Wシリーズ

森博嗣氏が手がける『Wシリーズ』は、講談社タイガより刊行された小説シリーズです。同氏の『百年シリーズ』に登場するウォーカロン（単独歩行者）が存在する未来世界を舞台に、物語が展開されます。

概要

『Wシリーズ』は、『百年シリーズ』の続編と捉えることもできますが、独立したシリーズとしても楽しめるように構成されています。しかし、他のシリーズとの密接な関わりも示唆されており、森博嗣作品のファンにとっては、より深く世界観を堪能できる要素も含まれています。作者自身は、どの作品から読めば良いかという問いに対し、「特にどれも読む必要はない」としつつも、強いて挙げるなら『百年シリーズ』三部作と『Gシリーズ』を推奨しています。

2018年に全10作で完結し、2019年からは続編となる『WWシリーズ』が刊行されています。シリーズ1作目は、講談社タイガの創刊ラインナップの一つであり、森博嗣氏にとって初の文庫書き下ろし作品となりました。表紙デザインは引地渉氏が担当しています。

舞台設定

物語の舞台は、作者の他作品にも登場するマガタ・シキが活躍していた時代から百数十年後の未来です。科学技術が高度に発展し、人体の機能向上が図られた結果、人々は臓器や器官を人工物に置き換えることが一般的になり、死ぬことが稀な世界となっています。しかしその一方で、原因不明の出生率低下が世界的な問題となっています。

人工知能（AI）と仮想現実（VR）技術が成熟しており、汎用的なAIが国家や大企業の運営に助言を与えることは日常的な光景となっています。AI同士の情報交換も行われ、仮想空間における勢力争いも存在します。自律型ロボットであるウォーカロンが普及し、社会のあらゆる場面で人間と共に活動しています。ウォーカロンは人間と区別がつかないほど高度な外見と人格を持ちますが、その高い能力から、社会がウォーカロンに乗っ取られることへの懸念も存在します。

主要なウォーカロンメーカー5社（通称「WHITE」）の動向は、社会的な影響力の大きさから常に注目されています。シリーズを通して、日本の情報局に所属する人物が主要な登場人物として登場し、物語の舞台の多くは日本国内です。主人公が研究者であることから、科学技術やその将来に関する議論や、新しい理論の創出が物語の中で重要な要素となっています。

主要な登場人物

ハギリ・ソーイ: 主人公。日本の情報局に所属する研究者で、人間とウォーカロンの差異を研究テーマとしています。卓越したひらめきを持ち、世界に影響を与える研究業績をいくつか持っています。
ウグイ・マーガリィ: 日本の情報局員。武器や航空機、自動車に詳しい。以前は古典を専攻しており、古い言い回しやことわざをよく知っています。6作目まではハギリの身辺警護を担当していましたが、昇進により現場を離れます。
アネバネ: 日本の情報局員。2作目からハギリの身辺警護として登場し、ウグイの部下です。
キガタ・サリノ: 4作目で情報局の研究所を襲撃したウォーカロンの少女。その後、日本の情報局員となり、7作目からウグイに代わってハギリの身辺警護を担当します。
シモダ: ウグイとハギリの上司。ハギリが研究を行う施設「ニュークリア」の局長です。

シリーズ作品一覧

1. 彼女は一人で歩くのか？ Does She Walk Alone?（2015年）
2. 魔法の色を知っているか？ What Color is the Magic?（2016年）
3. 風は青海を渡るのか？ The Wind Across Qinghai Lake?（2016年）
4. デボラ、眠っているのか？ Deborah, Are You Sleeping?（2016年）
5. 私たちは生きているのか？ Are We Under the Biofeedback?（2017年）
6. 青白く輝く月を見たか？ Did the Moon Shed a Pale Light?（2017年）
7. ペガサスの解は虚栄か？ Did Pegasus Answer the Vanity?（2017年）
8. 血か、死か、無か？ Is It Blood, Death or Null?（2018年）
9. 天空の矢はどこへ？ Where is the Sky Arrow?（2018年）
10. 人間のように泣いたのか？ Did She Cry Humanly?（2018年）

関連シリーズ

S&Mシリーズ
Vシリーズ
百年シリーズ
四季シリーズ
Gシリーズ
* Xシリーズ

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