YM3526

YM3526（FM Operator type - L, OPL）

YM3526は、日本楽器製造が1984年10月に発表し、1985年2月に外販を開始したFM音源チップです。このチップは、パーソナルコンピュータやキャプテンシステム、文字多重放送などの目的で設計されました。YM3526から派生した高機能なチップ群は「OPLシリーズ」として知られ、数多くのバリエーションが展開され、低価格帯のFM音源として広く普及しました。その重要性が認められ、2019年度には国立科学博物館の未来技術遺産に登録されました。

機能と仕様

YM3526は、2オペレーターの設計を基にし、最大で同時に9音を発音することができるFM音源です。また、2系統のプログラマブルタイマーを内蔵しています。このチップは、キャプテン端末に適合した音源仕様を満たすために、6音のメロディ音と5音のリズム音を同時に出力するモードが搭載されています。

ADSRのパラメータは、YM2203（OPN）と比べて簡素化されており、持続音モードと減衰音モードの2つのモードを選択することが出来ます。持続音モードではサスティン・レイトがゼロに固定され、減衰音モードではリリース・レイトが特定の数値で固定されます。これにより、ユーザーはエンベロープの設定を自由に調整できるため、他のFM音源（例えばYM2151やYM2203）と同等の音質を持つ音色を生成することが可能です。

動作モードのバリエーション

YM3526のユニークな特徴の一つは、リズム音モードを持つことです。このモードでは、各オペレーターが分割され、内蔵のノイズジェネレータによってバスドラム、スネアドラム、タムタム、ハイハット、トップシンバルの5種類のリズム音を生成しています。また、チャンネルの音色データはユーザーが設定する必要があります。

さらに、リズム音モードによって提供される動作モードは以下のように分かれています：
1. リズム音モード有効：メロディ6音＋リズム5音
2. リズム音モード有効：メロディ7音＋リズム4音
3. リズム音モード無効：メロディ9音

このように、ユーザーはリズム音を含む多様な音楽表現を楽しむことができ、後続のOPLシリーズにもこの仕組みが引き継がれています。

採用事例

YM3526は、さまざまなプラットフォームやゲームで使用されました。例えば、『FM Sound Expander』というコモドール64向けのFM音源カートリッジがあります。また、ゲーム『テラクレスタ』では、国内での品不足からYM2203を使用した別バージョンが流通しています。さらに、『バブルボブル』の初期ロットにもYM3526が搭載されており、後にYM3812に置き換えられました。

派生製品

YM3526を基にしたさまざまな派生製品も展開されています。例えば、MSX-AUDIO向けに開発されたY8950は、FM音源機能にADPCM機能を追加し、MSX2規格での使用が想定されています。また、YM2413（OPLL）やYM3812（OPL2）もYM3526と互換性があり、それぞれ異なる機能や特性をもって幅広い用途に使われています。さらに、高機能なYMF262（OPL3）は、OPL2を2つ分内蔵し、PC向けに高い人気を誇りました。

このように、YM3526はその設計から実運用に至るまで、オーディオ技術に多大な影響を与え、現在に至るまで多くの音源にその技術が受け継がれています。

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