ZN-1

プレイステーション互換アーケード基板：ZN-1（COH-1002）の全貌

ソニーおよびソニー・コンピュータエンタテインメントが開発したアーケードゲーム基板、ZN-1（COH-1002）は、家庭用ゲーム機として人気を博したプレイステーション(PS)の技術を基盤に開発されました。PSの内部構造をベースに、アーケードゲーム特有のインターフェースや、処理能力向上のためのメモリ増設など、アーケードゲーム市場への適応を図った点が大きな特徴です。

ハードウェアスペックとアーキテクチャ

ZN-1は、PSのCPUであるR3000Aカスタム32bit RISCプロセッサを33.8688MHzで動作させます。これはPSのクロック周波数よりも高速化されています。メインメモリは2MBを搭載し、グラフィック処理には2MBのVRAMを搭載しています。これにより、PSを凌駕するグラフィック性能を実現しました。また、ジオメトリ演算を高速化するGTE(ジオメトリエンジン)や、動画再生やテクスチャ展開を行うMDEC(動画再生エンジン兼テクスチャ展開)などのカスタムチップも搭載されています。

サウンド面では、16bit PCM音源であるSPUを搭載し、ステレオ24チャンネル同時発音を実現しました。ただし、カプコンのタイトルの中には、PSのSPUではなく、QSoundチップを使用しているものも見られます。これは、ゲームタイトル毎に最適なサウンド処理を選択していたためと考えられます。

ZN-1はJAMMA規格に準拠した56ピンエッジコネクタを採用し、アーケード筐体への接続を容易にしています。また、2プレイヤー、3プレイヤー対応のコントローラーインターフェース、スピーカー端子、ビデオ出力端子、アナログ入力端子、トラックボールインターフェース、メモリカードインターフェースなどを備えていました。さらに、メインメモリ拡張コネクタや拡張ボード用コネクタ（96ピンコネクタ×2）を搭載しており、必要に応じてシステム拡張が可能です。

ZN-1と他社製品との比較

ZN-1と同様のPS互換アーケード基板は、他社からも多数登場しました。コナミのGX700、タイトーのFXシステム、ナムコのSYSTEM11などがその例です。これらの基板は、PSの技術を基盤としながらも、メーカー独自の工夫が凝らされており、性能や機能面でそれぞれ特徴を持っていました。ZN-1は、その中でも、PSの高いグラフィック性能を活かしつつ、アーケードゲームに必要な機能をバランス良く備えた基板と言えるでしょう。

ZN-1の後継機：ZN-2

ZN-1の後継機として、CPUクロックやメモリ容量を増強したZN-2も存在します。ZN-2は、CPUクロックを50MHzに向上させ、メインメモリは2MB、4MB、8MBのいずれかを選択可能となりました。VRAMも同様に2MB、4MB、8MBの選択肢があり、より高精細なグラフィック表現が可能となりました。これにより、ZN-1では実現が難しかった、より複雑で高度なゲームを開発することができるようになりました。

搭載タイトル

ZN-1およびZN-2には、数多くのアーケードゲームが移植されました。カプコン、テクモ、アリカなどのゲームメーカーが、ZN-1/ZN-2の性能を活かした魅力的なタイトルを多数リリースしました。代表的なタイトルとしては、ZN-1搭載タイトルに『闘神伝2』『ギャロップレーサー』『ストリートファイターEX』など、ZN-2搭載タイトルに『ストリートファイターEX2 PLUS』などがあります。これらのゲームは、PSでは体験できない、アーケード特有の高解像度と高速処理による滑らかな動作が特徴でした。

サブボードと拡張性

テクモの『ギャロップレーサー2』では、ZN-1にROMを搭載するためのサブボードが使用されました。このサブボードには、HDLCコントローラ、Z80、音源チップ(YMZ280B)、D/Aコンバータなどが搭載可能でしたが、『ギャロップレーサー2』では一部機能は実装されていませんでした。このサブボードの存在は、ZN-1の拡張性の高さを示す一つの例と言えるでしょう。

まとめ

ZN-1は、家庭用ゲーム機の技術をアーケードゲームに応用した、画期的な基板でした。その高いグラフィック性能と拡張性の高さは、多くの開発者から支持され、数多くのアーケードゲームタイトルの誕生に貢献しました。ZN-1/ZN-2は、アーケードゲームの歴史において重要な位置を占める基板と言えるでしょう。そして、PSのアーキテクチャをベースにしたアーケード基板の成功例として、ゲーム業界に大きな影響を与えたと言えます。

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