dと、スーパー・アースに分類されるWASP-47eを発見し、その存在を公表しました。特にWASP-47eは、既存のホット・ジュピターであるWASP-47bのすぐ内側を公転していることが明らかになりました。

特異な惑星系

WASP-47系は、少なくとも4つの惑星からなる複雑で多様な構成を持っています。そのうちWASP-47e、WASP-47b、WASP-47dの3つの惑星は恒星の手前を通過（トランジット）することで発見されましたが、WASP-47cは主にドップラー分光法（視線速度法）によって発見されました。

これらの惑星はサイズが大きく異なり、最小のWASP-47eは地球半径の約1.8倍、最大のWASP-47bは地球半径の約13倍にもなります。質量も地球よりかなり大きく、最小のWASP-47eで地球の約6.8倍の質量を持ちます。2つの巨大ガス惑星、WASP-47bとWASP-47cは、それぞれ木星の約1.2倍、約1.57倍の質量があり、木星よりも重い天体です。ただし、地球大気の揺らぎなどによる観測上の影響で、これらの惑星の質量値にはある程度の不確実性が伴います。

WASP-47系の最も注目すべき点は、その惑星の配置です。ホット・ジュピターのような巨大ガス惑星のすぐ近くに、スーパー・アースやホット・ネプチューンといった比較的質量の小さな惑星（WASP-47eとWASP-47d）が存在するのは、系外惑星系の中では非常に珍しいケースです。一般的に、巨大ガス惑星はその強い重力で近くにある小さな惑星を軌道から弾き出してしまうと考えられているため、WASP-47のような配置は予想されていませんでした。

このような特異な配置に至った経緯について、いくつかの形成シナリオが提唱されています。可能性の高い説としては、まず木星型惑星であるWASP-47bとWASP-47cが形成され、その後WASP-47bが恒星の近くへと移動（惑星移動）したと考えられています。この移動の過程で、恒星の近くに惑星を形成する物質が集められた可能性があります。その後、ガスが散逸した後に、ガスの少ない小さな惑星であるWASP-47eとWASP-47dが、移動してきたホット・ジュピターの近くで形成されたという、二段階の形成過程を経たという説が考えられています。このような二段階の形成過程は、太陽系においても起こったと考えられています。

内側の3つの惑星（e、b、d）は、非常に近い軌道を持ち、それぞれ約0.8日、約4.2日、約9.1日という短い周期で恒星の周りを公転しています。これらの惑星は恒星に近いため、表面温度は1000ケルビンを超える非常に高温の状態にあります。また、これらの惑星の軌道は、地球の軌道と比較しても非常に円に近い形（軌道離心率が低い）をしています。

一方、最も外側を公転する惑星WASP-47cは、これらの内側惑星とは対照的です。WASP-47cは恒星のハビタブルゾーン内に位置し、約580日以上の長い公転周期を持っています。また、軌道離心率が約0.36とかなり歪んだ楕円軌道を描いていることが特徴です。この高い軌道離心率は、WASP-47bの内側への軌道移動だけでは説明できません。また、WASP-47系には、WASP-47cの軌道に影響を与えるような伴星は見つかっていません。そのため、WASP-47cの高い軌道離心率は、かつてWASP-47系に存在し、現在はさらに遠くを公転しているか、あるいは系から弾き出されてしまった別の巨大な惑星によって引き起こされた可能性が指摘されています。

WASP-47系は、惑星形成や軌道進化に関する従来の理論に新たな視点をもたらす、非常に興味深い系外惑星系として研究が進められています。

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