XC-35 (航空機)

ロッキード XC-35について

ロッキード XC-35（Lockheed XC-35）は、アメリカ合衆国で初めて与圧キャビンを搭載した双発実験機です。最初は陸軍によって「スーパーチャージド・キャビン」という名称で呼ばれましたが、実際にはユンカース Ju 49が世界で初めての与圧キャビンを備えた航空機です。XC-35はアメリカ陸軍航空隊のニーズに応じて、ロッキード社のモデル10エレクトラを基に開発されました。

設計と開発

アメリカ陸軍航空隊は高高度飛行の研究と与圧キャビンの実用性の検証を目的とした航空機の製作を望んでいました。そのため、ロッキード社との間で実験機の製作契約が結ばれ、契約金は112,197ドルにのぼりました。要求された仕様には、高度25,000フィート（約7,620メートル）で2時間の飛行を含む、合計10時間の耐久飛行能力が含まれていました。

このプロジェクトにおいては、オハイオ州のライト・フィールドにある陸軍航空隊技術部の専門家、カール・グリーン少佐とジョン・ヤンガーが与圧キャビンの構造設計を担当しました。彼らはロッキード社と協力し、1機のモデル10エレクトラを与圧キャビンに耐えられるように改造しました。改造の際、機体は新しい円形状の胴体にし、小さな窓を装備することで高い気圧差に耐えるように設計されました。キャビンの与圧はエンジンのターボチャージャーから供給されるブリードエアによって実現され、航空機関士によって調整されました。この仕組みのおかげで、高度30,000フィート（約9,144メートル）でもキャビン内は約12,000フィート（約3,658メートル）の気圧に保たれることが可能でした。

XC-35の機体は、前部と後部に分かれた与圧区画に設計されていました。前部にはパイロット2名と航空機関士1名、さらに最大で乗客2名が収容可能でした。一方、後部区画は与圧されていないため、ただ1名の搭乗に限られ、高高度ではなく低高度での使用のみが許可されていました。

XC-35は、モデル10エレクトラに搭載されていた出力450hp（336kW）のプラット・アンド・ホイットニー R-985-13エンジンから、550hp（410kW）のXR-1340-43エンジンに換装されていました。このエンジンはターボチャージャーを備えており、高度の薄い空気でも安定して動作を続けることができました。

運用の歴史

XC-35は1937年5月に陸軍に引き渡され、その後8月5日には初飛行を達成しました。この機体での広範囲にわたる飛行試験は、陸軍航空隊にコリアー・トロフィーを授与する要因となりました。また、XC-35で得られたデータは、初の量産型与圧キャビン機であるボーイング307や、B-29スーパーフォートレスの開発において極めて重要な役割を果たしました。

陸軍航空隊はXC-35の新技術を高く評価し、その後、戦争長官補佐官およびのちに国防長官となるルイス・ジョンソンの要人輸送機としても使用されました。さらに1943年には、悪天候中での飛行データを収集するために、NACAのパイロット、ハーバート・H・フーヴァーが操縦し、雷雨の中を飛ぶという試験も行われました。

1948年には、XC-35はスミソニアン博物館の国立航空宇宙博物館に寄贈され、現在もそこに保管されています。

要目

• - 乗員：3名
• - 乗客：6名
• - 全長：11.8 m（38 ft 7 in）
• - 全幅：16.8 m（55 ft 0 in）
• - 全高：3.1 m（10 ft 1 in）
• - 翼面積：42.6 m²（458 ft²）
• - 翼面荷重：111.7 kg/m²（22.9 lb/ft²）
• - 全備重量：4,760 kg（10,500 lb）
• - エンジン：2 × プラット・アンド・ホイットニー R-1340-43、出力550 hp（410 kW）
• - 最大速度：380 km/h（236 mph）
• - 巡航高度：9,600 m（31,500 ft）
• - 航続距離：1,285 km（800 mi）

このように、ロッキード XC-35は航空機の与圧技術の発展に大きく寄与した機体であり、その影響は今日の航空機設計にまで及んでいます。

もう一度検索